人的資源の組織戦略(3)

2009-04-23 00:00:43 | MBAの意見
4.評価

評価には、日常的な個人の業績に対して業績評価による給与の上下を行い、生産性を向上させる狙いがある。一方、生産性の悪い従業員は、その結果として低いPAYを受け続ける結果となる。しかし、実際に評価というのはあくまでも基準があっての話であり、また数値的あるいは具現的な結果に対するものでなければならない。基準としては、前年比とか業界の平均といった外部的水準を用いるのが一般的であるが、往々にしてコストプッシュ要因により、評価配分財源をインナーで固定してしまうケースがあるが(絶対評価でなく相対評価)、自分の成績を上げることのみならず、他人の成績が落ちることも有効な評価材料になることから、足を引っ張るといったマキャベリズムが横行することになり、企業業績にとって全体ではマイナスになる。また最近では個人目標を明確化することが重要なことと認識され、事前に決定した目標に対する達成が問われることになるが、実際には現実の世界の変化に対応するように目標そのものが柔軟に変わることが多く、完璧を欠く。

また、組織的には日本ではほとんどの企業は内部昇格制が採用されており、ピラミッドの階段を昇るかどうかも評価の結果である。従来の大企業では、多少の速度差があっても大部分の従業員は徐々に、地位を上げて行き、ポストの不足は出資会社への出向や移籍により対応してきたが、無闇にさして重要でない事業のため出資会社を作る制度そのものがあまり正しくないと考えられており、行詰り感がある。

また昇格に対する考え方については、上下移動のポストを増やせば、業務スピードが遅くなる結果を招くため、簡素化の方向となりピラミッドの階段数は少なくなり、かつ階段の上と下では、業務内容が大きく変わる。そのため、下の階層で実績を上げたからといって上の階層で業務を行えるかどうかは未知数であり、内部昇格制度との折り合いには問題がある。

評価と裏腹な問題は、インセンティブであり、結果としてはモラールの問題である。

しかし、単に給与だけでモラールを高める(あるいは維持する)には限界もある。よく給料を10%上げても生産性は5%しか上がらないし、逆に10%下げれば20%生産性は落ちると言われる。この言い方をつきつめれば、あまり給料は変化させない方がいいと言う事に他ならない。また裏側には、終身(あるいは長期)雇用の保証があるため、どうしてもプラス側よりマイナス側への下ぶれの方が大きくなると考えられるのである。


5.退職制度

退職制度には大きく、定年制による退職と、自己都合による任意の退職との2種類と考えられていた、このうち定年制についていえば「終身雇用制」の裏返しとしての制度であり、また従業員から見れば、日本的な慣習である若年時の低位な給与(右肩上り)と年代別に必要な資金計画(30台から40台に集中する学費、住居費)とのギャップを借入れで穴埋めするための将来の所得を担保に考えるという制度である。

一方、自己都合によるものとしては、単に文字通りの個人的な都合によるものが一般的で、会社の用意した終身雇用コースよりは低額な退職金が用意されるのが一般的である。このため(税制、年金制度も大いに関係するが)、早めに辞めると損という関係がなりたち、労働力の流動化がはかられない結果になっている。(もちろん急成長が必要な産業で、人材の不足の産業においてはまったく別である)

ところが、90年代になって、日本でも人材の生産性が大きなテーマ(コスト論)となり、早期退職制がとりいれられるようになるのである。

大別すると、特定事業の圧縮、廃止に伴う、「事業上の整理解雇」のケースと、従業員全体の過剰感を広く会社全体から退職募集するケースが一般的である。その他、違法とは知りつつ不当労働行為に抵触するような指名解雇も非組合員に対しては行われており、労働問題に詳しい専門弁護士は、労使どちらのサイドでも多忙を極めている。外資系企業の場合、特殊性をもって人材を確保するため、配置転換が困難なケースが多く、1年程度の予告あるいは退職金割増をもって、職場ごと整理解雇するケースが多いのだが、国内の大手製造業では希望退職の選択を行うことが多い。が、そのケースでは個別の指名を行うことができないため、企業にとって好ましくない結果(残すべき人材がやめる)が起こることが多い。希望退職にしても、数年前から残したい人材の処遇を上げ、残したくない人材の処遇を引下げるような施策を先行させるとか計画的に行わないと企業にとって不本意な結果となる。

また、現在、ベビーブーマー世代(世代の特徴としては内部抗争体質であって協調性を欠く人材が多いとされる)が50歳台後半になっていて、60歳まで待つことができなくなっているのが企業の現実と考えられる。

また、決算上は特別損失となるのだが、毎年毎年のように小出しに整理を行うのも、見通しが甘いと言わざるを得ない。