二つの沖縄行きフェリー

2009-11-15 00:00:20 | 市民A
沖縄行きのフェリーの話題が続いている。

近い方から言うと、三重県熊野灘で13日早朝、マルエーフェリーの「ありあけ」が積荷の重機が荷崩れしたことから右側に傾き、乗客7名、乗員21名が救出される。船体は座礁し横倒しとなり、燃料の重油が流出。

ferry東京から鹿児島を経由して沖縄まで。乗客7名というのがいかにも少ない。最初ニュースを聞いた時は、意図的に沈んだのじゃないかと思うほどフェリーの経営は悪化している。船は陸に向かってなんとか航行を続け、やっと座礁させて止まったということなのだろう。今後の物理的後始末が大変そうだ。日本には本四横断橋を作った時の巨大なクレーン船が数隻残っているそうで、今回登場しそうだ。

長距離フェリーの客離れが進みそうな予感がする。


ところで、もう一つの沖縄フェリーの話題は、言うまでもなく大阪のフェリー乗り場で捕まった市橋容疑者。

追い詰められた彼は、なぜ、沖縄へ向かうフェリーに乗ろうとしたか。

数日考えていたのだが、「ありあけ」の周辺情報を整理しているうちに、だんだん推理が深くなってきた。

突発的に、本土脱出を考えていたのではなく、もっとだいぶ前に、彼にとっての『奥の手』として考えていたのではないだろうか。

さらに言うと、その『奥の手』には、現段階では致命的な問題が生じているのだが、潜伏中に起きた事態の変化がわかっていなかったのではないだろうか。


まず、沖縄が最終目的地だったか?ということ。それは違うだろう。確かに那覇市はごちゃごちゃした街だが、だからといって、長逗留は難しいだろう。ヨソモノである。行くならさらに石垣島だろう。本土から多くのダイバーが海の透明度に魅せられて、この島に住み着いている。そこそこ観光客用の仕事もある。

しかし、そこもまた日本である。東京からの観光客の多いし、なにしろ、いかにも逃亡者のパターンである。

彼の逃亡先は、その先の台湾ではなかっただろうか。

しかし、彼にとって躊躇すべき二つの理由があった。

まず、国外逃亡の場合は、「時効が中断する」こと。つまり、時効逃げ切りにならないわけだ。だから、彼の中では、どうしても国内にいる場所がなくなった場合の選択だったのではないだろうか。

次の問題は、「パスポートがないこと」。かなり致命的である。もっとも、正規の通関を通って逃亡できるわけがないのだから、あまり意味がないのかもしれない。うまいこと密出国して、遠い将来に日本に密入国すれば、海外にいたことすら隠すことだって可能かもしれない。

それに、元々英会話学校に行っていたのだし、フランス語の勉強をしていた痕跡も残っているらしい。

戦術ということになる。

少し調べていると、有村海運という沖縄資本の会社が「飛龍21」というフェリーで、那覇‐宮古島‐石垣島‐台湾高雄港という国際航路を運航していた。

彼が、どうやって船に乗ろうと考えていたかよくわからないが、一つは、フェリーの貨物の間に身を隠す方法だ。よく映画に登場する。案外成功率は高いかもしれない。さらに調べると、石垣島から台湾に向かう場合、あまり当局の査察が厳しくなかったという説もある。要するに、不法に日本に潜り込もうとする人間は多いが、不法に脱出する人間は少ないということだ。

さらに、その先。

日本と台湾の間には犯罪人引き渡し条約は結ばれていない。というか、日本はほとんどの国とは条約を締結していない。たぶん、韓国と米国。ヤクザと米兵だが、あまりうまくいっていないようだ。

しかし、台湾じゃ、逃げたことにならない。どうせ追い出される。それで終わりだ。さらに、そこから南の国に向かうフェリーはない。

が、細い糸が繋がる。台湾海峡のほとんど中国大陸側にあって、台湾の最重要軍事拠点である極めて小さな小島である金門島には台湾国内の移動が可能だ。パスポート不要。

そして、国民党政権になって、この金門島と中国本土アモイの間に定期便航路が開かれたということらしい。今度は積荷に隠れるしかないだろう。

そして、あとは大陸である。


ところが、この映画的な逃亡ルートだが、現段階では糸が切れている。

有村海運が破産して、沖縄から台湾へのフェリーは廃止になったのだ。2008年6月のことだ。

それ以前に、計画を考えたものの、ブサイク整形手術の成功と潜伏生活の安定から、実行を見送っていたのではないだろうか。


ichihaところで、市橋容疑者だが、「似顔絵が巧い」ということで、逆にリンゼイさんに贈った一枚に記された「2007年7月21日 Ichihashi Tatsuya」署名で足が付いたとされるが、実際、かなりの才能があると思える。大画家の修行中のデッサンとかいくつも見ているが、彼は、親と同業の医師を目指して挫折したようだが、完全に道を間違えたと言えるのではないだろうか。

あるいは、今からでも遅くないのだろうか????????????