話題のJatropha(ジャトロファ)のこと

2007-12-10 06:35:54 | 市民A
Jatropha(ジャトロファ)というのは植物で、それの種が重要な意味を持っている。ミャンマー・中国・フィリピンで急速に作付け面積が拡大し、収穫量が伸びている。見かけはコーヒー豆のようなこの実だが、人間には有害。逆に有害だから有用という奇妙な話である。



そして、その用途は石油代替燃料。

ここで、植物起源による燃料について考えると、主に三種類になる。

1.直接燃焼型
  広くいえば、「薪」ということだ。直接燃やす。廃材・間伐材や薪やゴミなどによるエネルギーの抽出。欠点を言えば、あらかじめ乾燥に天日が必要とか、燃焼型であってエンジン向きじゃない、とか、燃焼ゴミやダイオキシン問題とか

2.ディーゼルエンジン用
  バスやトラックや船舶のようにディーゼルエンジンを使う用途は、通常は軽油(ディーゼルオイル)が使われる。この軽油代替品に植物油が使われる。よく食用油を使う例がある。欠点は、生産量が少なく、コストが高いこと。さらに、勝手に軽油車に混入すると、「脱税行為」になることだ。

3.ガソリンエンジン用のアルコール原料
  メタノール(メチルアルコール)、エタノール(エチルアルコール)はガソリンエンジンに対して、ガソリンと類似した性状を持つため、糖類、でんぷん類などを起源としてバイオアルコール類を作ればいい。原料はサトウキビ、コーン、キャッサバ、米などであり、もともと人間の食料でもあるため、世界的に見た場合、「省エネ」か「飢餓」かというシリアスな問題に直面してしまう。(中国では、稲の藁からエタノールを生産することを考えているようだ)


そして、ジャトロファだが、上記2のディーゼルエンジン用である。つまり、実を絞って植物油を採取する。そして、軽油の代替としてバスやトラックで使用する。競合相手は、植物油全体であるが、生産性からいうとパーム油あたりになる。そして、このジャトロファだが、食用油と競合しないわけだ。先に食用油について書くと、中国の所得向上によって、食用油の輸入が増加している。中華料理に食用油は必須だ。今後とも食用油の需給はタイトだろうし、価格も上昇していくだろう。さらに燃料に使うと、食事に影響してくる(もっとも、油分ひかえめの方が健康ではあるが)。



一方、このジャトロファは食べると有毒なのだから、食用油とは競合しない。さらに農地ではなく山林部でも栽培できるし、菜種やゴマなどの食用油原料は一年草なので、土地の緑化には役に立たないが、ジャトロファは樹木であり、商業生産の寿命は50年といわれるので荒地の緑化にも役に立つ。

ということで、バイオ燃料の中でもかなりのすぐれものである。緑色の実の中に種があって、それを絞ると25~30%の油が採れる。効率性を考えれば、土地面積あたりの収量と、その生産物(実)の油分の比率(含油率)の積になる。面積当たりでもっとも効率的なのはパーム油で、含油率はやや低い(20%)が、面積当たりの収量が多いため、1ヘクタール当たり4,000KGの油が採れる。ピーナッツ、菜種、ひまわり、ゴマあたりは、含油率は40%以上だが、収量が少なく、1ヘクタール当たり400~700KG程度である。

それに対して、ジャトロファは1ヘクタールあたり2,310KGということで、相当有望であるといえる。緑化によるCO2の固定化とバイオディーゼル用の二刀流である。

しかし、収量が多いとはいえ、1ヘクタールでとれる油分が2310KG、重さではなく量換算すると、3,000リットルである。1ヘクタールというのは野球場のグラウンド面積(約1.3へクタール)を小ぶりにしたサイズだが、それでわずか3,000リットル(街中を走っているタンクローリーの一般的サイズは20,000リッターである)ということは、ジャトロファの威力もかなり限定的だろう、ということがいえるのである。



ところで、南方の方には様々な植物が存在していて、基本的に食用にならないものは、誰も興味がなかったのかもしれないが、ジャトロファだけではなく別の植物も見つかっている。インドネシアの「Ki Honje」。英語での通称は「Petroleum nuts」。絞った油は上質な灯油に近いそうである。これも食べられないそうだが、毒性があるのか、不味すぎて口にできないのか、よくわからない。