三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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「日本の16地方自治体が朝鮮学校への補助金支給を中止」

2017年10月15日 | 民族教育
http://japan.hani.co.kr/arti/international/28099.html
「The Hankyoreh」登録 : 2017.08.06 21:53 修正 : 2017.08.07 07:09
■日本の16地方自治体が朝鮮学校への補助金支給を中止
 北朝鮮問題を理由に、相次いで中止 
 「政治と教育は別に」自省の声も

【資料写真】日本の東京朝鮮中高級学校の校舎//ハンギョレ新聞社

 朝日新聞は6日、2007年に朝鮮学校に補助金を支給していた28都道府県のうち、今年も補助金を支給するところは10年前の半分にもならない12カ所にとどまると報道した。朝鮮学校は在日同胞が子どもに祖国の言葉と文化を教えようと作った学校だ。日本の教育法上では小・中・高校とは別の学校である「各種学校」に分類される。日本の自治体は1970年代から朝鮮学校の保護者の教育費負担を減らすために、学校運営費または地域交流事業の名目で補助金を支給してきた。また、各種学校に属する国際学校にも同じ名目で補助金が支給されてきた。
 日本の自治体が朝鮮学校に対する補助金の支給を中止し始めたのは、北朝鮮の日本人拉致問題が浮き彫りになってからだった。特に昨年3月、文部科学省が自治体に「政府は北朝鮮と密接な関係にある団体である朝鮮総連が朝鮮学校の教育内容や人事、財政に影響力を及ぼしていると認識している」とし、「適正で透明性を持って(補助金を)執行するように」との公式文書を送ったことが決定打になった。この公文は政府が自治体に朝鮮学校への補助金支給を中止するよう要求したものと解釈された。1981年から朝鮮学校に補助金を支給してきた茨城県は、今年から補助金を支給しないことにした。昨年、地方自治体が朝鮮学校に支給した補助金は1億2200万円で、2006年(6億2400万円)に比べて80%以上減少した。
 日本の裁判所の朝鮮学校支援問題に対する判決は分かれている。大阪地方裁判所は1月、大阪朝鮮学校が補助金の支給中止が不当として起こした訴訟で「行政の裁量範囲内」だとし、大阪府の肩を持った。同じ大阪地方裁判所は、近い時期に同じような動機で施行された朝鮮学校の高校無償化除外措置に対して、全く異なる判決を下した。2010年、民主党政府は高校授業料を国が負担する高校無償化措置を施行した。原則的に「各種学校」も無償化対象に属したが、民主党政府は北朝鮮問題を理由に朝鮮学校を無償化対象から保留した。自民党に政権が変わった2013年、文部省は行政規則改定で朝鮮学校を完全に高校無償化対象から除外した。これに対して大阪朝鮮高級学校(朝鮮学校の高校課程)が国家を相手に取消し訴訟を起こしたが、大阪地方裁判所は先月28日、国家の処置は不当だとして原告勝訴の判決を下した。
 朝日新聞は、政府と地方自治体が朝鮮学校の支援を相次いで中止していることに対して「政治・外交問題と子どもたちの教育問題は分けて考える必要がある」と指摘した。

東京/チョ・ギウォン特派員
韓国語原文入力:2017-08-06 21:08
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/805713.html


http://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/946a6191d0617291d75f0bc47447db42
「日刊イオ」2017-05-02 10:00:00 (瑛)のブログ
■千葉市長に考えてほしい
 千葉市が千葉朝鮮初中級学校に対する国際交流事業への補助金を停止した問題は、怒りとともに、ウリハッキョへの締めつけが、ここまで来たのかと思わされる事件だった。
 朝鮮学校は日本の教育システムの中では正規の学校「1条校」ではないので学習指導要領に従う義務もなく、監督権限を持つ都道府県が教育内容に立ち入ることもない。市長がしていることは、法律を踏みにじる越権行為だ。
 また、千葉の朝鮮学校と市とが積み上げてきた信頼関係を投げ捨て、ツイッターで世論を煽るやり方も自治体の首長として品格に欠けていると思わざるをえない。千葉市長の振る舞いを見ながら思い出したのは、大阪朝鮮学園への補助金を停止した橋下徹氏だ。かれは大阪朝鮮高級学校を訪問し、笑顔を振り撒きながら、その後、残酷にも補助金を切り捨てた。
 1978年生まれの市長を見ながら、かれが民主主義や教育をどう学んできたのが、心の底から興味が沸いている。政府の考え方と同じように子どもを教えたいのだろうか。これから千葉市では、公立学校への統制が強化されるのだろうか…。
 戦後、日本には私立学校が続々と生まれた。宗教法人系の学校も増えた。私立学校の増加は、日本の教育の幅を広げてきたし、教育の多様性を育んできた歴史だったはずだ。朝鮮学校の問題を言えば、時の政権が朝鮮学校を弾圧しようとしたときも、子どもの学ぶ権利と朝鮮学校の歴史を踏まえ、支援してきたのが地方自治体だった。政府と地方は明らかに違った。
 私は教育勅語の問題も含めて、教育への政治介入に、なぜ日本市民の側から声が上がらないのが、不思議でならない。
 じり貧で運営されている朝鮮学校をやり玉にあげて、時の為政者が何をしようとしているのか。今こそ、目をしっかり開ける時ではないだろうか。
 千葉市の対応は日本の教育史に残る事件だろう。千葉市長は、子どもの表現の自由を奪い、教育への介入ができると思っているのだろうか。この愚かな対応をいち早く改めてほしい。
 何より、子どもたちには萎縮してほしくない。李信恵さんの言うとおり、「あなたは何ひとつ悪くない」のだから。http://www.lovepiececlub.com/news/2017/04/28/entry_006561.html
 5月21日には千葉朝鮮初中級学校で、千葉県国際文化交流イベント「フレンドシップフェスタ」が開かれるので、こんなときこそ、たくさんの人たちが同校を訪れて元気付けてほしい。
 今、町田市が朝鮮学校への防犯ブザーを不支給にしようとしたときのように、日本の心ある人々が千葉市に抗議の声をあげている。それも全国各地から…。
 市に意見を表明した在日本朝鮮人人権協会のキム・ウギさんが問題を的確に整理されていたので、ここに紹介します。(瑛)
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千葉市長への意見
 このたび千葉市が、千葉朝鮮初中級学校の地域交流事業に支出する補助金について、昨年度分の約50万円の交付決定を取り消したことについて強く抗議します。
 報道によれば、その理由は、昨年12月に同校が主催した美術展で展示された1000点を超える表現物のうち一点の絵に、日本軍「慰安婦」問題に関する2015年12月28日の日韓「合意」を否定する解説が付されたこと等とされていますが、今回の千葉市の決定には、以下に挙げる通り、いくつもの重大な問題点があると思います。

 1.思想・信条の自由及び表現の自由の侵害であること
 何人も、特定の属性を有する個人や集団に対する差別的動機に基づくものでない限り、思想・信条の自由及び表現の自由を侵害されてはなりません(日本国憲法19、21条)。今回の千葉市の決定は、日本軍「慰安婦」問題について自らの思いを書いた朝鮮学校生徒の思想・信条の自由の侵害であり、表現の自由の侵害であることは明らかです。

 2.朝鮮学校への補助金不交付は、在日朝鮮人の子どもたちの教育権を侵害し、国際人権機関からは補助金の再開と維持が求められていること
 2-1 在日朝鮮人は、日本が朝鮮を侵略・植民地支配したことを原因として日本に住んでおり、日本政府は植民地支配期に朝鮮人の民族教育を禁止・弾圧し、朝鮮人から言葉や文化、名前を奪いました。朝鮮の解放/日本の敗戦直後、在日朝鮮人は日本に奪われた朝鮮の言葉・文化・名前・アイデンティティを子どもたちに教えるため、自らの力で各地に「国語(朝鮮語)講習所」を建設し、それが現在の朝鮮学校のルーツとなっています。そもそも日本政府及び地方自治体は、朝鮮を植民地支配し、在日朝鮮人から朝鮮の言葉・文化・名前を奪ったことの責任及び原状回復義務に基づき、在日朝鮮人の民族教育を積極的に保障しなければなりません。地方自治体が朝鮮学校に補助金を支出することは、在日朝鮮人の民族教育保障の一環となります。
 2-2 地方自治体が朝鮮学校への補助金を不交付とすることは、「在日朝鮮人の子どもたちの教育権を妨げる」ものであるとすでに国連・人種差別撤廃委員会から指摘され、同委員会からは地方自治体による補助金の再開や維持が勧告されています(2014年8月)。この勧告に反して補助金を停止した自治体はすなわち、人種差別撤廃条約に違反する行為を行ったことになります(人種差別撤廃条約2条、5条)。なお、日本政府が批准した国際人権条約は、日本政府のみならず地方自治体にも遵守義務があり、ゆえに地方自治体は同勧告も誠実に遵守しなければなりません。(日本国憲法98条2項)。
  ◆参考:人種差別撤廃委員会による総括所見(2014年)。当該勧告はパラグラフ19番目
  http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000060749.pdf
 2-3 千葉県弁護士会も2016年8月に出した会長声明において、外交問題を理由に朝鮮学校の補助金を停止するのは、子どもたちの学習権侵害はもとより、憲法14条、世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)、子どもの権利に関する条約、人種差別撤廃条約が禁止する「不当な差別」にあたると指摘しています。
  ◆参考:千葉県弁護士会「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」
  http://www.chiba-ben.or.jp/wp-content/uploads/2016/08/89f80068fd95b6d90cc7d6d7fb11c260.pdf
  
3.日本軍「慰安婦」問題に関する日韓「合意」は政府間レベルのものであって、地方自治体の政策や市民の意見を縛るものではなく、なおかつ「合意」は被害者の声を反映していないなど多数の問題点を含んでおり、国際人権機関からも批判されていること
 3-1 2015年12月28日に発表された日韓「合意」は、政府間レベルでなされたものであり、地方自治体の政策及び市民個人の表現が当該「合意」に縛られるものではまったくないことは明らかです。
 3-2 そもそも当該「合意」は、①日本軍「慰安婦」制度の被害者の声をまったく反映していていないにもかかわらず、問題を封じ込めるような表現を使用していること、②正式な「合意」文書もなくその法的性格も不明確であること、③日本軍「慰安婦」制度が実施された当時の国内法や国際法に違反していたことに基づく日本政府の法的責任を認めていないこと、④国際人権法上の責務に基づく被害者の権利救済が満足になされていないこと、⑤再発防止措置が不在であることなどの重大な問題点を多数含んでいます。
 3-3 当該「合意」は3-2で記したような問題点を孕んでいるため、2016年3月、国連・女性差別撤廃委員会は当該「合意」について「被害者中心のアプローチを十分に採用していない」と批判し、被害者に対する公式謝罪や損害賠償を含む十全で効果的な救済と被害回復措置の提供や、教科書への「慰安婦」問題の反映などを日本政府に対して勧告しています。
 以上の理由から、千葉市が国際人権基準に従って朝鮮学校への補助金交付決定の取り消しを撤回し、補助金を支給することを強く求めます。
     2017年5月1日  金優綺
※千葉市のウェブサイトから市長へ意見を送付できます。https://www.shinsei.elg-front.jp/chiba2/uketsuke/dform.do?acs=100tegami




http://japan.hani.co.kr/arti/international/27200.html
「The Hankyoreh」登録 : 2017.04.28 22:50 修正 : 2017.04.29 07:22
■日本の自治体、慰安婦合意批判したとして朝鮮学校の補助金を打ち切る

 「慰安婦合意批判の絵、経費支給事業の目的に反する」 
 学校長「日本の立場に合わせるのは真の交流ではない」

【写真】熊谷俊人千葉市長が今月27日、ツイッターに千葉朝鮮学校への市の補助金の支給中止を決定したと掲載した書き込み=ツイッター画面キャプチャー//ハンギョレ新聞社

 日本の地方自治体が韓日慰安婦合意を批判する行事を行ったという理由で、朝鮮学校の補助金の支給を中止した。
 熊谷俊人千葉市長は27日、ツイッターに千葉朝鮮小中級学校に対する市の補助金の支給を中止するという内容の書き込みを相次いで掲載した。熊谷市長は「千葉市は外国人学校が地域と交流する事業について(補助金を支給して)事業実施後内容を審査し、経費の一部を支給している」と書いた。
 千葉市が問題視した美術展示会は、昨年12月に開かれたもので、展示された絵2点に「日本政府が(慰安婦被害問題に対して)謝罪して賠償し、すべての人間の尊厳が尊重される社会を実現することが私たちの責務だ」「(慰安婦合意で)日本軍の戦争犯罪を追及することは今後不可能になった」という解説が書かれていた。
 千葉市は2015年に千葉朝鮮小中級学校に補助金約45万円を支給したが、展示会が開かれた昨年分約50万円は、慰安婦合意の批判内容などを理由に支給しないことにした。熊谷市長は今回だけでなく、今後も千葉朝鮮小中級学校に対して補助金を支給しない意向を明らかにした。
 千葉朝鮮小中級学校のキム・ユソプ校長は同日、ハンギョレとの電話インタビューで「交流はお互いに違いを理解することから始まり、違いを超えることだと考えている。朝鮮人が自分のアイデンティティを隠しながら日本の立場に合わせるのは真の交流ではない」とし、「千葉市長へ面談を要請するなど、抗議活動を続けて行くつもりだ」と話した。
 日本の幼稚園と小中高校に相当する朝鮮学校は「各種学校」に分類されており、日本の自治体は朝鮮学校を外国人学校の一つとみなし、運営費と交流事業費の名目で補助金を与えてきた。しかし昨年、馳浩前文部科学相が朝鮮学校がある自治体に「朝鮮学校に対する補助金を支給することが妥当かどうか改めて検討してほしい」という公文書を送り、茨城、三重、和歌山県が昨年から補助金の支給を中断した経緯がある。

東京/チョ・ギウォン特派員
韓国語原文入力:2017-04-28 17:09
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/792727.html


http://www.sankei.com/world/news/170428/wor1704280028-n1.html
http://www.sankei.com/world/news/170428/wor1704280028-n2.html
http://www.sankei.com/world/news/170428/wor1704280028-n3.html
「産経ニュース」2017.4.28 11:01
■朝鮮学校補助金、交付せず 千葉市長が廃止言及も 弁護士「裁量権逸脱の恐れ」
 千葉市が千葉朝鮮初中級学校(同市花見川区)への補助金交付の中止を表明した27日、同市は顧問弁護士から同補助金の今回の支出について「裁量権の逸脱や乱用にあたり、地方自治法に違反する恐れがある」との厳しい指摘を受けていたことを明らかにした。熊谷俊人市長は同日、同補助金のあり方を見直す考えを示し、廃止することにも言及した。
 熊谷市長は会見で「朝鮮学校が地域から孤立しないように交流事業に補助してきたが、日韓合意を否定する展示などをしたことは、市の思いを踏みにじる行為だ。今回はもとより、これからも(同校への補助金交付は)厳しい」と述べた。
 同市こども企画課によると、問題となった美術展は昨年12月6日に千葉市美術館(同市中央区)で行われたもので、当時現場を視察した市職員も内容に日韓合意を否定するものが含まれていることに気付き市に報告していた。
 また、今年2月25日の芸術発表会での「白頭山に行こう」の歌の披露は、3月1日に行われた市議会予算審査特別委員会教育未来分科会で、小川智之市議(自民)が同発表会で同校が行った朝鮮学校の授業料無償化などを求めるチラシの配布とともに「(市が補助金を出す)交流事業にそぐわない内容だ」と指摘するなどしていた。
 昨年9月1日付で同校から交付の申請があり、市も同5日付で最大50万円の交付を決定していたが、同年度末に提出された実績報告書やこれまでの市議の指摘などを踏まえ精査したところ、日韓合意を否認する展示内容などが外国人学校地域交流事業の要項とそぐわないとされた。
 また、市の顧問弁護士から「公益上必要がない事業への補助金を出す場合、裁量権の逸脱や乱用にあたり、地方自治法に違反する恐れがある」と指摘があり、熊谷市長の最終決定をもって交付が中止となったという。
 同市は外国人学校の地域との交流事業に補助金を交付するとしているが、市内で対象となる学校は同校しかないことから、事実上同校を念頭に置く事業となっていた。今年度も5年連続で最大50万円の補助金を予算化していたが、今回の問題を受け今年度の交付を凍結。再開についても当面予定はないとし、熊谷市長は「簡単に復活させていいものではなく、事実上の制度の廃止を含めて考えていくべきだ」と話した。
 一方、北朝鮮が16日朝に弾道ミサイルを発射したことなどについては、「今回の決定に影響していない」とした。

【写真】朝鮮学校への補助金交付の中止について述べる熊谷俊人千葉市長=27日、同市役所(中辻健太郎撮影)


http://www.chiba-ben.or.jp/wp-content/uploads/2016/08/89f80068fd95b6d90cc7d6d7fb11c260.pdf
■朝鮮学校に対する補助金停止に反対する千葉県弁護士会会長声明
声明の趣旨
 当会は,
 1 文部科学大臣に対し,2016年3月29日付「朝鮮学校にかかる補助金交付に関する留意点について(通知)」の撤回を求める。
 2 朝鮮学校に対する補助金の交付を現在停止している地方公共団体に対し,憲法や条約上の子どもの権利に配慮し,補助金を交付することを求める。
 3 朝鮮学校に対する補助金の交付を現在行っている地方公共団体に対し,補助金交付の継続及び憲法上や条約上の権利に合致した運用の改善を図ることを求める。

声明の理由
 1 文部科学大臣は,2016年3月29日,「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」(以下「本通知」という)を都道府県知事宛に発出した。本通知では,「朝鮮学校に関しては,我が国政府としては,北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が,その教育を重視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております」とし,「朝鮮学校に係る補助金の公益性,教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに,補助金の趣旨・目的にかなった適切かつ透明性のある執行の確保及び補助金の趣旨・目的に関する住民への情報提供の適切な実施」を求めている。
 本通知に先立つ2015年6月25日,自由民主党北朝鮮による拉致問題対策本部は,「対北朝鮮措置に関する要請」の中で「朝鮮学校へ補助金を支出している地方公共団体に対し,公益性の有無を厳しく指摘し,全面停止を強く指導・助言すること」を提言し,続いて,2016年2月7日,自由民主党は「北朝鮮による弾道ミサイル発射に緊急党声明」(以下「緊急党声明」という)を発出し,上記提言を速やかに実施するよう求めている。
 その緊急党声明から2か月足らずで文部科学大臣は本通知を発出したのである。
 本通知を受けて,新年度から補助金の交付の一部もしくは全額の停止することを表明している地方公共団体があり,各地の朝鮮学校に多大な影響が生じている。
 かかる経緯に鑑みれば,文部科学大臣の本通知は,本来各地方公共団体の判断と責任において行われるべき補助金の交付について,外交的な理由により各地方公共団体による朝鮮学校への補助金交付の停止を促すものと言わざるを得ない。
 2 すべての子どもには,自己の人格を完成,実現するために必要な学習をする権利が認められ(憲法26条第1項),各種学校への補助金の交付もかかる学習権を実質的に保障するものである。そして,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)13条はすべての者の学習権を認め,無償教育を求めている。
 朝鮮学校においては,児童・生徒の国籍は朝鮮籍,韓国籍さらには日本国籍と多様であり,また,朝鮮語により教育を行い,朝鮮民族の文化,歴史を教えるという特徴はあるものの,学習指導要領に準じた教育が行われている。
 それにもかかわらず,朝鮮学校に通う児童・生徒には関係のない外交問題を理由として朝鮮学校への補助金交付を停止することは,かかる児童・生徒たちの学習権を侵害することはもとより,憲法14条,世界人権宣言,市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約),子どもの権利に関する条約,あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)が禁止する不当な差別に該当する。2014年8月に採択された人種差別撤廃条約の最終見解においても朝鮮学校に対する補助金交付の停止等について「在日朝鮮人の子どもの教育を受ける権利を妨げる法規定及び政府の行動について懸念する」との指摘がなされている。
 3 特に朝鮮学校については,朝鮮半島が日本国により植民地支配されたときに朝鮮半島から日本国の産業のために移住させられた人々が,戦後,朝鮮民族の言葉,文化,歴史を子孫に残すために作られたという経緯に思いをいたすことが重要である。
 もとより民族教育は子どもの権利に関する条約30条においても保障されているところであり,朝鮮学校についても「民族教育を軸に据えた学校教育を実施する場として既に社会的評価が形成されている」学校であるとされている(大阪高判平成26年7月8日)ところであるが,朝鮮学校における民族教育についてはこのような歴史的視座を切り離して考えることはできない。
 4 何より忘れてならないのは,朝鮮学校に対する処遇の問題は,北朝鮮の問題ではなく,日本国内の人権問題であるということである。とりわけ朝鮮籍,韓国籍を有する方に対するヘイトスピーチが拡がっている現状において,政府が本通知を行うことは,朝鮮学校に通う児童・生徒たちに日本社会からの疎外感を与えるとともに,かかる人権侵害行為を助長する可能性があり,到底容認できるものではない。このような展開は,先般成立したいわゆるヘイトスピーチ解消法の趣旨にも反しているといえる。
 5 以上の点を踏まえ,当会は,文部科学大臣に対し,本通知の撤回を求める。そして,千葉県ほか既に朝鮮学校に対する補助金交付を停止している地方公共団体に対し,上記憲法上の権利及び条約の趣旨に配慮して補助金を交付することを求めるとともに,現在補助金を交付している地方公共団体に対し,国家間の外交問題と朝鮮学校に対する補助金交付を安易に結びつけることなく,補助金の交付を継続すること,憲法上の権利及び条約の趣旨に合致した運用の改善を図ることを求めるものである。
    2016年8月23日  千葉県弁護士会 会長 山村清治
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