写真展は思わず社会問題を・・

2006-08-20 00:00:52 | 美術館・博物館・工芸品
bb503b98.jpg新宿にあるNikon Salonで二つの展覧会が開かれていた。「島が消える:太田昭生」「ニッコールクラブ十勝支部写真展」。

最初、「島が消える」という意味がよくわからなかった。聞きなれない島の名前が多く、南西諸島かなと思っていた。サンゴ礁とか、海抜の低い島が地球温暖化で海面下に沈む話なのかな、と思っていたら、そうではなく瀬戸内海の島々のことだった。地図が表示されていて、瀬戸大橋の近くの小島のことだった。

太田昭生氏は1950年小豆島生まれ。今年56歳で小豆島高校の先生であるのだが20年ほど前からカメラを始めたそうだ。1999年、49歳にして土門拳文化賞で奨励賞を受賞。瀬戸内海の島を舞台とした現実を写し続けている。今回の個展では志々島・沖之島・粟島・佐柳島・高見島・伊吹島・本島・男木島・直島・女木島だが、そのほとんどの島は地図で探すのは難しい。小豆島の1/100くらいの大きさで、人口が数十人。佐柳島は猫の島になっている。

彼の作品は、温暖な気温と海面からの水蒸気のせいでやや画質がぼーっとしたところがある。芸術と報道の中間路線である。その意味では土門拳やキャパと同じだ。では、何が「島が消える」なのだろう。

それは老齢化なのである。60歳以上の住民ばかりだそうだ。あと、10年、20年の間に無人島になってしまうのではないか、というのがこの題名の由来だそうだ。

年齢の高齢化は確実におきるわけで、結局は無人島がどんどん増えていくということなのだろうか。

本当はよくわからない。逆に住民の高齢化以外のことは想定不能だ。単純経済学が機能するなら、誰もいなくなれば島の地価は格安となるのだろうが、そうなると島に住みたいと思う人が現れて、無人島買い占めたりする人があらわれるかもしれない。また、今、島に両親を置いて大阪や東京で生活しているこどもたちが年金年齢になるとまた島にUターンするのかもしれない。

ともかく、すべて日本の交通網の中枢の一つである瀬戸大橋から一望できるなにげない小島に起こっている現実を骨っぽく捉えた写真展である。東京新宿会場(エルタワー)は今月28日まで。大阪は8月31日から9月5日までだ。

bb503b98.jpg「ニッコールクラブ十勝支部展」はアマチュアの写真愛好家の集まりなのだが、こちらの写真はあくまでもクリアとかシビアといったカメラの極限までの能力の追求である。特に北海道ならでの野生動物や吹雪の撮影は神秘的である。画質だけならどちらがプロだかよくわからない。それならば、プロがプロであることの証は、個々のメッセージ性なのであろうか。