ヌーボー解禁、景気失速シナリオの第一章?

2007-11-15 00:00:17 | マーケティング
97801e9c.jpg11月15日。11月第三週の木曜日は恒例のボジョレヌーボー世界同時解禁日である。巧みなマーケティングによって日本の年中行事に組み込まれた感のあるこの解禁日については、解禁日前の一週間、世界中のスポット機をかき集めて、フランスから日本への大空輸作戦が繰り広げられる。成田・関空・中部だけでは足りず、全国の国際空港に適温に調整されたコンテナ便が飛んでくる。そのために、他の貨物の輸送は遅れてしまうのだが、無視。

そして、世界の大部分の国の中で最も早いという午前0時、フランスより8時間早く、詰めてまもないコルク栓がすぐにあけられるわけだ。銀座でも赤坂でも新宿でも。「ア・ヴォ-トル・サンテ(乾杯)!!」「じゃ、解散ね。皆さん終電に気をつけて、・・」

この、ヌーボーの日がイベント日になったのには、いくつか要因がある。

1.まず、マーケティング。新規需要の開拓である。フランス関係者、輸入商社、酒販組合、そして空運業者などが共犯。

2.簡単に乗せられる国民性。
  「世界で最も早い」→初物に弱い。(本当はニュージーランドの方が早い。)
  「フランスブランドに弱い」→カモ

そして、2006年の実績では、96万ケース(1150万本)輸入されたそうだ。日本に継ぐ輸出先はドイツ(320万本)、アメリカ(280万本)だそうだから、いかに日本の異常かがわかる。ドイツのことはわからないが、白ワインの新酒はドイツに限るとの説もある。

ところが、どうも2007年商戦には、相当の暗雲がかかっているらしい。

一説では輸入量が昨年比2割減ということらしい。

こういう話ははっきりしないが、おそらく、昨年、大量に売れ残ったのではないだろうか。フランス産新酒のイノチは2週間とも聞く。しかも、何日も前に作って、飛行機で飛んできて、最大1週間倉庫に眠っているわけだ。赤福ではないが、鮮度は徐々に落ちる。そこに在庫が残れば安売りに走り、ブランドが崩れる。クリスマスケーキやバレンタインチョコなら、期日を過ぎれば捨ててしまうほかないのは誰でもわかるが、ワインの鮮度は味の問題であって、有毒化するわけじゃない。だらだら売っていれば味のイメージも落ちる。

ということで、供給量を減らしたのだろうし、さらに別の問題がある。

2007年のワインは不作。天候不順だったそうだ。ただし、飲み慣れぬ個性的な味に仕上がっているという説もある。

ユーロ高。165円/ユーロである。標準的には1本2500円ほど。昨年は2300円程度だったと思う。もともと現地価格は3ユーロから5ユーロ。高過ぎるのじゃないだろうか。

そして、消費者の財布である。これはきびしい。石油価格をはじめ、穀物価格、非鉄価格、さらには魚のネダンまで誰のせいかわからないが上昇を続ける。もともとの話では、消費者物価指数が上昇することによって、賃金アップとデフレ脱却ということだったのだが、現実はもっと複雑だった。

物価が上がっているものは、総じて一次産品の海外価格上昇に伴う価格転嫁であって、国内産業的にはただの負担増。当然企業収益にはマイナス。逆に下がっているものは、薄型テレビ、携帯電話などの価格競争が激化している分野で、これは競争激化による企業マージンの吐き出しに過ぎないわけだ。現に、新規住宅建設が止まった米国向けでは日本製薄型テレビは大苦戦に追い込まれているらしい。

賃金が上がっているのは、一部の新興国に子会社を持つ大企業で、海外子会社からの配当収益を得ているところだけだろう。国内産業への波及効果なし。さらに12月初旬のボーナスは微増しているかもしれないが、月末の給料明細を見ると、毎年恒例の所得税減税がまったくなくなってしまったことを知ることになり、今年のクリスマス商戦は、そこで終わるはずだ。正月はこない。


話を再びワインに戻すと、実は毎年、イタリアワインの新酒を6本まとめて買っていた。イタリアなので、ヌーボーではなく「ノベッロ」。なんでまとめて買うかというと、一つは、1本だけ買うなんて、貧乏っぽいからだ(本当は貧乏だ)。そしてフランスのヌーボーは賞味期限が短いが、ノベッロは日持ちする。おみやげに「赤福」を買わずに「ゆかり」を買うようなものだ。

ところが、とうとう6本で1万円を超えてしまった。なので、注文しないままにしたら、3回もDMで督促状が届いている。イタリア産の新酒は、すでに11月6日に解禁になっているのだから、大きく売れ残ってしまっているのだろう。そのうち電話がくるかもしれない。

一方、とはいっても新酒の魅力というのも捨てがたいので、先週は日比谷公園で行われた「やまなしの新酒ワインまつり」に700円を払って行ってみた。もちろん35社67種類全部のワインのテイストをしたわけではないが、1本1000~1500円前後で、すばらしい味のものもあり、ダメなものもあった。画一的なボジョレヌーボーとはかなり違う世界だ。ぶどうの品種も、ベリーA、甲州、あじろん、ナイアガラ、マスカット、巨峰と種々多様。

そして、早い話が飲み過ぎてしまったわけで、自分的な新酒まつりは700円で終了という、まったくデフレ型におさまったわけである。



↓GOODなブログと思われたら、プリーズ・クリック


↓BADなブログと思われたら、プリーズ・クリック