とても嫌なコトバ「ギリチョコ」

2007-02-15 00:00:00 | マーケティング
バレンタイン・デーが終わる。たまたま渋谷に所用で行っていたのだが、東急百貨店東横店の一階やその周りは、どこもチョコ売場になっていて、女性たちの大群衆状態になっていた。少し前にデパ地下で恵方巻きのピラミッドを見ているので、まったく驚かないが、変な国民だ。本当に、一般人が歩行困難状態となっていた。ギリギリのギリチョコ。まあ、この14日というのも、給料日からだいぶ過ぎていて、さらにクレジットカードの引き落としの少し後という、タイミングがよくない日取りだが、故事にならっているからしょうがないかもしれない。

しかし、実際、この日に売れるチョコレートの90%くらいは、いわゆる「ギリチョコ」なのだろう。まったく奇妙な習慣だ。贈りたくないのに、義理で贈る女性。義理で贈られたのを知っているからもらって嬉しくない男性。まったく「ギフトの基本」からはずれている。もっとも嫌なのは、2月14日に出張が入り、数日後、会社に出社すると、誰からのものかよくわからない包み紙が机の上にバラっと置かれていることかな。以前は、職場でも「お局さま」が女性社員から定額徴収して、均一チョコレートを男性社員に平等に配布したりしていたらしいが、昨今は、女も男も契約社員が増加して、そういう平等方式は成り立たなくなっている。

さらに、「ギリチョコ」といっても、何の義理でチョコを贈るのかもよくわからない。もう、21世紀の現代社会には、「義理」そのものが存在しないのだから、「義理以下チョコ」もいいとこだ。根拠ないギフトはやめた方がいい。だいたい、愛の告白したいなら、2月14日に限らずチョコを贈ればいいわけで、そっちの方があらゆる面で合理的だ。ビジネスで考えたって、いつでもチョコを贈れることになれば、そちらのほうが売上げは増えるだろうし、単価も高いものが売れるはずだ。しかも、売れ残り問題もない。以前、コンビ二経営を手伝ったことがあったが、チョコの売れ残りの山に頭を抱えたことがあった。腐らないからといって、1年後に売るわけにはいかない。


さて、以前の会社で、女性社員の間で、手製のチョコ作りが流行っていたことがあった。基本は、溶かして型に入れて固めて、デコレーションをつける、という方法だろうが、金を数千度で溶かして指輪を作ろうとかいうことではないから、手軽にできるはずだが、そういう完成品を見ると、驚くほど巧拙があらわれる。もともと人間の知能というのは、それほど個体差が大きいわけではないし、運動能力だってそんなに何倍も差があるわけではないのだが、こういう手先の技術というのはずいぶん個人差があるなあ、と思っていたが、口に出す奴はいない。ブログの世界も、同じ形態なのに、千差万別なものが出来上がるのだから「人間は不思議だ」。「ギリチョコ制度」を見れば、「人間社会も不思議だ」。韓国に行くと、バレンタインデーにもホワイトデーにも何ももらえなかった人のために4月14日をブラックデーというらしいが、どうしても、そういう被害妄想的な発想になる国だ。


ところで、日本人はブームに乗せられ易い国民なのだから、そのうちに、愛の終わりを告白する日だって登場するかもしれない。「ハサミか爪切り」でも贈ればいい。間違いなく「ギリ商品」は現れないはずだ。