ボーン・アルティメイタム

2007-11-11 00:00:33 | 映画・演劇・Video
まず、映画の題名が難しい。アルティメイタムとカタカナ変換するのだって、1文字間違えると「歩き目痛む」になる。英語で書くと、「THE BOURNE ULTIMATUM」となる。本当は、「スパイBの逆襲」とかにすれば解りやすいのだが、ボーンはスパイの名前で、アルティメイタムは「最後通牒」という意味。



原題と同じになった理由はシリーズ物ということで、この前作が「ボーン・スプレマシー(THE BOURNE SUPREMACY・2004年作)」。スプレマシーは「覇権」という意味で、これも難しい。英語の試験みたいだ。そして、その前が「ボーン・アイデンティティ・(2002年作)」で、これは何とか「自分探しのストーリー」という意味だとわかるが、これが第一作。おそらく、第一作のアイデンティティを日本語にするのが難しかったので(「自分探しの旅に出たスパイ」じゃあ・・)、そのままにしたら、さらに難しい単語が登場してしまったということではないだろうか。

しかし、配給元や翻訳者がこれ以上悩むことはないはずだ。というのも、全三回をもって、このシリーズは終了。というより、主演のマット・デイモンが「もはや、ここまで」と最後通牒を出したらしい。


スパイ物というのも好きだったのだが、小説にしても映画にしてもソ連崩壊以降はストーリーが難しい。北朝鮮とかソマリアとか題材にすればいいのかもしれないが、何しろ、そういう国で何が行われているのかよくわからない。スパイ行為は白人社会専門で、ソ連に潜入することはできても肌の色の違う国で活躍するのは難しい。

この映画の主人公ジェイソン・ボーンはCIAが殺人マシーンに人格改造した男だが、その暗い過去を思い出しながら、改造前の自分探しの旅に出る。というとかっこいいのだが、第三作になると、旅に出るのではなく、自分の秘密に迫りながらヒットマンに追いかけられるわけだ。モスクワ・パリ・ロンドン・マドリード・タンジール。そしてニューヨークで大暴れするわけだ。

堅い話をしてもしょうがないが、殺人鬼になった自分の性格の呪縛を解くための人格改造研究所を探すのだが、旅の途中で、死体の山を作ってしまう。注意深くストーリーを思い出すと、彼が自分の気持ちを傷つけているのは、「同じアメリカ国民を殺したこと」であって、非アメリカ人を殺したり、巻き添えにしたりすることは一向に気に留めない。特にタンジール(モロッコ)では、道路・ビルの破壊、人身事故、地元警察や新型のドイツ車多数に総額1千億円の損害を与えた後、姿をくらます。翌年のモロッコ政府の国家予算は破綻だ。

一般に、スパイ映画で覚えた手口は、実生活でも役に立つことは多いのだが、この映画から応用できそうなことはあまりない。人混みで姿を消す最善の方法は、しゃがみこんで靴の紐を締め直すことらしいが、紐のない靴ではダメだ。東京の人混みでしゃがみこむと、突き飛ばされて、さらに踏みつけられそうだ。しかも、スクリーンの中でも、紐を締め直した英国人新聞記者に明日は来なかった。


そして、シリーズ最終回だというのに、主人公、ジェイソン・ボーンはCIA幹部多数を刑務所送りにした後、ビルの10階から川に飛び込み、またしても2、3年間行方をくらますようだ。いさぎよくない。


ところで、アメリカ映画らしく、あちこちで派手なカーチェースが行われる。「なんで、お前だけ生きてる!」って。しかし、カーチェースの世界って、詳しくないが、色々な技があって、アメリカ人ってそういう小さな差というのを楽しんでいるのだろうか。フィギュアスケートみたいに、クラッシュした後、4回転半するとかタイヤが3本になっても2本になっても走るとか、・・そういう進歩がなければ、誰も観ないだろう。あるいは、惰性?。

実は、本気で、カーチェースを観ているうちにクルマ酔いになってしまったわけだ。三半規管が狂ってしまった。映画が終わっても軽い吐き気が続いてしまう。

そして、この映画は絶対にアカデミー賞には関係ないだろう、とか思っているとノミネートされたりすることがあるのだが、やはりあり得ないのではないだろうか。