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ミラーサイクル

2009年05月17日 | エンジン

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Otto_in画像はttp://www2.tbb.t-com.ne.jp/atc/Run/Engines/miller.htmlより転載。不適切なら削除いたします。

マツダが自動車エンジンとして最初に実現したと言われるミラーサイクル(ウイキペディア)エンジンは普通のエンジンと構造はほとんど変わりません。

ミラーサイクルとは容積型内燃機関においてアトキンソンサイクルを吸気弁の早閉じ、遅閉じによって実現したサイクル。ミラーサイクルエンジン。また、吸気通路にロータリーバルブを設けて同様の効果を持つものも研究された。

ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等に応用例がある。 「ミラー」とはこのシステムを1947年に最初に考案した技術者、R.H.Millerの名前に由来する。(ウイキペディアより)

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トヨタはアトキンスサイクルと主張していますが、世評はミラーサイクルのプリウスINZ-FXEエンジン。もっとも正式にはアトキンスサイクル・ミラーシステムというそうなので・・・。

インテークバルブを遅く閉じて圧縮を抜くのはアニメ(ttp://www2.tbb.t-com.ne.jp/atc/Run/Engines/miller.html)を見ていただけばよく分かると思います。これにより、圧縮比と膨張比を変えることが複雑なクランクメカニズムを使うことなく実現しています。つまり、吸入した空気(混合気)の一部を抜いてしまえば、実質的な圧縮比が下がって”圧縮比と膨張比を違える”アトキンスサイクルが実現したということです。実現に一役かっている可変バルブタイミングシステムも複雑といえば複雑なのですが、一足先に普及したメカニズムだからこそですね。

上記表ではINZ-FXEはプリウス。INZ-FXはヴィッツです。実はこの関係は、表を作るのに同じメーカーの同排気量エンジンで比較しようと思っていて、たまたま出くわした事実ですが、考えてみれば必然的な関係だと思います。

ロングストロークなのはINZ-FXEで機械的な高圧縮比にするためと考えられます。

表をご覧になって分かるのは”圧縮比が13”と高いINZ-FXEのほうが出力が低い点ですが、バルブタイミングを積極的にコントロールすれば高出力を目的としたチューニングが可能のような気がします。出力を落として効率を上げるコンセプトが中々理解しづらい点ですけれど、しかしプリウスの場合は燃料消費量をいかに少なくするかが一番の目標です。

プリウスのバルタイは分からないのですが、マツダのデミオではインテークバルブのクローズは下死点後80度ですから、高回転型エンジンでは60度前後と考えれば、いかに遅閉じかですね。

普通のガソリンエンジンはオットーサイクルが基になっていると何度も記述していますが、オットーサイクルは火花点火であるが故に、空気と燃料の比率がうまくいかないと燃焼もうまく行われません。燃焼で生じた熱で気体が膨張し、その膨張したパワーがピストンを押し下げるるわけですから、皆さん一生懸命キャブレターをいじり倒したりすることになります。

そのキャブレターは供給する燃料の量を調整すると同時に、スロットルバルブを動かす(手はアクセルね)とエンジンに供給する空気量も調整するのはご存知の通りです。

エンジンの性能を測る指標のひとつに充填効率というものがありますが、これはエンジン容積(行程容積)に対して実際に吸入した空気量(燃料との混合気)との比率になります。

例えば1000ccのエンジンの充填効率が100として、2000ccのエンジンの充填効率は50とすれば、乱暴ですが吸入空気量(混合気)は同じということになります。

出力は単位時間あたりの仕事量ですから、仕事の大きさ×回数(回転数)になり、仕事の大きさは吸入空気量(混合気)×熱効率ですね。

熱効率は圧縮比に支配されますから、圧縮比が高ければ高いほど熱効率も高くなるのですが、例えば圧縮比8を12にしても効率は6.5%しか上がりません。

ですから、ここでは余談ですけれど回転を上げて馬力を出すのは、理にかなっているというか割合と簡単なんですね。まあ、排気量の制限がなければ”ボアアップに勝るチューンアップはなし”という言葉もあるのですが。

充填効率の話にもどると、実際にはスロットル開度と回転速度により刻々と変化して、アクセルを捻ったり踏んだりすればエンジンは要望に応えてくれます。

エンジンが要望に応えてパワーを提供するときは、スロットル開度が大きくなり供給空気量(混合気)が大きくなるのと同時に、絞り損失が低下します。絞り損失とは低負荷低回転でスロットル開度が小さいときに大きく発生するポンピングロスです。

ポンピングロスの定義には意見の分かれるところもありますが、エンジンが動いている間には様々な損失(ロス)があり、動力を発生するのは膨張サイクルだけですが、燃焼させる混合気を吸入(絞り損失)、混合気を圧縮する(圧縮ロス)、燃焼済みのガスを排出(絞り損失)などはクランクシャフトの慣性力(多気筒では他の気筒での燃焼圧力)で動くことになりますがブレーキになることはご理解いただけると思います。

ミラーサイクルでは吸気側の絞り損失まで減らそうという目的まで達成していて、圧縮比を落として(熱効率を下げて)パワーを下げ、その分スロットル開度が開くので絞り損失を減らして、トータルで効率を上げたということのようです。ここまでくるとホンマカイナという気がして、実験結果を見ないと信じられません。

しかしエコランでは、スロットルを開け気味に加速して目標速度までの時間を短くしポンピングロスを削減するテクニックがあると聞きますので、効果はきっとあるのでしょう。

というか、熱効率を追い求めるには限度があり、対衝突強度を向上させるためには車重も大きくなり、ヨーロッパでは燃費規制を守らなければ制裁もある状況下では、あらゆる手を投入する必要があるのでしょう。

加速時にパワー不足を感じるミラーサイクルエンジンは、電気モーターとのハイブリッドが相性が良く、今のご時世は燃費性能がプレミアムになり売れ行きを決めてしまうほどですから、発売開始当初のプリウスはとても採算がとれないだろうと言われていたのがウソのようです。

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2 コメント

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はじめまして。 (かずい)
2009-05-19 18:19:15
はじめまして。
ミラーサイクル、懐かしいですね。
私、これで学位論文書きました。
ミラーサイクルは元々加給器付きエンジンのノッキングを回避するために、膨張比はそのままで圧縮比のみを落とそうとしたことから考えれらたと記憶しています。
点火時のシリンダ内ガス温度を落とそうとしたんですね。
私たちが行っていたのは現在主流になっている給気バルブの遅締めとは逆で、給気下死点前にバルブを閉じ、吸気行程の長さを短くして混合機の供給量を減らし、スロットルバルブの絞り損失を減らそうとするものでした。
ところが試用機関で実際に給気行程を短くすると、温度が下がりすぎて着火遅れが発生し、肝心の低速では失火してしまってまったく使い物になりませんでした(笑)
ガスの熱交換うまく行っていないことが原因と思われましたが、当時はキャブレター方式で吸気管内に燃焼室内ガスを戻すという方法は安全上からもとりにくく、歯がゆい思いをしました。
もうかれこれ20年以上も前の話です。
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かずいさん、コメントありがとうございます。 (ピストン)
2009-05-19 22:34:17
かずいさん、コメントありがとうございます。
また貴重な体験のご披露ありがとうございます。
やはり周辺技術の発展があってこその実現だったのですね。今後ともよろしくお願いします。
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