外貨MMFの功罪

2006-12-14 00:00:38 | MBAの意見
私の場合、ブログを書き続けるため、最も重要なのは、「時間」。仕事はサッサと切り上げ、ビジネスはすべて忘れ、頭を切り替える。切り替える先がブログであったり、詰将棋創作だったり、その他。エンデの「モモ」には「時間泥棒」という悪魔が登場するのだが、自分にとっても、うかうかしていると、つまらない仕事が増えていく。会社などに勤めていると、基本的に、無駄な仕事が山積みになっていく。よく、サラリーマンの仕事には、「カネを儲ける仕事と、カネを無駄遣いする仕事がある」というが、おカネを儲けるのはほんの僅かなチャンスしかないし、おカネを無駄遣いするチャンスはゴマンと転がっている。そういうゴマンの方に付き合っていると、いくら時間があっても足りない。

それでは、そういうものを回避する方法だが、会社の場合、最も簡単な方法は、他人に無駄足をまわすこと。さらに、そのためにはどうすればいいかだが、もっともいい方法は、会社の役員とか上司とかを篭絡しておくことである。そして、さらに、そのためにはどうすればいいかと言うと、もっともいいのは「おカネを増やす方法の伝授」であるらしいことがわかってきた。もっとも、あまりカネを持ってなさそうな役員と、この分野で話すと裏目に出るから、オペラの話や高級車やゴルフの会員権とか、金持ち好みの話題を散りばめて、反応を窺ってからの方がいい。

特に、親の遺産とか天下り時の退職金とか、持ち慣れぬカネを手にした後、どうしていいかわからず、ずっと普通預金においていたりするらしい。新聞を見ると、日経平均急伸!とか中国株爆騰、とかNY株史上最高値とか、プラチナ価格乱高下とか、ゴルフ会員権3倍に急騰とかとか・・刺激的なコトバが世間に満ち溢れているが、もちろん近未來通信のような詐欺商品も多々ある。


ところが、実は社員に聞くのが恥ずかしいのか、証券会社の営業マン(ウーマン)に相談して、してやられる。そして、どうにもこうにもサッパリの状態で、私に声がかかる。「おおたさん、ちょっと相談が・・」。応接室とか、喫茶店とかで「聞くも哀れな話」の数々に付き合うことになる。だいたい、「個人客はドブ」といっていたN證券とか異常に社内ノルマのキツイ証券会社に口座を持ったりしている。「うまい話は絶対に向こうからやってこない」という絶対的真実を知らないわけだ(1年以上前に、某ホテルの喫茶店で、隣のテーブルでしきりに老婦人に電話事業の説明をしていたセールスマンを見たが、そんなものだ)。

今回、相談されたのは、IPO(新規公開株)被害。ビックカメラ上場以降、完全にIPOは逆目になっているというのに、「あおぞら銀行」で失敗したというわけだ。売出価格570円、現在100円安。思い出すと、そのA役員から、あおぞら銀行上場の頃、何か聞かれていたような気がする。「再生銀行なんてダメですよ」「新生銀行だって低迷しているのだし、それ以下ですから」「上場後、徐々に株価が上がるようなタイプの銀行ではないから、損得いずれにしても即売りです」「NKCデアルという証券会社がもてあましているようですから」、とか言ったような気がしていたのだが・・全部正解。

A:2000株で20万円損しちゃったのだけど、どうしたらいいのだろう。
葉:何で買っちゃたんですか?何のために?目標価格は?で、どうするつもりすか?
A:NKCデアルに言われて、1000株のつもりが2000株も・・
葉:危険なのが好きならeワラントに全部注ぎ込むとかFXとか・・
A:安全が第一で・・
葉:じゃ、個人向け国債とかにして日本国政府と心中したらいかがでしょうか
A:利回りが低すぎて・・長期金利も○△□△○□・・
葉:じゃ、外貨MMFとか知ってます?
A:聞いたことない・・
葉:自分で調べなけりゃ、欲しい物は手に入らないんじゃないですか

・・と言いながら、NKCデアルのホームページで商品を探してあげると、14種類の商品が並んでいる。
「国内株式」「新規公開株式」「信用取引」「株式ミニ投資」「キンカブ」「中国株式」「転換社債」「投資信託」「外貨建てMMF」「投信つみたてプラン」「個人向け国債」「新発外国債券」「デジワラ」「外国為替保証金取引」ということだが、かなりいいかげんな分類法だ。商品の種類と購入方法が入り混じっている。

そして、この中で、証券会社が勧めない商品が「外貨建てMMF」だろう。証券会社が儲ける率がきわめて低いはずだ。これに目をつけた人は、ローリスク、ローリターンを狙っているはずだから、簡単には解約しない。証券会社はまったく儲からない。要するに、資産の分散の一種に使うのだから、4~5%/年(税率20%天引)で十分ということになる。現在の年利は、米ドル4.67%、ユーロ2.77%、豪ドル5.55%、など(もちろん、全財産を豪ドルMMFにしてしまうと、うっかりして豪ドル安になると、将来オーストラリアに定住しなければならなくなるから注意は必要)。

A:為替リスクがあるんじゃないの
葉:為替キャッチャー設定して指定レートで自動精算する方法が一つ。動きが逆になることの多い、米ドルと豪ドルに分散する方法が一つ。
A:そうか、そうか、そうか、そうか・・・


4d7200ac.jpg結局、そんなことをしながら、また一人円キャリートレーダーが増え、為替キャッチャーなどという自分勝手な自動売買システムが、円高(円安)大崩壊のリスクを高めているということもできるのである(お勧めは米ドルMMFと豪ドルMMFの抱き合わせなのだが、もちろん元本保証の限りではない)。

そして、最近、既に社の内外のあちこちで篭絡された人たちが、スイスフランと米ドルの交換レート推移グラフの上に一目均衡表を重ねて、赤い雲の上とか青い雲の下とか、悩んでいるようなのであるが、ちょっと心配。要するに根拠もなく欲の深過ぎる人が多いわけだ。