三重県木本で虐殺された朝鮮人労働者の追悼碑を建立する会と紀州鉱山の真実を明らかにする会

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坡州に住む外国人移住民「稼いだら去る異邦人ではない」…韓国の社会問題にも積極参加

2024年05月26日 | 韓国で
「The Hankyoreh」 2024-05-25 13:39
■坡州に住む外国人移住民「稼いだら去る異邦人ではない」…韓国の社会問題にも積極参加
 [ハンギョレ創刊企画]韓国の中のグローバル化、移住民 
 京畿道坡州市の地域活動家

【写真】ミモトゥ代表(左から3人目)をはじめ、坡州のミャンマーコミュニティーのメンバーが3月1日、朝鮮半島の平和のための非武装地帯(DMZ)巡礼大長程宣布式に参加している=坡州移住労働者センター「シャロームの家」提供//ハンギョレ新聞社

 今月12日、京畿道坡州市金村洞(パジュシ・クムチョンドン)にある坡州移住労働者センター「シャロームの家」は、週末を迎え、訪ねてきた移住民たちでにぎわっていた。それぞれ自身の国の言葉であいさつを交わしている彼らは、3階の学習室で行われる韓国語の授業を受けるためにセンターにやって来た受講生たちだった。
 坡州シャロームの家も普通の移住民センターと同じように韓国語、ミャンマー語、シンハラ語、クメール語などの様々な国の言語が絶えず飛び交う。しかし、特別な点がある。各国のコミュニティーが自ら動いているのだ。この日も午後3時からミャンマーのコミュニティーの会議があったが、ミャンマーの移住労働者たちが思ったより集まったため、彼らはより広い会議スペースを探すのに急いで動いた。ミャンマーコミュニティーのミモトゥ代表(46)は「2022年12月に3人が始めた会は、もう30人の規模にまで膨らんだ」と話した。
 坡州のミャンマーコミュニティーは、結婚移住女性としてやって来たミモトゥ代表を除けば、主に非専門就業(E-9)ビザで韓国に来た20~30代の男性労働者からなる。普通、移住労働者のセンターでの活動は労働相談と韓国語教育がすべてだが、坡州のミャンマーコミュニティーは異なる。この日も主に、軍部のクーデターで苦しんでいるミャンマー人をどのように支援するかについての議論が交わされた。自分たちが韓国と地域社会でどのような役割を果たせるかという議論も欠かさない。地域、民主主義、コミュニケーション、平和など、このコミュニティーがテーブルに載せるテーマには境界がない。

【写真】坡州のミャンマーコミュニティーの代表を務めるミモトゥさん(中央)とミャンマー移住労働者たちが12日、京畿道坡州市金村洞の坡州移住労働者センターシャロームの家で言葉を交わしている=イ・ジュンヒ記者//ハンギョレ新聞社

 討論だけではない。行動にも積極的だ。昨年4月には梨泰院(イテウォン)惨事追悼ウォーキングに参加した。今年3月には、朝鮮半島の平和のための非武装地帯(DMZ)巡礼大長程に参加した。ミモトゥ代表は坡州のミャンマーコミュニティーについて「単に稼いだら帰ってしまう異邦人ではなく、同等な地域社会の住民としてミャンマーと韓国の苦しみを分かち合い、共存を考えている」と説明した。
 ミャンマーの政治的状況を韓国に伝えたり、韓国でミャンマー人を支援したりといった活動も欠かさない。今年2月には坡州市民と共に500万ウォンの募金を集め、タイにあるミャンマー難民キャンプを訪問した。24日には難民キャンプ訪問報告会を行い、今後の活動も具体化する計画だ。ミモトゥさんは「韓国にも過去に似たような苦しみ(軍部クーデター)があったため、この問題を伝えれば互いをもっと理解できるようになると思う」と話した。
 梨泰院からミャンマーに至るまで、彼らにとって違いはない。坡州シャロームの家のイム・ギョンラン事務局長は、「他の地域でもどうすればこのような活動が可能になるかについて関心を持つ人が多い。このような経験が重なっていけば、移住民と共存する方法が学べるはず」だと語った。坡州シャロームの家で活動する聖公会のキム・ヒョンホ神父は、「コミュニティーの中で共存の文化を作り、そのコミュニティーが地域社会とコミュニケーションを取り、地域社会はそれを受け入れる文化を作ろうということ」と話した。

【写真】坡州のミャンマーコミュニティーのメンバーたちが12日、京畿道坡州市金村洞の坡州移住労働者センターシャロームの家で会議の準備をしている=イ・ジュンヒ記者//ハンギョレ新聞社

 ミモトゥ代表はミャンマーで旅行マネージャーとして働いていた。平凡な会社員だったし、社会問題にかかわった経験もない。彼女が変わったのは、2009年に韓国にやって来てから。彼女は「初めて韓国に来た時には、自分が活動家になるなんて思いもしなかった」と話した。ただ漠然と「韓国でミャンマーのために何かしたい」という思いを抱いて暮らしている程度だった。そんな中、2021年にシャロームの家から連絡が来て、通訳を始めた。「私たちのセンターは移住民が主体になる場」(イム事務局長)という哲学を持つシャロームの家で、眠っていた彼女の情熱は目覚めた。そして2022年、坡州でミャンマーのためのろうそくを手にした。「集まったら話をするようになって、一緒に動いた。ろうそくがミャンマーコミュニティーにまでつながった」のだ。
 彼女は、自らが歩んだ成長の過程をミャンマー移住労働者たちも共に歩んでゆけるよう願っている。ミモトゥさんは、「(移住労働者には)こういった活動をしたり韓国人とコミュニケーションしたりしながら、この中で何かを学んでいってほしい。私も韓国人とミャンマー人とをつなぐ役割を続けたい」と話した。
 坡州シャロームの家にはミャンマーの他にもスリランカ、カンボジア、タイなどのコミュニティーがある。ミャンマーコミュニティーはむしろ新しい方だ。他のコミュニティーもミャンマーコミュニティーのように移住労働者中心で始まったが、月日の流れとともに構成員の性格に変化が生じた。イム事務局長は、「スリランカコミュニティーは、かつてはひとりで暮らしている移住労働者がほとんどだったが、最近は家族を作って韓国に定着する人が増えている」と話した。積極的に地域社会とのコミュニケーションに努めてきたおかげだ。

【写真】京畿道坡州市金村洞の金村虹の小さな図書館で蔵書委員として活動する結婚移住女性たちが9日、図書館でポーズを取っている。左からチョン・イルさん、カン・ガヘさん、司書のキム・ウニョンさん、ニカミユリエさん、イイヅカサヤカさん=イ・ジュンヒ記者//ハンギョレ新聞社

 今では、自分たちのコミュニティーにとどまらず坡州の地域社会に馴染んでいる移住民を探すのは難しいことではない。金村洞にある「金村虹の小さな図書館」のように、移住労働者センターが公共図書館と連携する事業にかかわる人々が代表な例だ。この図書館は移住民特化図書館として運営されているが、結婚移住女性などの11人の移住民が蔵書委員として活動する。その過程で図書館は坡州市家族センター、シャロームの家などとも協力する。ミャンマーコミュニティーのミモトゥ代表も、ここで蔵書委員として活動していた。同図書館の司書のキム・ウニョンさん(ヌティナム財団)は、「ネットワークが動くことで蔵書委員が地域の中枢となっていると感じる」と話した。
 日本出身のニカミユリエさん(37)も図書館の蔵書委員だ。交河洞(キョハドン)の協同組合書店「チョムオ書房」の組合員でもある。彼女は最近、坡州の地域合唱団「パノラマ」の団員として、2人の娘とともにセウォル号追悼合唱に参加した。ニカミさんは「初めて韓国に来た時には異邦人だという視線も向けられたが、コミュニティー活動の中で自分は坡州の人間なんだということを感じることができた」と話した。地域図書館という公共の領域が人生のもう一つの機会になったケースもある。台湾から来たチョン・イルさん(44)は、図書館活動の経験から司書資格まで取得し、正式に司書となった。チョン・イルさんは「韓国人であれ移住民であれ、夢を持っているという共通点がある。その部分を互いに共感すれば仲良く暮らしていけるはず」と話した。蔵書委員として活動する日本出身のイイヅカサヤカさん(45)は最近、童話の出版も準備している。イイヅカさんは「本を通じて韓国人とつながりつつ、韓国人とコミュニケーションする喜びをとても感じている。人と人が完全な絆を感じられるように、本を書いたり、多くの聴衆の前で朗読したりするストーリーテラーになりたい」と語った。
 初めて坡州にやって来た時には漠然としていた「共に暮らしたい」というそれぞれの思いは、すでに日常の中で現実のものになりつつある。台湾から来たカン・ガヘさん(36)は、「もともと人は自分の知らないものを恐れたり拒否したりするもの。でも、異邦人に対するそのような感情は、嫌だというよりは一種の恐怖」だと述べた。カンさんは「韓国は移住民に各自を紹介できる優しい隙間を作ってほしい」と付け加えた。「多文化図書館」と聞いて「最初は外国人だけが来るところだと思った」という人も、いつのまにか移住民と共に本と人生について語り合うようになった金村虹の小さな図書館がそうだったように。
イ・ジュンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-05-22 20:57


「The Hankyoreh」 2024-03-22 11:33
■[コラム]韓国の移住民、歓待にとどまらず連帯すべき
 イ・ジュンヒ|全国部記者

【写真】移住労働者たちが自分たちの境遇を象徴する鎖を使ってパフォーマンスを繰り広げている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 昨年4月、移住民政策を取材するために、私はフランスのパリへ行った。シャルル・ド・ゴール空港で飛行機を降りて地下鉄に乗った。移住民の多いパリ北部では、白人の乗客を探すのが難しかった。ホテルのあるパリ中心部はそれとは異なっていた。街にいる人の大半は白人だった。黒人を見かけるのは一定の場所に限られていた。エッフェル塔前の露天商、ホテルの清掃員、博物館の警備員。まるで黒人のする仕事が定められているように思えた。一種の「人種化した階級」だった。
 フランスは移住民の包容に積極的だった。しかし、不平等も根深かった。特に移住民に対する尊重は、安い労働力を利用して利潤を創出しなければならない資本主義の論理の前では、あっけなく崩れ去った。移住民というアイデンティティーは配慮の対象となりうるが、労働者としての彼らの賃金が低い理由は彼らの努力や能力不足、さらには怠惰のような「人種的特性」にたやすく置き換えられた。彼らを低賃金雇用へと追いやる構造は隠蔽されていた。
 韓国はどうか。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は、人口の壁と地域消滅問題の解決策として移民政策を持ち出した。その一環として、今年の非専門就業(E-9)ビザの発給規模を過去最大の16万5千人へと拡大した。ソウルを含む4地域では、下半期から彼らはホテルや食堂の厨房でも働けるようになる。ソウル市は外国人家事手伝いのモデル事業も開始する。
 政策の基調は明確だ。韓国人が敬遠する仕事に外国人を投入するというものだ。同時に、彼らを低賃金雇用に縛りつけておくために、監視と処罰は強化した。法務部は昨年、未登録移住民に対する大々的な取り締まりを行い、3万8千人あまりを摘発した。移住労働者の自由を抑圧しているとの批判を浴びている雇用許可制はそのまま維持した。
 あちこちで悪影響が現れた。慶尚北道慶州市(キョンジュシ)のある工場では昨年11月、取り締まりの過程で法務部の男性職員が女性移住労働者を「ヘッドロック」で制圧して連行していく映像が公開され、社会の怒りを買った。京畿道烏山市(オサンシ)にある韓信大学は同月27日に、語学堂に通っていた22人のウズベキスタン人留学生を「不法滞在者になりうる」との理由で、外部の警備業者を動員し、携帯電話まで押収して強制的に出国させていたことが後になって明るみに出て、衝撃を与えた。

【写真】法務部の職員が昨年11月7日、慶尚北道慶州市のある工場で未登録移住民の取り締まり中に女性移住労働者の首を絞めている=動画をキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 政府の強圧的な移住民政策をめぐっては、批判が相次いでいる。人手の足りない農漁村はもちろん、首都圏の企業からも不満が出ている。移住民のおかげで消滅を免れている地域も状況は同じだ。状況が状況だけに、最近は政治傾向を問わず移住民に対する規制を緩和すべきだとの声があがっている。違いを認め、共存を模索しようとの声も高まっている。
 同意しつつも、依然として疑問は残る。国、民族、人種のような皮を剥けば、その中には搾取を通じてのみ維持が可能な体制の問題が存在するのではないかと感じるからだ。内国人と外国人を分ける前に「人間が敬遠する労働」であるなら、まず労働現場を変えるべきだと考えるからだ。未来の韓国を想像してみよう。アジア各国からやって来た人々が低賃金雇用を埋めたその地で、移住民の第2世代が自身の親の受けてきた搾取を批判して立ち上がったとしたら? 低賃金労働を強制し、職場を離脱すれば違法のレッテルを貼って処罰する韓国の移住民政策を「現代版奴隷制」だとして批判したとしたら? 私たちはそれを移住民の問題と考えるべきか、それとも階級問題と考えるべきか。単なる移住民に対する歓待が、世代を重ねて積もっていくその怒りを防げるだろうか。
 歴史学者エリック・ウィリアムズはその著書『資本主義と奴隷制』で、人種差別のせいで黒人奴隷制が生まれたのではなく、黒人奴隷制が人種差別を産んだのだと主張する。西欧の産業化の動力は超過利潤を通じた資本の蓄積を可能にした黒人奴隷制であり、その過程を正当化する論理として人種差別が誕生した、との指摘だ。ウィリアムズは同書の中でこのように語る。「時代の政治理念と道徳観念は、それらが経済発展と結ぶ非常に緊密な関係の中で検討しなければならない」。移住民に対する歓待にとどまらず、共に搾取の構造を乗り越えていく連帯を考えるべき理由はここにある。
イ・ジュンヒ|全国部記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2024-03-19 19:05


「The Hankyoreh」 2024-01-03 11:39
■留学生規制を緩和するという韓国法務部、実状は潜在的犯罪者扱い
 [留学生18万時代の陰]

【写真】13日午後、京畿道烏山市陽山洞の韓信大学京畿キャンパス内のチャンゴン館前で「韓信大学留学生強制出国糾弾時局祈祷会」が開かれた。参加学生が「恥ずかしい」と表示された携帯電話を手にしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 韓信大学による留学生強制出国問題を機として、外国人留学生の管理を担当する法務部に対する批判も高まっている。法務部の規制一辺倒の政策が今回の事態を招いたというのだ。一部からは、法務部が今回の事件を契機として留学生と大学に対する取り締まりをさらに強化する可能性がある、との憂慮の声があがっている。
 法務部は、今月12日のハンギョレの報道で韓信大学のウズベキスタン留学生強制出国事件が世に知られた後も、特に立場を表明していない。19日のハンギョレの追加報道で、法務部が当初、財政能力を証明できなかった留学生に規定を破って入国査証(ビザ)を発給していたことが明らかになった際に、「大学側の要請で条件付きで発給したものであり、残高証明の要求は大学の(条件)履行の可否を点検する当然の手続き」だと述べのがすべてだ。
 しかし、今回の事態に根本的な原因を提供したのは法務部だとの意見も強い。130の移住民人権団体は21日におこなった記者会見で「法務部は在留管理のすべての責任を大学側に転嫁し、留学生の強制出国を誘発した第一義的な原因提供者」、「法務部が特定の国の出身者を潜在的な犯罪者と見なす差別的な指針によって留学生を管理している中、大学が外国人留学生を金儲けの対象と考えるのは当然の現象」と指摘している。
 法務部は留学生に対する規制の緩和を約束しながら、政策実行には消極的だとの批判もある。法務部は8月24日の大統領主宰の規制革新戦略会議で、国内の学位課程の留学生の低い就職率(16%)を高めるために、卒業後の就業を3年間にわたって全面的に容認することを内容とする「外国人人材活用などの雇用キラー規制廃止方策」を発表した。事務・専門職に限られていた就業制限を解除するというのだ。しかし、発表から4カ月たっても留学生政策には何の変化もない。法務部の関係者は20日、ハンギョレに「まだ細部事項は決まっていない」と語った。
 その間、取り締まりは日増しに強まっている。済州漢拏大学のキム・ドギュン教授は、「留学生支援策は発表しておきながら実行していないのに、出入国官署は取り締まりにばかり重点を置いているものだから、とうとう大学が留学生を拉致して強制出国させるというあきれた事態が起きた」と述べた。首都圏のある大学で国際交流業務を担当する教職員は「韓国は世界の主要国へと成長し、社会も開放的なものへと変化したが、法務部だけが数十年前の防衛的思考に閉じ込もっている。根本的な問題は解決せず、取り締まりばかりを強化するやり方で今回の事態に対応するのではないかと心配だ」と話した。
イ・ジュンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/1121668.html
韓国語原文入力:2023-12-25 05:00


「The Hankyoreh」 2023-05-04 07:56
■礼拝堂まで急襲…韓国法務部の「移住労働者取締り」で人権侵害続出

【写真】移住労働者が鎖で自分たちの境遇を象徴するパフォーマンスを行っている=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 農業や製造業、建設業など非専門職種への就業を希望する外国人に発給される非専門就業ビザ(E-9)で2013年に韓国に入国したネパール人のTさん(44)は4月8日、忠清南道牙山(アサン)のある工場で滞在期間(最大4年10カ月)を越えて働き続けたことで、韓国政府の不法滞在取り締まりに摘発された。取り締まりの過程で肩を脱臼したが、Tさんは直ちに大田(テジョン)出入国管理事務所の保護室に収容された。Tさんが一晩中泣きながら痛みを訴えると、当局は翌日になってようやく彼を病院に連れて行った。医療スタッフは手術が必要だと言ったが、Tさんは翌日、強制出国させられた。Tさんの診療費(104万ウォン)は、一緒に摘発された他のネパール人に請求された。ネパールに帰ったTさんは最近「行き過ぎた取り締まりで負傷したこと、治療費を他のネパール人に負担させたこと、治療が終わっていない人を急いで出国させて人権を侵害した状況を調査してほしい」として、国家人権委員会に陳情を出した。Tさんは出入国管理事務所における人権侵害の再発防止策を講じるよう求めた。人権委は事実関係の確認のための手続きを進めている。
 韓国政府が不法滞在移住民に対する取り締まりを強化したことで、人権侵害の事例も続出している。政府は外国人登録証のない未登録移住民だけではなく、合法滞在者でも規定に反する労働に従事ずる移住民も全員「不法滞在外国人」とみなし、摘発と追放を進めている。
 3月25日には仁川(インチョン)のあるクラブでタイの有名歌手が公演をしていたところ、仁川出入国・外国人庁がタイとラオス国籍の不法滞在移住民83人を一度に逮捕した。他国の文化公演を台無しにし、外交問題に飛び火する恐れがあるという懸念の声もあがっている。同月12日には警察が大邱(テグ)で礼拝を行っている教会を急襲し、フィリピン国籍の不法滞在移住民9人を逮捕して、宗教の自由を侵害したと批判された。
 政府の大々的な取り締まりで負傷者が続出し、人権侵害という批判が高まっているが、法務部は不法滞在に対する常時取り締まり体系を通じて厳正な法秩序を確立したと広報している。法務部は3日、報道資料を出し「今年1月から4月まで1万2833人を送り出し、1万2163人を自主出国させて、不法滞在移住民2万5千人を減らした」と明らかにした。ハン・ドンフン法務部長官は「柔軟な出入国移民管理政策の前提となるのは、厳正かつ予測可能な滞在秩序であり、これからも不法滞在に対する取り締まりなど厳正な滞在秩序の確立に努める」と述べた。
 しかし、法務部のこのような取り締まりは反人権的であるだけでなく、現実とかけ離れているという指摘もある。韓国国民が敬遠する農業分野では不法滞在移住民の労働力がなければ農作業がほとんど不可能であるためだ。韓国農村経済研究院のオム・ジニョン研究委員が農家402カ所を調査・分析した資料「農業部門における未登録外国人勤労者雇用の実態と課題」によると、外国人労働者を雇用する農家の91%が不法滞在移住民を雇用していた。
 取り締まりが強化されれば不法滞在移住民がさらに身を潜め、危険な労働・居住環境に置かれる可能性もある。3月4日には京畿道抱川市(ポチョンシ)のある豚農場で、不法滞在状態だった60代のタイ人が死亡後に遺体が遺棄された状態で発見されており、2月23日には全羅北道高敞(コチャン)でタイ国籍の不法滞在移住民の夫婦が暖房費を節約しようと薪を使い窒息死する事故もあった。
 移住労組のウダヤ・ライ委員長はハンギョレの取材に対し「政府の無差別な取り締まりだけでは未登録移住民数を減らすことができず、様々な人権侵害を量産するだけだ。農漁業と産業現場でも問題を起こし経済に打撃を与える」とし、「コロナ禍では移住労働者の人手不足を訴え、急いで未登録移住民を連れて来ておいて、今度は追い出そうとする韓国政府はあまりにも偽善的だ」と批判した。

イ・ジェホ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2023-05-03 20:48
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