桂成りにご注意

2006-12-16 00:00:42 | しょうぎ
名人戦の主催紙問題が、暗礁に乗っっているようだ。契約金の問題。とりあえずの当事者ではない読売は、こういう記事を書いている。


名人戦3億7000万円、朝日・毎日が将棋連盟に回答 12月12日配信 読売新聞

 将棋の名人戦を来年度に始まる予選から共催することで合意した朝日新聞社と毎日新聞社が、日本将棋連盟に対し、契約金など年間総額3億7000万円を回答していたことが11日、分かった。
 関係者によると、両社の提示額は、名人戦契約金が1社1億7000万円の計3億4000万円で、ほかに将棋普及協力金を朝日が2000万円、毎日が1000万円支払うという。この契約金額は現在の毎日単独主催の3億3400万円より600万円アップするものの、読売新聞社が主催する竜王戦の契約金3億4150万円を下回る。
 一方、連盟が10月に提示した額は、2社同額で1社当たり、名人戦契約金が2億円、名人戦振興金が3000万円、将棋普及協力金が1億円の計6億6000万円。金額に開きがあり、連盟側は2社の回答に反発。交渉が続いている。
つくづく将棋連盟の世間知らずが見えてしまうのだが、何しろ交渉が終わってもいないのに「将棋世界」誌上で内幕を暴露したり、既に普及協力金が入金されることを前提に、お金の使途を論議したり、何しろ交渉金額が漏れてしまうのも、相手への信義上、最悪だ。毎週水曜に連盟で行われる定例理事会も、最近は、なかなか終わらないようだ。

もともと、朝日、毎日という大新聞と分離交渉して条件闘争していたのに、両者に合法的にタッグを組ませてしまったのだから交渉テクニックが使えなくなっている。日本には、一応、独禁法があるので、二社と別々に秘密交渉することが可能なのに、その権利を自ら捨ててしまったわけだ。日頃、こういう交渉を無数に行っている立場で考えると、最も不利な戦術を採用し、追い詰められているとしか見えないのだが、このまま行くと、少なくとも理事長、副理事長が責任をとって辞任ということになりそうな気もする。その他の理事の組み合わせはよくわからないが、谷川・羽生という両巨頭が登場するしかないような場面になるかもしれない。


3e4eb84e.jpgところで、12月5日に行われたA級順位戦6回戦で、みっともないことが起きた。久保八段(先手)対郷田九段(後手)戦の終盤182手目(実は久保八段の王が詰んでいる)で、久保八段から、「郷田九段の126手目(5七桂成)は秒読み時間切れではなかったか」とのクレームがあり、対局がストップ。午前2時に、連盟副会長の中原誠氏が電話で事情聴取の結果、「後で、クレームをつけても無効」というジャッジメントが出て、久保八段が投了。

まあ、ルールブックにも、そんなに細かな記載はないのだろうが、秒読みの記録係が50秒、1、2、3、・・・、9、10というべきところ、最後の10が怖くていえなかったのだろうと想像してしまう。どうも問題の局面で考え過ぎ、最後の桂が成るところで、駒を裏返す時、うまく指が動かずに手間取ったということらしいのだが、真相はよくわからない。サッカーで、手を使ってゴールをしたのが、後でビデオでわかったようなものなのだろうか。

時期が時期だけに、こういうつまらない事件は、「名人戦+順位戦」というシステムそのものの価値の低下に繋がるような気がしてしまう。名人戦の価額というのも、本質的には、その内容の持つ価値からくるのだから、両対局者及び当日の記録係にも緊張感が不足しているといわざるを得ない。

以前、少し触れたが、現在のAクラス10人制では、総当りリーグで45局。これに名人戦7番勝負を加えると52局になってしまい、1年の紙面がほぼ全部埋まってしまう。ところが実際にはA級の中にもS級のような棋士が4~5名いて、SとAがあたると、たいていSが勝ってしまう。もともと弱いA級同士の対局を掲載したところで、挑戦者争いとは無縁なのだから、ややつまらない。

3e4eb84e.jpg提言なのだが、A級から独立させてS級を新設し、8人枠にしてみるといいのではないだろうか。残る2名とB1級13名に一人足して16名でAとB1と2つのリーグを組めばいい。S級の8人のリーグなら、28局。名人戦7局を加えても35局。17局のフリーハンドが可能となる。たとえば、12月11日に行われたB2級渡辺ー内藤戦なども余裕で掲載できるわけだ。

ところで、問題の5七桂成を見て、思い出したのが、昨年5月26日の加藤一二三対阿部隆戦(銀河戦)。加藤九段は秒読みに追われながら3七桂とした時に、一旦、桂不成と指したあと、その駒を取り上げ、裏返して3七桂成と指し直し、「待った」と判定されたわけだ。ところが、この勝負、待ったの効能で加藤九段が勝利を得たのだが、テレビ棋戦であったのが運のつき。視聴者からの指摘で「待った」確定。

3e4eb84e.jpg桂は成らない方がいい時もたまにあることから、指す瞬間に心に逡巡が入るのだろうか。チェスのように、自分で記録用紙を書き、秒読みクロックを押すような仕組みの方がいいのではないだろうか。少なくとも記録係に払うバイト代の支出は削減できるわけだ。別稿に譲ることにする。

前々週の詰将棋の解答は、こちら。逆上がりの着地に無理にムーンサルトをつけたような感じと思っている。




3e4eb84e.jpg今週の問題だが、端に香と桂を配置したら「実戦型」と呼ぶことをパロディにして、逆向きに作ってみた。あまり、難しくならなかったので、着地におまけをつけてみた。「蛇足感」ありか。いつものように、コメント欄に最終手と手数と酷評いただければ、正誤判断。