追憶(2017年 映画)

2017-09-28 00:00:36 | 映画・演劇・Video
同名(邦訳)の映画が70年代にあり、たぶん数十年後に誤って観てしまう人もいるだろうと思うが、今年公開された日本映画の方で、追憶というコトバが意味するのは、「殺人」。約20年前、少年3人が巻き込まれた殺人事件があった。成り行きでヤクザ者を刺したのは、少年たちだった。身代わりとなった女性をめぐる物語が別途一つあり、少年3人は「秘密」を胸に、その後別々な人生を送る。

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そして、三人のうち一人(A)はあろうことか刑事になる。残る二人はそれぞれ中小企業の社長になるが、一人(B)は社業傾き、もう一人(C)を探し出し、金策を頼む。

Aが偶然Cに出会った翌日、BはCから何度目かの借財をする。その後、Bは殺され、捜査線上に、Cが浮かび、さらにAが浮かんでくる。

これからは、ミステリーではよくあるパターンだが、Aは捜査からはずされ、むしろ容疑者カテゴリーに入るのだが、北陸地方の海岸の町で単騎捜査を始めることになる。

ということで、海辺を走る刑事といえば船越英一郎ということになるが、彼は別の場所を走っているので本作には登場しない。高倉健の後継者と呼ばれる岡田准一(A)が犯人を捕まえるつもりで捜査を進めるのだが、逆に同僚の刑事から追いかけられることになり、刑事同士の第三の殺人事件が発生する前に、唐突に真犯人(と思われる容疑者)が判明する。唐突感があるのは、真犯人の布石がまったくないことだが、本作がミステリーではない、という監督の主張なのだろうか。

なお、Aのダメ母役を演じるのが、りりィだが、本作が遺作となった。もともとシンガーソングライターでもあるが、亡くなる数年前になり次々に女優として出演を続けていた。もっと美しい役が最後に回ってくれば良かったのにと残念に思う。

本来、すばらしい大作なのだが、どうもそういう主旨のことが書けないうちにページが尽きてしまいそうなので、あきらめて別の角度で考えると、ずっと昔に重大な罪を犯しても結局捕まらなかったというカテゴリーの人は、きっとこの映画を観て感動し、「もう過去のことは忘れよう」と決意し、明るい気持ちで再び人生を歩き始めるのだろう。

しかし、各種映画サイトのコメント欄を読んでも、そういう衝撃的コメントはどこにも見つけることができないわけなのだ。