最後の花束(乃南アサ著)

2016-09-19 00:00:36 | 書評
短編ミステリ集。文庫帯には「愛は怖い。恋も怖い。背筋も凍る11の短編を厳選。」となっている。読み始めた頃には気付かなかったのだが、犯人はすべて女性。なんらかの恨みに燃え上がった比較的若目(20代後半が多い)の女性が、主に殺人関係を企て、おおむね実行する。

hanataba


完全犯罪を狙っている例はほとんどなく、後で捕まるだろうと思われるものが大部分だ。捕まってもいいから殺そうという強い意志が漂うのだが、それが「背筋が凍る」という怖さにつながるのだろうか。読み始めてから、不吉な夢を見ることが多く、やっと読み終わって安眠できる。

夜、寝入りの時にミステリを読むと、現実か夢かわからないようなことになり、頭の中でストーリーが勝手に進行し始めて、たいてい小説よりも恐ろしい方向になってしまい、悪夢にうなされて夢から現実の世界に戻る。一つの小説で2回楽しめるわけだ。

ただ、本書は、なんとなく、早い時期に結末を想像しやすいのだが、その無残な結末に一歩ずつ近づいていくというのが、なんとも心が穏やかにならない。そんなむごい殺し方をしなくてもいいのではないかと言いたくなることが多い。

寝ている男の耳の中に熱湯を注ぐとか。新装開店の料亭がジェラシーの炎に包まれるとか。