B級BANANAで面白かったのは

2006-03-21 00:00:27 | 書評
b4c7de4c.jpg「吉本ばなな」は欧州では、もっとも有名な日本人作家だそうだ。ということは村上春樹よりもノーベル賞に近いということもできるが、なにしろ文部科学省からストックホルム大使館に出向派遣されているニワカ外交官の腕次第というか、何もしない方がいいというのか・・・(実際には、運悪く受賞者があった場合のアテンダント要員と化しているらしい)

私も、彼女の小説は大部分読んでいる。世間にありそうな、なさそうな、やはりありそうでなさそうな設定のモデルが登場する。なんともとらえどころのない作家だが、文体がきわめてオーソドックスで安心して読める作家である。

ところが、小説をあまり書かない。仕事熱心ではない。しかたなく、エッセイなど読むことになるが、小説に比べて、ずいぶん軽く書く。「B級BANANA」はエッセイというわけでもなく、「吉本ばなな読本」と副題されるように、「インタビュー」(を受ける)や「悩み相談室」などで組み立てられた一冊である。その中で、「ややっ」と面白かった話がある。

最初は、岡崎京子さんからの質問で、「あなたが一番おかしやすそうな犯罪は?」というのがあった。答えは、「脱税」ではない。なんと、「万引き」だそうだ。

あまりにもレジが混んでたりすると、もうめんどうくさいから持って行ってしまおうかと本気で思うし、実行したことも大人になってから数回ある。

そうだ。

思い出すと三浦和義氏(多くのマスコミから慰謝料を受け取ったこと等で有名)が赤坂見付の駅ビル内の書店で万引した後、逃げ切れずにエスカレーターで捕まった時の話は、面白かった。「外出先で知人に会うときに、自分のサイン本を贈ろうと、たまたま書店で自分の本を買うときなど、レジに持っていくのが恥ずかしいので万引きすることがある」とのこと。

ただし、万引で捕まると、ノーベル賞が遠くなるから注意が必要である。(三浦さんではなく吉本さんへのアドバイス)


もう一つの「ややっ」は自由エッセイの部分で、吉本ばななが「海燕」新人賞の受賞パーティーで角田光代と話をした時のこと。二人とも新人賞をとっているのだが、角田光代がデビュー1、2年目で、まだ細身だった時、血圧が35の時もあり、よくパタンと倒れるという話である。

角田光代が真顔で、「でも倒れるとみっともないですよ、もう、パンツ丸見せですよ。」と言ったというのである。吉本ばななは、このちょっとした「丸見せ」という言葉の違和感について分析し、「さすが、作家。パンツ丸見え、ではない能動的な描写をしていたのである。」と書くのである。さらに、エッセイはこう続く。「その後3日は、これを思い出す度にタクシーの中とかでひとり笑いました。」

実は、私も、最初は笑っていたのだが、よくよくよく考えてみると、もしかして、これは若い角田に対する吉本の嫉妬ではないかと思い始めたのである。つまり、自分(ばなな)の方が格上の小説家であるのに、どうして、こういうわけのわからない才能もない角田なんぞにわざとらしい表現を使われなければならないのだろう。それも話がただのパンツではないか。「角田光代というのはこんなにもわざとらしい女であるのですよ」ということを活字にすることで世間に撒き散らそうとしたのではないか(無意識のふりを装って意識的に)、との疑惑である。

まあ、いずれにしても角田光代は最近は「豚しょうが焼き定食」が大好物だそうなので、もう丸見せすることは考えられず、真相は永久の謎となってしまったのだ。