ある結婚式場をめぐる運命は・・

2006-08-24 00:00:19 | 美術館・博物館・工芸品
ce434c24.jpg横浜、港北ニュータウンのほぼ中心の商業地区の一角に結婚式場がある。後ろは東急のショッピングモールだ。「ウェディングヴィレッジ・パルティーレ横浜」という”絶対に覚え切れない”ネーミングである。ニコライ聖堂のようなドームを持ち、晴れた日は洋風庭園を使ってオープンエアーの結婚式が可能である。

やや地中海風に風化した白色の土壁をイメージした吹き付けタイルと緑のドーム屋根に合わせて、赤いゼラニウムの花鉢は、スペイン風素焼陶器ではなくコンクリ製。立ち木は普通の日本製。やや一貫性に欠ける。無宗教とはいえ、あまり和風クラシックは合わないかもしれない。この建物の裏側に道一つ反対側にレンタルドレス店がある。本人用も仲人用も子供用も揃っている。仕事が終わって服を返しに行くという感じは、パチンコの景品交換のような雰囲気もあるが、もともと、それは想定外だったはず。何しろ、経営は「紳士服のアオキ」なのだ。なかなかうまくいかない多角化の一環である。フタタのM&Aに走っているが、この10年にわたり、経営迷走中である。

ce434c24.jpg本業は、ロードサイド大量出店で失敗(債務過多)。次に多角化として「ベビー服」進出したが、競合多く挫折。不採算店をカラオケ店に改装して、なんとか赤字の縮小をはかる。さらに結婚式事業に進出したもののジミ婚化。若年層のローコストスーツ対応でORIHIKAブランド立ち上げたが、若年層以外もORIHIKAに流れ、「カニバリズムモデル」に嵌ってしまう。すでに始まっているベビーブーマーのリタイヤ不況。少子化なのにベビー服とか結婚事業というのは無理があるような気もする。そして、こんどはM&Aで規模拡大路線。なかなか常勝型ビジネスモデルに到達しない(努力は認めるけど)。

さて、この日も、賑やかな雰囲気が残る建物前の午後の陽だまりの中を、30歳程度と思われる女性が、5歳位の女の子と一緒に歩いていた。買い物帰りの感じだ。私の前をすれ違うときに母娘の妙な会話が聞こえてしまった。

 30母:わあ、いいわねえ。もう一回結婚式してみたいわねえ・・
 05娘:ねえママ。もう一回って、誰と結婚するの??
 30母:uuuuuu・・ もう一回、パパと結婚するのよ。
 05娘:同じ人と2回も結婚するってあり? ねえ、あり? ねえ?
 30母:えー、うー・・・・(以下聞き取れず)

それで話が終わりになったのか、夕食の時にパパに報告されたのか。あるいは違う結果になったのか、残念ながら確認方法は思いつかない。


ce434c24.jpgところで、この式場には、以前にも覚えにくい名前がついていた。「アニヴェルセル・ヴィラ・ヨコハマ」。このアニヴェルセルというのは誕生日という意味で、アオキグループの結婚式ビジネスのシンボルとして「アニヴェルセル表参道」という旗艦ビルを持ったからだ。そしてその建物には、シャガールが描いた名画「アニヴェルセル」があり、さらにその絵画はグッゲンハイム美術館にあったものが22.5億円でバブル末期に日本人の手に渡ったものなのである(それがあまり話題にならないのは、そのオークションでは、大昭和製紙の斉藤了英がルノアールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」を、近づく自分の葬式の時に一緒に焼いてしまおうと118.5億円で落札したからなのだ)。

ce434c24.jpgしかし、現在、絵画「アニヴェルセル」はビル内には存在しないような雰囲気であるが、捜索願は出ていない。大昭和製紙も行方不明になったが、捜索した結果、日本製紙に吸収されていた。「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の行き先は不明だ。アオキも日本製紙も現在M&A案件でそれぞれ格闘中である。

シャガール28歳の誕生日に恋人であるベラが持ってきた花束は、その後の彼の作品に大きな影響を与える。なにしろ、ベラと結婚し、ほとんどの絵画に登場する女性のモデルは彼女なのだからである。少し、「アニヴェルセル」を探してみる。