マイ・バック・ページ(川本三郎著 ドキュメンタリー)

2017-04-05 00:00:00 | 書評
この本はずいぶん前に読んだことがあった。自衛隊朝霞基地を襲撃した過激派「赤衛軍」と親しかった朝日新聞記者(著者本人)の弁明の書のような感じがするのだが、その原作から脚本が起こされ映画になった。その映画をDVDで観たので、もう一度原作を確認するのに一読してみた。

mbp1


映画のあらすじでもなく朝日新聞の体質でもなく新左翼のその後でもないある登場人物が気になった。

保倉幸恵という人物が描かれている。週刊朝日の表紙に連続で長期間のモデルとして登場していた。最初は高校生の頃だ。そして川本氏が騒動に巻き込まれ始める頃に、いくつかの映画を一緒に観に行って、それなりにしっかりした意見を語っている。

彼女は1953年の4月5日生まれ、1975年7月8日に自殺してしまう。つまりきょうは誕生日(私も4月5日)。少し調べると、こどもの頃『劇団若草』に所属していた。桃井かおりと同期だそうだ。この劇団若草だが記憶がつながってきたのだが、主宰は上山雄輔氏という。実は、詩人の金子みすゞの2才年下の弟なのだ。

姉弟の父が亡くなったあと、弟は親戚の上山家に養子に出ることになり姓が金子から上山に代わる。姉の方は、上山家の経営する文具店である上山文英堂(下関)で働くことになる。弟は実の姉だと知らず、恋心を持ち始め、それに気づいた周囲の人たちが、無理やりに金子みすゞに婿をとらせることになるが、これが悪漢であり、みすずが自殺したのもそのせいであり、さらに文具店もつぶしてしまう。

一方、傷心の雄輔は東京に出て、流転の末、40歳を過ぎて劇団経営をはじめることになる。彼が存命の時には、多くの有名俳優(女優)を輩出している。

そして、彼が、みすゞの未発表の多数の詩が書かれたノートを守り続け、後年、彼女の詩が発掘されることになる。

思えば、上山氏は25歳の時に27歳の姉の死に接し、70歳の時に22歳の教え子の死に接することになったわけだ。