ultra-loose monetary policyって

2006-03-08 07:35:02 | MBAの意見
「loose」と言うコトバにはあまり誉めコトバの語感はない。さらに「ultra-loose」というと、"もうダメ"って感じになるのだが、これが日本語になると「量的緩和政策」となる。まず、この政策は政府主導なのか日銀主導なのかということだが、始める時は政府主導で、終わりにする時は日銀主導ということになるのだろうか。ベース政策の「ゼロ金利政策」の上にさらに、30兆円の現金の上乗せをして、市中銀行に対して、日銀にある当座預金口座で押し付けていたわけだ。

しかし、要らないおカネはしょせん要らないのだから、30兆円を市中から吸い上げても、何も変わらないという見方があるのと同時に、「これで過去5年の経済再生の成果がすべてぶち壊しだ」という意見もある。3月8-9日の政策解除発表を目前に、株式市場、債券市場は大荒れになっているし、内外からの反対論は燃え盛っている。

実は、この問題、余計なおカネがいつも30兆円があったから、ゼロ金利を維持できたのかどうかということの検証が必要ともいえるが、歴史上の数多くの事件と同様、「ifの検証は不毛」なのだろう。

たぶん論理的には、関係ないということかもしれないが、心理的には、”「ゼロ金利」+「量的緩和」”という二重鍵になっていたということなのだろう。そして長く二重鍵政策が続いたために、「一つ目の鍵をはずす=二つ目の鍵をはずす」という連想に繋がっているのである。では、一つ目の鍵をはずすことは何を意味するかと言えば、日銀は二つ目の鍵(ゼロ金利)をはずすつもりだろうし、政府は金利まで上げるつもりはない、といったところではないだろうか。ところが、長期金利は既に先取りして上がり始めている。企業は短期借りしていた資金を社債などに切り替え始めている。個人もローン借り換えで固定型に切り替えようとしているが、銀行は変動金利を勧める。

そして、首相はじめ、日銀に「慎重な対応を」という声が出てきた背景は、どうも短期金利ではなく長期金利が上がりそうな状況にあるのではないだろうか。企業業績へも悪材料という視点からも問題だし、国債発行残高からいって1%上がれば、国債償還は毎年7兆円も増えてしまう。だからと言って、インフレ誘導したら、止らなくなる。それは失敗だ。

また、当初思惑から言って、消費者物価指数(CPI)がプラス側に定着したら、「デフレ脱却宣言をし」ゼロ金利政策から脱出しようと思っているのだろうが、この当たり前の話がややこしい。まず、消費者物価だが、指数表示であるところからして正確ではない。例えば、今まで1000円の床屋に行っていたのを1500円とか2000円の床屋に行くというような行為は捉えにくい。現代は、値上げや値下げで顧客の購買意識が変わるのではなく、値上げの替わりに高級店が繁盛したり、値下げの替わりに量販店が繁盛するような構造になっている。だから、インフレ、デフレを判断するのは難しい。たぶん、低価格店がつぶれ、高価格商品が売れるといった形で消費動向が変化していくのだろう。

さらに、給与のベースアップが問題である。結局は給料増なきインフレではすぐに行き詰まる。4月以降の給与所得の動向に要注意だろうと思っている。なぜかというと、この期に及んで、給料を上げられない企業には「なにかわけがある」と考えられる。おそらくバブルの後始末が完全には終わってない会社だと思う。そして、それらの”わけあり会社”は今後、かなりひどい目にあうと考えられる。もはやリストラの時代ではなく、不良債権は清算できず、抱え込むしかないだろう。春闘の結果まで政策解除は待ったほうがいいというのが私見である。

ところで、海外からの声として、「日本の低金利によって円を調達し、海外通貨で運用する」という定番がなくなると、金利はさらに上昇し、企業業績に大きく影響するだろうということだ。つまり世界経済は拡大し続けるので、通貨供給は一定量必要であり、それは低金利の日本でばらまかれていたということだろう。このあたりの声は、そろそろ英語の裏声で聞こえてきているのだが、借金を完済していないのに米ドルや豪ドルで預金をしている人はどんどん増えているのだから、個人ベースの資産運用にも波及するだろう。

結局、簡単に書くと、「別にゼロ金利でおカネがじゃぶじゃぶだっていいじゃないか」、ということになるのだろうか。80年代のバブル時代とかなり違うのは、「投資先は世界中にある」ということである。さらに、じゃぶじゃぶなのは、オイルマネーだって同じだろう。米国の貿易収支だって同じだろう。と、いうことなのかもしれない(オイルマネーの話はいつか・・)。