最もかわいそうなオス

2009-04-28 00:00:46 | 市民A
動物界のオスで、最もかわいそうなのは、何だろうかと考えてみる。

ただし、「最もかわいそう」というのは、「メスに比べてオスの方がかわいそうな度合い」という意味で、動物の存在自体が危うくなっている「稀少生物」という現代的問題ではない。メスは幸せなのに、オスは悲惨という格差が大きい動物のこと。

と言えば、案外、人間世界はオスがかわいそうなのかもしれないとも言えるわけで、格差婚破綻で、豪邸から賃貸アパートへ引っ越した芸人一名とか、結婚後、NHKのせいで格差が拡大して、まもなく豪邸とアパートに住居が分かれると想像できる役者一名とか、それはたいした差でもない。

人間の話の続きだが、古来、戦場に連れて行かれて、地球のコヤシになるのはオスの役割だったが、20世紀の戦争では、連れて行かれなくても上から爆弾が落ちてきて、タキギになってしまう。日本では縄文時代まで遡れば、男は食べ物を探しに一日25キロ歩いていたらしいが、当時の女もまた、食べ物を探しに15キロ歩いていた。

人間でのオスメス較差は、そんなものである。


よく、かわいそうなオスとして、頭に浮かぶのが、カマキリ。よく知られた話として、メスが産卵する前に、栄養源として餌と化すわけだ。同じようでもスズムシを集団で飼うと毎日個体数が減っていくのは、単に彼らが大食いなだけだ。

まあ、カマキリのオスであるなら、多少痛くとも男子の本望ということだろうか。もっともメスの方だって、産卵してまもなく昇天してしまって、子孫の顔を見ることはできない。

カマキリに似ていながら、もう少し卑怯感が漂うのが、大部分のクモ。クモはクモの巣(網)を張って餌を捕るのだから、大きな網を作れるクモほど、多くの餌を食べることができ、体も大きくなる。そして、基本的には大きな網のどこかを自分のホームプレースにしている。だいたいは中央に住んでいる。

ところが、中央にいる個体というのは、メスなのである。自分で作った網の世帯主である。

では、オスはどこにいるかと言えば、この大きな網の端っこの方に間借りしている。体も二回り小さい。追い出されたどこかの役者みたいである。しかも家賃は払わないし、餌も横取りする。

メスにすれば、そんなオスが気に入るわけないので、基本的には、クモのオスはメスにとっては、単に餌の一種である。

しかし、困ったことに、オスには仕事があるわけだ。交尾である。ところが、交尾するためにはメスに近づかなければならないが、メスの方が体が大きく、近づくと食われてしまう、という困難を極める状況になるわけだ。さらに男らしくないのは、サッと一瞬の隙を突いて交尾した後、食われないように逃げ出そうというわけだ。

統計はないだろうが、結局はいつか、メスに捕まって食われる運命にあるのかもしれない。いつも逃げ回っているのは、たぶん、カマキリと違って、食われる時に痛いからだろう。少しかわいそうだ。

ribonuoで、やっと本題。

最近の海洋生物の研究で、いままで三つの科とされていた深海魚が、実は同種の魚の「子、メス、オス」であったことがDNA鑑定で、わかったそうだ。形があまりにも異なるため、今までは3種別々の種として、別の科が与えられていた。

その三種は、「リボンイワシ」、「クジラウオ」、そして「ソコクジラウオ」である。かなり形も異なるし、生息場所や、そのライフスタイルが異なる。

まず、子魚のリボンイワシ。まだ雌雄の差ははっきりしない。リボン状の尾をヒラヒラさせ、クラゲになりすますそうである。深海ではなく、浅瀬で食料の豊富な場所に住んでいるそうだ。何となく「小女子のくぎ煮」をイメージさせる形状である。

そして、雌雄較差が表面化するのが成魚になってから深海に住まいを移動する頃からである。成魚は、深さ1000メートルから4000メートルに生息する。

まず、メス。

ribonuo名前を「クジラウオ」というのは、大きな口とずんぐりした体を持つ。いかにも、何でも食べて大きくなる相撲取りみたいな体型である。

そして、問題はオスの方である。いままでは「ソコクジラウオ」と呼ばれていた。

普通、人間を含めた生物には、いくつかの「欲」がある。人間の場合の欲と言えば、「食欲」「性欲」「出世欲」あたりだろうか。動物と同じだ。

ところが、このオスの「ソコクジラウオ」の場合は、極端である。メスと違う形状に変わってしまう。

まず、口の機能がなくなってしまう。食道も胃も消滅。つまり、いかなる食べる楽しみも奪われるわけだ。体は痩せ細る一方で、細い体に残るのは、エネルギーを溜め込んだ肝臓と生殖のための精巣だけ。

ribonuo出会いの少ない深海で、何も食べず、子孫を残すことにだけに全力を傾けることになる。嗅覚が発達しているのは、フェロモンを嗅ぎだしてメスに近づくための機能らしい。

要するに人間で言えば、「ラヴマシーン」になってしまうのだが、それはそれで楽しそうではあるが、「メシが食えない」のは、やはり、かわいそうとしか言えないだろう。それとも、ダイエットの一種として、唇を縫い合わせて、Please try?