シャガールとエコール・ド・パリ コレクション

2006-08-29 00:00:42 | 美術館・博物館・工芸品
f41c9949.jpgアオキ・インターナショナルの所有していたシャガールの「アニヴェルセル」だが、いまだにアニヴェルセルという名称を結婚式ビジネスで使っている。では、所有しているのかということになるとはっきりしない。はっきりしないということは手放したに違いない、と思うのだが、それではどこへ・・

捜索していると、シャガール展が都内で開かれている。「青山ユニマット美術館」というところだが、聞きなれない。私が知らないとはモグリか?と思ってホームページを探すと、7月26日オープンとなっている。青森県立美術館は7月13日オープン。美術館ブームなのだろうか・・困ったことに青山ユニマット美術館のホームページはいたってラフで未完成。なにしろ、割引券のページが1枚ついているだけで、肝心のアクセス地図がない。何を大慌てで作ったのだろうか。と思って色々読むと、箱根にあった箱根芦ノ湖ユニマット美術館が移転したもののようだ。住所から検索すると、東京メトロ外苑前駅から青山墓地に向かう路地に沿った場所だ。うれしいことに開館時間が長く、退社後でも間に合いそうだ。

そして、今回の展覧会は、すばらしいのだ。何しろ長く行方不明だった、シャガールの「ブルー・コンサート」が登場。1945年の作。長く連れ添ってきた妻であり、ほとんどの絵のモデルであるベラが、この年なくなり、すっかり落ち込んでしまった57歳のシャガールが、自らの気力を再生するために描いたとされる。

ユダヤ系であるシャガールの絵画的特徴は、微妙な色彩。多くは背景に薄く描き込まれる物語性。そして絵画によっては強く表に出てくる宗教性である。特に、物語性は他の画家には見られない特徴であり、1枚の絵を数日眺め続けたとしても絶対に厭きないだろう、と確信できる。さらに、彼の物語性はそのモティーフが連続的に続くのではなく、数十年経た後に突然現れることもある。

f41c9949.jpg会場は美術館の4階、3階、2階なのだが、まず4階のシャガールフロアから回ることになる。18枚が展示されるが、この「ブルー・コンサート」以外にも手堅い。1927年の「アクロバッツ」、1952年の「恋人たち」もいいが、彼の物語性がよくわかるのが、1969年の「誕生日の大きな花束」である。明るいキャンバス一面に巨大な花束が描かれる。この題材は28歳の時に、恋人(当時)だったベラが花束を持って彼のアトリエを訪れたことをもとにしているそうだ。つまり「アニヴェルセル」の表裏をなす作品なのだ。最初の花束はきわめて小さい。しかし妻が亡くなってから24年後に続きを描いたのは、彼の気持ちの中でベラが毎日、成長しながら生き続けてきたということなのだろう。(実生活では次の次の愛人に乗り換えた頃かもしれない)

そして、その絵の横に付された謂れ書きを読んでいたら、どうもアニヴェルセルらしい絵のことが、うかがわれるわけだ。「誕生日・ニューヨーク近代美術館蔵」という表現があった。MoMAのことかな?・・

エコール・ド・パリシリーズは3階、2階の展示だが、ピカソ、ブラック、フジタ、モディリアニ、ミロ、ユトリロ、ローランサン、ルオー等、計60点がバランスよく、さらに何らかの鑑賞家を刺激するような遊びを持って展示されている。六本木の森美術館のように、自分の影が作品にかぶさるようなドジ設計もないし、それこそ豪華な気分で名画と過ごせるというような贅沢が味わえる。

2階ではシャガールについての映画が上映されているが、全部で50分は付き合いきれないので少しだけ見たのだが、シャガールの実物の顔はゴルバチョフによく似た科学者風の理知的な風貌である。ベラルーシ人の特徴かどうかはまったくわからない。ただし、同じユダヤ系のアインシュタインと二人並んで、どちらが画家でどちらが科学者か、とクイズを出せば、10人中10人が、100人中100人が、1000人中1000人が逆に答えるだろう。

さて、帰宅してから、MoMAのホームページを探してみると・・・

シャガールの所蔵品の中に、ついに見つけたのである。これにて一見落着。もともとグッゲンハイム美術館にあったものが結局MoMAに戻ったというのは、野球のトレードの話であれば、メッツから日本の楽天にトレードになって、結局ヤンキースに戻ったようなものだ。

ただし、奇妙なことに題名が「Anniversaire」ではなく「Birthday」となっている。シャガールは1985年に97歳で他界している。その後、題名が変わると言うのは考えにくい。もしかすると、アオキ側が今後もブランド名として使うことから、名前だけは売り渡さなかったのだろうか。なんとなく聞かない話だが・・・・・