将棋棋士の平均的寿命について

2007-12-08 00:00:33 | しょうぎ
真部九段の享年は55歳だった。「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり。一度生を得て、滅せぬ者のあるべきか」とは、「謡曲・敦盛」で、これを宴会の持ち歌にしていた信長は、数え五十で不意になくなる(敦盛は16で亡くなる。at 一ノ谷だ)。

現代日本人の平均寿命は男78.56歳、女85.52歳といわれる。この平均寿命だが、正確には生まれた0歳0週の平均余命ということであり、複雑な計算で各年齢ごとの平均的生存確率を積み上げ、「生命表」というものを作ることとほぼ同義である。したがって、男性棋士の平均寿命なるものを計算することは無理なのだが、少し違う角度で計算してみる。

将棋連盟のHPの中を捜索していくと、物故棋士の享年がわかるようになっている。データは1955年以降に亡くなられた棋士90人のデータである。その90人の享年を単純平均してみる(内、一人だけ享年が記されていない方がいて、このデータを埋めるのに時間がかかってしまった)。結果は・・

67.51才である。短い!

いくつかの補正・補足が必要になる。

1.平均的寿命であって、平均寿命ではない。存命の方で長寿の方が多い場合は、その方が亡くなられた段階で平均値は上昇する。

2.母数が少ないし、平均寿命が短かった1950年代、1960年代の方も含まれている。

3.享年データの端数を切捨てて計算したため、0.5歳程度少ない数字になる。補正するとちょうど68歳になる。

4.逆に、0歳から棋士になるわけではなく、おおむね20歳の平均余命を見ると、59歳(つまり年齢で言うと79歳)。

つまり、あくまでも凡そということで言って、10歳くらい寿命が短い、ということができそうだ。

さらに享年の年代別分布を見ると、

  20台    1人
  30台    3人
  40台    9人
  50台   10人
  60台   18人
  70台前半 18人
  70台後半 13人
  80台   18人 となっている。

70台後半に至らない比率は(59/90)で65.6%である。

これでは、まずいのではないだろうか。まさか、不健康な人の方が将棋が強くなる、ということは考えられないから、将棋を指すと不健康になる、ということだろうと考えるわけだ。将棋連盟は、そういうところから検討しないと、将来的には、優秀な人材を確保できなくなるのではないだろうか。

原因はよくわからないが、不規則な生活、ストレス、セルフコントロールの難しさ、などが遠因かもしれない。真部九段も、親愛すべき升田幸三モデルで、タバコを極端に嗜んでいたようだ。自記によれば、肺の異変を指摘されるまで、平均的に1日40本タバコを吸い、対局時には100本と書いている。さらに升田流で、銘柄はハイライト。

将棋連盟は、現在、棋士の脳みその構造の研究に力を入れているようだが、健康管理、そして棋士の寿命の研究も重要ではないだろうか。

そして、すぐにでもできることだが、次の二点を実行するべきと思うわけだ。

1.対局中の禁煙

2.対局前の呼気中アルコール濃度検査

1は言うまでもなく、どこの企業でも実施済み。2は運送業や外資系企業では実施しているところが多い。少なくとも対局料をもらって指す以上、飲酒対局はいけない。もちろん、朝の検査時に基準値をオーバーしていても、1時間後に規定濃度以下に落ちていれば、遅刻扱いで対局開始でいいと思う。その他、半年に一回は尿検査も必要かもしれない。スポーツのアジア大会でチェスが参加した際には、「頭の一時的によくなる薬」をチェックするためにドーピング検査も行われていた。

猶予期間1年とか設定して、2009年4月実施目標で(一般企業なら、決定後即実施が普通だが)。

その他、ルールで言えば、遅刻防止のために「開始30分前集合」とか幼稚園のようなルールもあるかもしれないが、そういう方式が棋界をはみだして一般社会に敷衍すると、私もクビになりそうなので、勧めない。

そして詰将棋界には、「プロ詰棋界」というようなカテゴリーがあるわけでもなし、統計もないのだが、有名な作品を残して夭折された方が多いような気がする。確かに余詰チェックというような作業は健康的な生活とは対極にあるような気がする。



11月24日出題作の解答。

▲4七金(邪魔駒消去) △同玉 ▲4八銀 △3八玉 ▲3九銀(危険地帯へ誘導) △同玉 ▲3六飛(途中図1・邪魔駒消去) △同香 ▲7五角成(遠打もどき) △3八玉 ▲4八馬 △2七玉 ▲2六馬 △3八玉 ▲4八馬(スイッチバック) △2七玉 ▲3九桂(逃げ道封鎖) △同桂成 ▲2六馬 △3八玉 ▲4八金まで21手詰め

手筋乱発作である。

むしろ、初手▲4七金に対する後手の対応が難しく、仮に2手目に△4七同銀成の場合は、▲4八銀と打つ。
これに対して、△同成銀と応じると▲6四角成以下、2八と4六を使って馬のスイッチバックが登場し、▲3九歩で合計13手詰と早詰。

また▲4八銀に対して△3八玉とかわした場合は▲4七銀、△同玉となる。ここで▲4八銀と打ち本譜同様に進むと、25手詰になり正解風だが、戻って▲4七銀、△同玉に7手目▲5八銀と打ち、△3八玉、▲4九銀、△3九に飛車を捨てて、角を成ると早詰になる。したがって、2手目に戻り、△4七同玉が正解になる。



本日の出題は、飛び道具の中距離使用問題。大技ではなく中技を使って、市街地ドライブ風にストップ&ゴーを繰り返し、フィニッシュの爽快感にこだわってみた。(半島から列島への短距離ミサイル発射みたいな問題か)

盤の下側に横向きに展開するというのは、新聞詰将棋などには、最悪の配置ということだ。

いつものように、わかったと思われた方は、最終手と手数を記入いただけば、正誤判断。


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