不安定な株価と円キャリートレード

2006-12-06 00:00:35 | 投資
東証の株価が不安定である。どうもニューヨークとの連動性を感じない不安定な状態である。12月ということで、年末に近づくと、個人株主は、確定申告用の損切りを始めるので、年を通して下降傾向の株は、大幅に下がり、上昇傾向の株は少し上り、最近、新規上場して冴えない株は大崩壊するだろうということは、わかるのだが、どうも「日銀利上げ」に対する警戒感がただよっている。

しかし、もとより、景気がいいから利上げするのだから、利上げの影響など限定的ではないか、との声もあるのだが、そういうものでもない。景気にしても、労働分配率の上昇のためには企業のキャッシュフローの改善が必要だろうが、あまりそういう傾向は見えない。そして大きな問題は、背後霊のような巨大な、円キャリートレード(狭義・広義)の絶壁が見えているからだ。

まず、円キャリートレードだが、教科書的に言えば、日本の安い金利で資金調達し、利回りの高い米ドル等にシフトして利ざやを稼ぐことということになっている。となれば、調達金利が高くなれば、割が合わなくなって解除されるのだが、この解除する時に、外貨が売られ、円が買われるため円高に向かうということだ。そして、日銀の利上げは一瞬にして行われるため、一瞬に円高が進行し、なだれをうつようにバイワインド(まき戻し)が始まり、1ドル100円を割れ、輸出企業が総崩れになり、一気に不況のどん底に落ち込んでしまう、というシナリオだ。

f847858c.jpgさらに、広義のキャリートレードだが、日本は貯蓄大国である。国民の預金通帳には1500兆円という途方もない金額が書かれている。つまり、銀行から借りてこなくても資金は大量に余っているわけだ。実は、政府が「貯蓄から投資へ」と言っていた結果が、むしろ株式ではなく外債投資に向かっているのが実態なのだ。推定では、1500兆円のうち35兆円が外貨投資になっている。率でいえば僅か2.3%なのだが、額が額だ。考えてみれば0.1%でも1.5兆円という巨大な導火線になっているわけだ。

一方、実際には、日本株を日本円で買うよりも、ドルで米国株を買ったり、ユーロで欧州株を買ったり、元で中国株を買うほうがかなり安全で健全投資になっている。もともと、世界の多くの国では、日本は超低金利によって輸出産業に有利なように円安を誘導して、その副作用としてファンドや個人の放出する余剰資金がまわりまわって、金や原油の投機に向かい商品相場高騰につながっているのではないか、との疑いを持っている(が、確証がないので大きな声では言わない)。

となれば、日銀も年内に利上げをして、その影響度をチェックしたいという気持ちも山々なのだろう。しかし、世界為替市場大崩壊のリスクを負ってまでできるかどうか、いや、すこしずつ巻き戻さないと大津波になるというのかもしれないが、どうなのだろう。もっと小幅な利上げという小賢しい考え方もあるのだが、それでは効果測定が困難だろう。


個人的な話だが、既にかなりを外国に出している(古来、可愛いおカネには旅をさせろ、という)。結局、安全性を考えると、いい悪いは別問題として、米欧中には経済政策の一貫性があるから安心できるわけだ。ということで「大津波・円高超特急」は困るのであるのだが・・。

そして、サラリーマンにとっての楽しみの一つである所得税の年末調整だが、たぶん、12月の給与明細をみて、多くのサラリーマンは「ガックリ」ということになって、その日をもって、暮れも正月も終わってしまうのではないのだろうか・・