人的資源の組織戦略(1)

2009-04-21 00:00:47 | MBAの意見
1.採用-終身雇用制の維持の困難性

従来の大量生産型大企業のピラミッド型組織では、まず社員を学歴別に大学卒業以上のホワイトカラーと高校卒以下のブルーカラーにわけるところからはじめる。最初から2つのピラミッドが存在するのである。そして30から40年にわたる期間、勤労意欲が減退しないような仕組みとして、10段階程度にわけた階層の中を、小刻みに給料が名刺の肩書きと一緒に上昇し続けていく仕組みになっていた。また、退職金制度は、実際には給与の一部であるのだが、無金利で会社に退職時まで貸し付けているような制度であり、従業員の固定化の一因ともなっていた。また、ピラミッド型組織にするための中高齢者対策としては、キャリア途中から子会社、孫会社といった一見アウトソーシング的な仕事と一緒にグループ会社という枠の中に囲い込む戦略が一般的であった。

このような制度は、高度成長時の慢性的な人員不足に起因していると考えられるのだが、一つは日本経済の産業構造の変化により、大量生産型の製造業から、第三次産業へと構造変革が進んだこと、二つ目としては、企業の国際化及び資本の国際化の中で多くの人的コストを抱えることができなくなったこと、3点目としては雇用される側の人材が多様化したために企業自体が魅力的な組織を作らない限り必要な人材を確保できなくなってきた事情(人員よりも人材)がある。大量生産時代には、人間の個人差が生む差は大きくなかったかもしれないが現代では個人の資質の差が企業業績に及ぼす差はかなり大きいといえる

また、実際に「企業30年説」他、20歳前後の採用後、60歳前後までの40年間、成長を続け、ピラミッドの底辺と高さを大きくしつづけられると考える人は、就職をしようという側にもいないだろうし、そういう意味でどちらの責任もまた限定的であるといえる。

企業の側からみた不確かな時代の採用は理想的には固定、変動、臨時の組み合わせとなるのであろう。社員中でコア人材(むろんコアビジネスという考えが先であり、1割かも知れないが5割かもしれないが)は長期安定的な確保が必要であり、長期にわたる人事プランが必要であるだろう。もちろん給与だけで人材が確保できるわけではなく、パッケージ化された制度は、その企業独特のシステムになることが予想される。大きな流動化を考えているわけでもなく、また給与だけの魅力では、それ以上の給与を提示する他社には対抗できないからである。

次に、変動部分であるが、企業業績や生産高、生産製品のライフサイクルなどから2年から5年にかけての限定的な(もちろん結果としては長期間になる場合もある)人員数が必要なケースでは、専門的過ぎる人材の囲い込みに走れば、将来の人材ミスマッチや、勧奨退職制度などの好ましくない(副作用の多い)結果となる可能性が高く、むしろ期間の短い中高齢者の雇用や。2-5年といった期限付きの契約(退職金を前払いにすることも有効)制度が有効である。また、付加価値のない仕事については、長期に一定の仕事が続くのならばアウトソーシング、短期的な人員増であれば臨時的雇用の形態が望ましいと言える。

しかし、一方従業員(あるいは求職者)の側からみると、長期安定高給の職場が好まれるのは(一般論として)当然であるわけで、本来、コア事業にふさわしくない人材もスクリーニングの網をもれることもあるだろうし、また完全に3分割するような仕組みは、モラールや競争心(競争も成果における競争が必要なのであるが、時によりベビーブーマー世代では、仲間の足を引っ張るようなディフェンシブな競争が起こることがある)を失わせる結果になる。そのためには、プロモーションや社員教育といったその他の施策を組み合わせる必要がある。