「共謀罪」を詠む

2017-09-12 00:00:31 | 書評
新潮社の書評誌「波」の人気連載が「俳句と短歌の待ち合わせ」。当代を代表する俳人の堀本裕樹氏と歌人の穂村弘が同一のお題を詠む。前月は「忖度」だったが、今月は「共謀罪」。段々と詩情から離れていき、作家の困惑が目に見えるようだ。来月のお題は「ミサイル」だろうか。

まず、俳句。

 喰らひ合ふ夜食共謀罪めけり

夜食というのは秋の季語に近いようだ。「夜なべ」となれば秋だ。何人かで夜食をむさぼるように食べる光景が浮かぶ。食べながら計画を練るのでは集中できないので、食事の前に話し合うのが犯行計画で、食後話し合うのが逃亡計画になるのだろうか。末尾の「けり」は通常は過去形(○○だった)を意味するが、俳句のお約束では感嘆のコトバとして使う。


次に短歌。

 友だちがひとりもいない僕の目の中に燦めく共謀罪よ

「燦めく」はきらめくと読む(煌くとも書く)。
共謀罪の法律の中には集団・組織・共同・団体・二人以上というように複数形を意味する単語が頻出する。そこまでこだわるのも不思議だ。これに対し、天涯孤独という人もいる。その天涯孤独の「僕」の目から見ると、友だちや恋人や家族との絆を持っている人は、その全員が相対的に有罪じゃないのだろうかと思えるそうだ。友情や愛や幸福への共謀罪。


そういえば某国の委員長の目から見ると、世界中の人が共謀罪のように見えるのかもしれない。平和への共謀罪。