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「「拷問で捏造」のスパイ容疑、50年後に晴らす…「うれしいというより虚しい」=韓国」

2024年07月11日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2024-07-11 07:59
■「拷問で捏造」のスパイ容疑、50年後に晴らす…「うれしいというより虚しい」=韓国
 麗水の巨文島一家、50年ぶりに無罪  
 再審裁判所「拷問のせいで虚偽の自白」

【写真】9日、光州高等裁判所の前で1973年スパイ事件の無罪を言い渡された被告と市民団体のメンバーたちが喜びを表している/聯合ニュース

 「『無罪』という二文字を勝ち取るために、50年間あれほど努力したのかと思うと、嬉しいというより虚しいです」。
 9日、光州(クァンジュ)高裁の前で、Aさん(70)は国家保安法違反事件の再審で無罪判決を言い渡された後、虚しいという感想を述べた。この日、光州高裁2刑事部(裁判長イ・ウィヨン)は懲役刑を宣告した原審を破棄し、AさんとAさんの親戚のBさん、Aさんの父親(1914~1986)、母親(1917~1994)など一家4人に全員無罪を言い渡した。
 全羅南道麗水市巨文島(ヨスシ・コムンド)に住むAさんの家族は、北朝鮮の指令を受けてスパイ団として活動した疑いで1973年に起訴された。
 当時、警察と検察は、Aさんが1972年10月に北朝鮮にいる叔父に拉致されてから帰ってきたことを根拠に、スパイの濡れ衣を着せた。Aさんが北朝鮮で洗脳と工作訓練を受け、両親と親戚関係のBさんなどに工作金を渡して抱き込み、スパイ団を作りあげたという捜査結果を発表した。
 Aさんらは捜査初期には事実ではないと抗弁したが、長期間拘禁され拷問を受けた末、「北朝鮮の工作員である」という虚偽の陳述をした。控訴審でAさんは懲役15年、BさんとAさんの父親は懲役5年、Aさんの母親は懲役3年6カ月が確定した。
 再審判決文には、Aさんが虚偽の自白をせざるを得なかった状況がそのままあらわれている。
 1973年10月5日、麗水警察署の情報課の警察官らに捕まったAさんは、旅館に連れて行かれ、ひどい虐待を受けた。Aさんは「旅館の部屋に入るやいなや警察が服を脱がせて『お前のような共産主義者を捕まえて殺すために警察官になった』と言って、ベルトでめちゃくちゃに殴った」とし、「他の部屋では両親が拷問される音がはっきり聞こえてきて、両親も連行されたという事実が分かった」と陳述した。Aさんは「3日後、警察が麗水警察署の地下室に連れて行き、鉄製のベッドに手足を縛って顔にタオルをかけて大きなやかんで水を注ぎ始めた」とし、「ある瞬間、息が止まり、楽になったことを感じたが、胸を押さえつけるような苦しみで正気に返った。後で分かったことだが、人工呼吸を受けたことに気づいた」と証言した。
 判決文には、Aさんが出所後、一生母親と距離を置いていた事情も含まれていた。捜査当時、警察はAさんに「母親に性的暴行を加えた」という供述を強要した。Aさんは「顔に血が飛び散るほど太ももを棒で殴られ、恐怖のあまり虚偽の自白をした」とし、「その時の恥辱を忘れることができず、出所後に母親をまともに見ることができなくなり、家を出た」と語った。Aさんの姉は「母親は大邱(テグ)刑務所の近くに小さな部屋を借りて暮らしながら、弟の出所を待っていた」とし、「家を出た弟を恨んできたが、再審を準備する過程でその話を聞いて気を失いそうな衝撃を受けた。一言も言えず、弟の前で泣くしかなかった」と話した。
 ソウルに住んでいたBさんも1973年10月10日、警察に捕まり、麗水の旅館、光州の対共分室などで1カ月間暴行と水責めの拷問を受けたと証言した。
 生涯無実を訴えてきたAさんらは2022年9月、また別の「巨文島スパイ団事件」の被害者が無罪を言い渡されるのを見て、再審を申請し、裁判所は昨年9月に再審を受け入れた。
 再審裁判所は「Aさんらは拘束令状もなく長期間不法拘禁された状態で、拷問などの苛酷行為と萎縮した心理状態により虚偽の自白をし、自述書を作成したものとみられる」とし、「原審法廷でAさんの国選弁護人は意見書など書面を一度も提出しておらず、無罪主張や拷問などの不法捜査に対して何の弁論もなされなかった」として、無罪宣告の理由を明らかにした。
キム・ヨンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-07-10 21:16


「The Hankyoreh」 2024-05-12 23:20
■[レビュー]在日韓国人留学生「捏造スパイ」の備忘録
 『長東日誌:在日韓国人政治犯・李哲、13年間の獄中記録』 
李哲・著|西海文集|2万7000ウォン

【写真】在日韓国人スパイ捏造事件の被害者である李哲さんが2015年2月、再審で無罪判決を受けた後、妻の閔香淑さんとともにソウル中央地裁前で感想を述べている。左下は、民青学連事件の死刑囚だったイ・チョル元国会議員=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社
【写真】『長東日誌:在日韓国人政治犯・李哲、13年間の獄中記録』 李哲・著、キム・ウンギ訳、西海文集刊//ハンギョレ新聞社

 今年2月、ソウル中央地裁は、1967年に在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)スパイ捏造(ねつぞう)事件に関与したとの疑いをかけられ服役し、その後死去したH氏の再審事件で無罪判決を下した。検察は控訴した。これに先立つ1月には、同じ裁判所が1977年に国家保安法違反の疑いで死刑が確定されたL氏の再審で無罪を言い渡した。検察は控訴した。
 1960~80年代、軍部独裁政権は数多くの「捏造されたスパイ」を作り出した。不法拘禁と拷問、卑劣な脅迫の結果だった。国家情報院と検察のスパイ捏造は最近まで続いた。2013年には脱北者出身のソウル市公務員のユ・ウソンさんが、証拠の捏造に明け暮れた捜査機関の罠にかかり、その後最高裁で「スパイ」容疑の濡れ衣を晴らした。
 李哲(イ・チョル)さん(75)も被害者の一人だ。1975年、「在日同胞留学生スパイ団事件」で死刑確定判決(1979年無期懲役に減刑)を受け、13年間獄中生活を送った。『長東日誌:在日韓国人政治犯・李哲、13年間の獄中記録』(原題『長東日誌: 在日韓国人政治犯・李哲の獄中記』)は、李さんが2015年に再審で無罪判決を受けた後、自身の経験と野蛮な国家暴力について記録した告発状であり、出所後に結婚してもうけた子どもたちに「両親が生きてきた過酷な人生」を伝えるために遺書のように書き下ろした悲しい備忘録だ。著書は2021年に日本で出版されており、このたび韓国語の翻訳本として刊行された。
 李哲さんは植民地解放後の1948年、日本で生まれた朝鮮人ディアスポラの子孫だ。父親は在日本大韓民国民団(民団)の支部を作って活動するほど「反共・反北主義者」だった。子どもの頃は歌詞の意味も分からないまま「東海の水と白頭山が…」と韓国の国歌を歌いながら育ったが、祖国の歴史はもちろん、韓国語もほとんど知らなかった。1967年、東京の中央大学に入学後、独学で韓国語と韓国史を勉強し、サークル活動を通じて「新しい韓国人に生まれ変わる」ことを決意した。母国への留学を夢見ていた李さんは1973年、高麗大学大学院に入学。期待に胸を膨らませた。恋人もこの頃出会った。だが、そこまでだった。1975年11月、中央情報部が「在日同胞留学生スパイ団事件」を捏造。それに巻き込まれた李さんの母国への愛と若い夢は粉々に砕けた。当時の中央情報部の対共捜査局長は、朴正煕(パク・チョンヒ)の維新憲法を作ったキム・ギチュン検事だった。1992年の大統領選を控え不正選挙を企てた「チョウォンふぐ料理店事件」の主要人物であり、ハンナラ党(現国民の力)の国会議員を歴任し、朴槿恵(パク・クネ)政権の大統領秘書室長を務めた人物だ。「自白したくても自白するものがなかった」という李哲さんは、激しい拷問に耐え切れず自殺を試みたが、それすらも失敗し、ついに「スパイ」に仕立て上げられた。
 彼は刑務所でリ・ヨンヒ、パク・ヒョンチェ、キム・ジハ、シン・ヨンボク、ソ・スンなどの良心囚や非転向長期囚らに出会い、朝鮮半島の悲劇的な現実に目覚め、左翼囚に対する過酷な暴行に屈せず刑務所の処遇改善闘争に乗り出した。著書は服役中に経験した喜怒哀楽とエピソードにあふれている。日帝の植民統治、分断と戦争、軍部独裁と民主化闘争と続く韓国現代史の縮約版だ。
 1988年10月、開天節(檀君神話に基づく韓国の建国記念日)の恩赦として出所した後も、良心囚の釈放活動に献身した。2019年、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は日本を訪問し、被害者たちとの面会した際、「国を代表して謝罪」した。だが李哲さんは、まだやるべきことが残っていると著書に記した。「36人が無罪判決を受けることで終わるのではなく、政治犯とされた在日同胞が最後の一人まで無罪を勝ち取ること、真の民主主義が祖国で実現し、南北の和解と朝鮮半島の平和の時代が到来したことを亡くなった方々に伝えるためにも、まだ死ぬわけにはいかない」。

チョ・イルジュン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
韓国語原文入力:2024-05-03 05:01
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