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中国朝鮮族と在日朝鮮人の民族教育 4

2007年05月21日 | 民族教育
          5月17日から19日まで3回連載した金山さんが日本語で書いた「中国朝鮮
         族と在日朝鮮人の民族教育」の序章の一部分につづき、同論文第2部「中
         国朝鮮族の民族教育」の「中国朝鮮族教育を巡る問題点」を連載します。
          金山さんは、長春生まれの朝鮮族で、7年間日本の九州大学で「比較社
         会文化」を研究し、大連で日本語教師をしたあと、2005年7月から海南大学
         外国語学院で教師をしています。
                         紀州鉱山の真実を明らかにする会

■中国朝鮮族教育を巡る問題点 1
 中国人としてのナショナリティと朝鮮族としての民族性の育成に関わる問題点
中華人民共和国が成立してから2003年にいたるまで、合計5回の全国民族教育工作会議が開かれ、各歴史時期における少数民族教育に関する政策などを決めてきた。それらの会議に出された文献資料を通してみると、少数民族教育に関する方針は各歴史時期において国の政治路線に基づいて変化していることがわかる。しかし、少数民族教育が社会主義方向と中国共産党の指導権を堅持しなければならないということは、ずっと変わっていないのである。これは、中華人民共和国は中国共産党の指導のもとで創設された社会主義制度を実行している国という性格によって決められたものであり、少数民族教育を発展させる前提条件である。
 たとえば、1992年3月に開かれた「全国第四次民族教育工作会議」では、民族教育を発展させる具体的な方針を打ち出したが、その第一条は次のように述べている。
   「民族教育は、わが国の社会主義教育の重要な部分であり、社会主義現代化を建設す
  るために働き、生産労働と結び合わせ、徳.智.体が全面的発達する建設者と後継者を
  育成しなければならない。マルクス主義の指導のもとに、少数民族と民族地域の特徴を
  配慮し、学生に党(中国共産党を指すーー作者)の基本的路線に関する教育、歴史と国
  の実情に関する教育、愛国主義の教育、民族団結と国の統一を維持させる教育を行い、
  正確な政治方向を堅持させなければならない」。

 また、2002年7月に開かれた第五次全国民族教育工作会議において、当時国家教育部部長をつとめていた陳至立氏は指導的意味を持つ講話をし、そのなかで彼女は
   「民族教育はわが国の教育事業の重要な部分である。民族教育の改革と発展は、全面
  的かつ徹底的に(中国共産)党の社会主義初級段階の基本路線に基づいて実行しなけれ
  ばならず、民族教育の社会主義の性格を保たなければならない」
と改めて強調している。

 このように、中国少数民族の教育には、国民統合の側面と少数民族の民族性への配慮の側面が両方含まれているが、中国共産党の指導と社会主義方向の堅持ということはあくまでも少数民族教育を発展させる前提条件であり、民族性の育成という問題より優先されている。つまり、中国人としてのナショナリティの育成は朝鮮族教育の第一の任務であり、朝鮮族としての民族性の育成はその第二の任務であるのである。
 朝鮮族学校では社会、地理、歴史などの文系の科目と理系のすべての科目において統一教材をそのまま翻訳した教科書を使っており、普通の漢族学校と同じような内容を教えている。また、朝鮮族学校の特徴付けともいえる「朝鮮族歴史」という科目はまだ開設しておらず、朝鮮語の教科書においても国民教育の内容は全体の3割を占めており、朝鮮族としての民族性を育成するための内容は1割程度にとどまっている。
 このような状況はまさに「中国人としてのナショナリティを第1、朝鮮族としての民族性を第2」という原則の現れであるといえよう。
 ところが、中国人としてのナショナリティを育成する教育は基本的に総人口の圧倒的多数(92%)を占める漢民族の教育である。そのために、少数民族の民族教育の発展は必ずしも自民族文化の発展を促進するとは限らず、少数民族の漢民族化を促してしまう可能性があり、少数民族の反発を招く可能性もある。そこに中国人としてのナショナリティと少数民族としての民族性の矛盾が生じるのである。
 このような矛盾を抱えている民族教育にとって、両者の関係をいかにうまく処理するのかということは、たいへん難しい問題である。
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