「据置き」型か「生き様」型か

2006-12-18 00:01:10 | 書評
刀と真剣勝負/渡辺誠・ベスト新書」という本を読んでいて、その方面では有名な”クビキリ役人・山田浅右衛門”家に伝わるお試し斬りの作法などにも触れられていて、気持ち悪いのを我慢していたら、読み終わったとたんに事件が起きた。毎日新聞引用。


16日午前8時ごろ、東京都新宿区西新宿7の路上で、「ゴミ袋に入った死体のようなものがある」と近くに勤める男性(47)から110番があった。警察官が調べたところ、男性の遺体の胴体部分で、頭部や腕、下半身が切断されていた。警視庁捜査1課と新宿署は死体遺棄事件として捜査を始めた。
 調べでは、遺体は2枚重ねにした東京都指定のゴミ袋(90リットル)の中に入れられていた。全裸で、左手のひじから先と右手首、へそ下約5センチから下の下半身がのこぎりのようなもので切断され、胴体部分だけだった。若い成人男性とみられ、目立った傷はなかった。
 ゴミ袋は口が開いたままで、道路の縁石に接する場所に放置されていた。(・・中略・・発見者談)「・・白っぽいビニール袋の口が開いていて、首のない人間の上半身が見えた。皮膚は黒ずんでいて、とても正視できる状態ではなかった。・・」:12月16日17時16分

eda5cb95.jpg刀の本を読んでいた理由は、以前、藤堂高虎遺訓集を読んでいて、刀についての記載にわからないことが多々あったことからだが、この本は、作者が日本刀に入れ込み過ぎて(それは新書の特徴だが)、やや大暴走。集団で行われる真剣勝負での人間の所作や、美術品ではない刀剣の実用の評価が書かれている。

そして、その中に、銘刀に箔をつけるための手段として、お試し斬りの章が登場し、犯罪行為で死刑になった首なし死体を、二つ三つと重ね、山田浅右衛門(代々この名を伝襲)がテスト依頼された刀剣に薄水を塗った後、「ヤヤッ」と縦一文字に振り下ろす場面が淡々と記載されるのである。

そして、さらにあっさりと記されているのだが、その首無し死体を斬るのを据物と呼ぶのに対し、江戸初期には生様(いきだめし)と言って、生きたままテストしていたというから驚きだ。要は、死刑の方法が江戸初期に定められた以降は、生様は事実上実行困難になったわけだ。渡辺氏が記載するところによれば、テスト用の人間は、手を合わされ鮟鱇のように宙吊りにされ、まず、胴体を臍のところから一刀に輪切りにされたそうだから、なんとも物凄まじい限りである。

新宿の事件は、ノコギリが用いられたようだが、せめて、生様でなかったことを祈りたい。

渡辺誠氏にも最後は一抹の冷静さが残っていたのか、解体する時の図画については、「バラバラ事件が頻発している今日の状況を考慮すると、とてもその図などここに載せる気にはなれないので、詳細は省きます」との一行が加えられているのだ(つまり、私には解体法がわからないし、指を治療中だし、なにより軟弱だから、事件とは無関係ということを念のため付け加えておく)。