羊のガリ

2007-11-19 00:00:23 | 市民A
東京の港区にある愛宕山の上には、NHKの「放送博物館」がある。何代か前のNHK本社である。山の上にあるのは、電波を遠くに飛ばすためだったのだろう。ここで毎月開かれている「世界のコトバでアイラブユー」という催しが、50回目になり、「ロシア編」に顔を出す。最近、ご禁制のロシア貿易でもしようかと思って、研究の一環。「現在のロシア」について講演されるのは、日本在住11年というロシア大使館のコスチン参事官。日本語は80点のレベル。

ところで、大使館員といえば、その発言はきわめて重要であり、またデリケートである。どうも、私の後ろの席に座っていた初老のオヤジ風は、日本側のSPYのような雰囲気なのだが、大丈夫だろうか。と、心配しているうちに、かすかなイビキが聞こえてきた。油断させる作戦だ。


まず、現在のロシアだが、「日本食ブーム」らしい。モスクワには数百の日本料理店が開店し、経営は韓国・中国・ロシア系の人が多いらしい。健康食であり、さらに価格が銀座並らしい。儲かりそうだ。そして、モスクワは物価がどんどん上がっているのが問題で、ロシア全体でもGDPの伸び率が7%台であるのにインフレ率は9%超。石油・ガスといった地下資源で潤っているだけではなく、むしろ内需主導の経済成長だそうだ。

しかし、ロシアにも、かつて苦しい時期があって、1991年から1994年までは、国民が大いに苦しんだということだそうだ。

また、憲法で民主主義を規定してあり、二院制で、市場経済で、6つの政党が議席を持ち、言論の自由が保障されているそうである。

そして、日本文化の浸透度だが、まず、生け花がブーム。そして、陶器、骨董、盆栽、墨絵が流行っているらしい。が、骨董にはニセモノが多いそうだ。さらに文学の世界でも、日本人作家の多くが翻訳され、ほとんどの大書店に村上春樹コーナーがあるらしい。そして、多くのロシア人が読んでいる村上春樹の小説は「羊のガリ」という本だそうだ。

羊のガリ」・・・ニセ春樹かもしれない。

そして日露間では”サハリン2”が来年(2008年)から動き出し、日本の天然ガス需要の10~12%を供給することになる。またバイカル湖から伸びるパイプラインが日本向けに原油を出荷するということだそうだ(これは、まだ決まってなかったはずの「日中綱引き案件」だったはず。ロシアの本音は日本乗りだったのだろうか)。

そして、日本とロシアとは共同で密輸・密漁の取締りをしていて、政府同士の仲が大変いい、というようなことを言われ、講演は終わり、Q&Aの時間に、危ない質問がいろいろ飛び出す。


Q:シャラポアや何人かの芸術家のように、ロシア人が海外に出て行って戻らないのは、ロシアに言論の自由がないとか、昔のソ連に戻るのではないかと恐れているのではないか、あるいは税金が高いのだろうか。

A:言論の自由は憲法で保障されている。新聞や国会での審議を見ていると、野党の主張や攻撃は、日本より厳しいものがある。また、昔のソ連のことは「精神的刑務所」と皆が思っているから、そういう国になることは考えられない。そして税金は所得の高低にかかわらず一律13%なので、金持ちが税金を理由にロシアを出ることは考えられない。シャラポアはこどもの頃から米国にいるので友達がアメリカに多いのだろう。それにソルジェニーツィンはロシアに帰ってきた

おおた:確かに日本と同レベルの言論の自由はあるのかもしれない。しかし、政府サイドが都合のいいニュースを流したりしているわけだ。日本と違って、ロシア人は行間を読む習慣が身についているのだろう。たとえば、日本のロシア大使館のHPを見ると、プーチンは学校卒業後、KGBに志願して入ったのではなく、「割当て就職制度」によって、あまり行きたくないのにKGBに入ったように書かれている。そして、税金が一律13%というのは、驚くべく金持ち優遇だ。私程度だってロシアに住みたくなる。シャラポアがロシアに住まない理由は単に友達の関係だけなのかは慎重に考えるべきだ。彼女の両親はチェルノブイリ原発事故で、住んでいた場所を失ったからだ。


Q:北方領土問題について

A:両国とも平和条約が必要だと考えていて、活発な話し合いが開かれている。首脳や外相会議は数多く行われていて、ロシア副首相も今月来日。両国の国民、国会が受け入れ可能な案を見出だすように話し合っている。

おおた:なかなか、いい案が思いつかないわけだ。そして、後ろの席のSPYもどきも、この話になると、いきなり目を覚ましてしまった。


そして最後に、日本人とロシア人のビジネス上のトラブルの多くは、日本人のビジネスマンはサラリーマンばかりで、すべてものごとを”稟議”で決めるが、ロシアのビジネスマンはたいていが個人経営なので”即決方式”であることから起こるらしい。

というところまでで、難しい話は終わりで、その後、第二部ではチャイコフスキーのミニ演奏会があり、バレー音楽はじめ、美しき楽曲の数々が奏でられたのである。


作曲家浅香満氏のナビゲーションで、ピアノとクラリネットの二重奏が鮮やかなチャイコフスキーの音楽を復元する。余談だが、クラリネット奏者の女性演奏家は、武蔵野音大を卒業後、なんと海上自衛隊に入隊していたのだが、除隊後、個人で演奏をしているそうだ。まさか、インド洋で給油量を間違えてクビになったわけじゃ・・


そして、全プログラムが終了し、お開きになるのだが、最後にNHK側から、「50回を機に、この企画そのものが終了になります」旨の発表がある。私は全50回のうち、今回だけしか参加していないので、なくなろうが愛惜の情はまったくわかないのだが、何となく「放送博物館自体が取り壊されるのではないだろうか」と疑ってみたのだが、その疑念が、もっと確信的な疑問に変わるまでには1日しかかからなかったのだが、それは六本木と森ビルに関する話を聞いたのが、1日後だったということだからなのだ。

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