正義の味方は誰のため?

2006-12-05 00:00:46 | マーケティング
624e2efb.jpgしばらく前に、朝日新聞では、「コンタクトレンズ販売に伴う眼科医の水増し請求問題」をとりあげていた。もう終わったのか、まだ続くのか判然としないのだが、個人的には嫌なムードを感じていた。なにしろ問題となったのは、特に使い捨てレンズの話題で、「安売りするために、併設眼科の診察代をつりあげ、後でキックバックを取っている」というような批判的内容だった。実は、私も使い捨て(ワンデイ・アキュビュー)を長い間使っていて、他人事ではないのだが、直感的に、この記事を書いている記者はコンタクト派ではないな・・と感じるからだ。

まず、朝日の記事に入る前に、この使い捨てレンズは結構高い。まあ、1枚100円前後である。普通、左右2枚するので1日200円。年間で7万円くらいになる。そしてメガネが不要かと言えば、そんなこともない。メガネも必要だ。おそらく、視力矯正のためには、メガネやハードコンタクト、ソフトコンタクト、2ウィークアクビューとか色々あるが、もっとも高いと思われる。その反面、もっとも快適に近い(手術法は除く)。レンズのケアは不要。仮にスポーツで落としても、1枚100円。落としても床を這いつくばって探す必要もない(落としたレンズは使えないし)。

ところが、このワンデイ型レンズの最大の問題は、メーカーが超ガリバー型になっていること。圧倒的シェアをもつのがジョンソン&ジョンソン。米国内だけではもっとも優れた企業といわれる。MBAのテキストによく出てくるタイレノール事件という睡眠薬事故の時、全製品を回収した(現代では当たり前だが)。そして、バンドエイドとワンデイレンズは明らかに他社より技術的優位性がある。そして、日本ではコンタクトの再販価格維持のための諸政策に対して、公取委から警告されている。

コンタクト購入者はメガネとレンズの違いにはじまり、レンズ間の性能差や、曲面湾曲率や経済性とか生活パターンとかを総合的に判断して自分に適したチョイスを編み出しているはずだ。

そして、朝日の記事が、「安売りの見返りに診療費を上げている」というのは、もともと利用者のほとんどが知っている事実で、「なぜ突然」と裏を勘ぐりたくなる。この問題は、一歩踏み込むと、「メガネ=貧乏人、レンズ=金持ち」という誤った二元論になりかねないし、「レンズ代+診療費が一定」とすれば、診療費の比率が高いほうが健康保険の適用範囲が広がり、購入者からは好ましい結果になる。朝日の主張は健康保険対象額を認めず、商品価格に上乗せすべきだ、というように聞こえるのだが、単にメガネ業者を有利にするだけのように思える。

そして、最大の問題は、この水増しがなければコンタクトレンズ販売店も、付属の眼科医も経営が成り立たず、店舗数減少という結果になり、ユーザーはレンズを買うにも苦労しなければならなくなる。


それで、運悪く、手持ちのレンズがあと一週間で品切れになるので、いつものレンズの安売り店に行ったのだが・・、虫の知らせもあったのだが、レンズ店は閉鎖。もちろん付属眼科も閉鎖。このままだと、最大の問題はレンズの入手ということになる。

そして、あの手この手でやっとレンズ販売店を見つける。やや安めの店。そして検眼は、隣接眼科で行う。この眼科では初診だから初診料はしかたない。眼科医には専門医の他、白衣を着たセールスマンがいて、あれこれ、レンズの高級品や乱視用レンズを売り込もうとする。結局、面倒なので、通常品左右2箱に加え、割高な上級品である「モイスト」を左右1箱ずつ買うはめになる。さらに5%割引会員になるために、会員登録料2100円を払う。結局、新聞の1ヶ月の購読料分予算オーバーしてしまった。

新聞というのは、今もって量としてのオピニオンリーダーであるのは確実なのだから、「バカの壁」でも読み直してもらって、あまり特定の持論で正義ぶらないでほしいところだ。それよりもレンズ代も医療費と合算して、確定申告での医療費控除の減税対象にするような主張を書けないものなのだろうか。新聞も売れるはずだ。