日本人は、軍人としてだけでなく、従軍記者、官僚、企業の要員、警察官、技師、日本語教師、看守、医師、「研究者」、日本軍慰問団員、農業移民、商人、船員、旅館経営者、アヘン栽培人・販売人、僧侶……として海南島で行動していた。
「移民」として海南島に侵入した日本人は、中国東北部に侵入した日本人と同じく、農民の既耕地を奪いそこに住んでいた人びとをそこで働かせた。日本語教師として海南島に侵入した日本人は、子どもたちに、日本語を学ばせるとともに、「ヒノマル」・「キミガヨ」をおしつけた。
後藤元宏(三菱合資会社元社員)『南支那海之一大寶庫 海南島』(武道社、1932年10月)。
菅勇(東亜殖産取締役)『南海の宝庫 海南島』(清水温古堂、1938年9月)。
千葉燿胤(三井物産株式会社査業課)『海南島の研究』(貿易奨励会、1939年2月)。
火野葦平(日本軍報道員。陸軍軍曹)『海南島記』(改造社、1939年5月)。
黒崎義介(従軍画家)『軍艦旗の行くところ 中支・南支・海南島』(フタバ書院、1941年9月)。
東亜地理調査会編『実用 海南島案内』(日光堂商会〈台北〉、1941年11月)。
馬場秀次(海南島聯合会主事)『海南島とその開発』(武蔵書房、1941年12月)。
馬場秀次(海南島農林業聯合会主事)『海南島事情』(拓務省拓南局、1942年3月)。
長沼依山『海南島の開発者 勝間田善作』(三省堂、1943年)。
■海南島侵略日本企業
海南島で、日本企業は、日本占領下の海南島に入り込み、資源を略奪し、住民を虐待し、香港、朝鮮、台湾、中国大陸各地から連行した人たちを酷使し、暴行死・事故死・病死・餓死させた。
日本企業の経済侵略は、日本軍の軍事侵略とむすびついていた。日本企業は、鉱山資源・森林資源・漁業資源を略奪しただけでなく、侵略の基礎構造である飛行場、港湾、道路、橋梁、鉄道、発電ダムなどを整備・新設し、軍需物資を調達した。
日本企業(熱帯産農産物の事業会社など)は、日本軍の軍事力に支えられて土地を略奪し、コメ、綿花、ゴム、サトウキビ、香料、茶、タバコなどの栽培事業をおこなった。
海南島侵略日本企業のほとんどは、いまも日本国内外で事業を継続しているが、海南島でおこなった侵略犯罪を具体的に、みずから明らかにし、犠牲者に謝罪し、賠償すべきである。
鉱山業: 日本窒素、石原産業、三菱鉱業。
金融機関: 台湾銀行、横浜正金銀行、瓊崖銀行。
農業: 台湾拓殖、三井農林、海南拓殖、日本油脂、明治製糖、塩水港製糖、大日本製糖、日東農林、三共、
日糖興業、武田薬品、資生堂、塩野義製薬、伊藤産業、南洋護謨、海南産業、海南物産、東台湾珈琲、
南海興業、スマトラ拓殖、南洋興発、南国産業、梅村商店、南洋起業、深山農園、南国煙草、厚生公
司(アヘン栽培)。
林業: 島田合資、王子製紙、台拓海南産業、大共木材、三井農林、南洋興発、海南拓殖、南国産業。
土木工事: 西松組、清水組、田村組、萩原組、永岡組、東京基礎工業、海南土建、日本鋪道。
畜産業: 海南畜産(台拓系)、水垣産業、松崎海南工廠。
水産業: 林兼、海南島水産、拓南産業、西大洋漁業、南日本漁業、東亜水産、大日産業、勝間田商行、日本
真珠。
工業: 海南原鉄、日本製鉄、浅野セメント、福大公司、台拓煉瓦、海南セメント、日本硝子工業、海南煉瓦製
造所、旗山商会、トヨタ自動車、下津燐寸、東亜製薬廠、海南製紙、南国煙草(三井系)、南興公司、三友
殖産、木村珈琲、海南テグス、東亜塩業、日産化学、島田合資会社製煉所、大日産業。
運輸業: 大阪商船、南日本汽船、台拓海南産業(自動車部)、開南航運、開南帆船、図南洋行、海南運輸、
東亜海運、大洋帆船、日東汽船、三井倉庫、石原産業。
商業: 三井物産、大丸、明治屋、三越、大建産業、海南交易、八興公司、岩井産業、竹腰産業、大建産業、
萬和公司、建泰公司、日本海南公司、梅村商店、加藤商会、湯浅実業、竹内興業、緒方商店、大南公
司、安部幸産業、帝国産業、石油聯合、海口地区物資配給有限会社、南興公司(アヘン専売)。
発電事業: 日窒電業、石原産業、日本製鉄。
電気通信業: 国際電気通信。
ホテル業: 日本共立興業、富士屋。
医院: 同仁会。
報道宣伝事業: 海南新聞社、海南迅報社、同盟通信社、開南出版、共栄会、海南文化協会、台湾共栄会。
研究所: 九州帝国大学熱帯農林研究所、東京帝国大学農学部附属熱帯林業研究所、台北帝国大学南方
資源科学研究所実験所。
【証拠文書】
『海南島産業開発ノ現況ト将来』(海南海軍特務部、1942年6月)。
「海南島進出会社資金源泉ニ関スル調査」(軍務局、1945年10月10日)。
「海軍南方交易部会会員名簿」(1945年10月31日現在)。
「第二十三軍管区善後処理要報資料」(1946年)。
「海南島金融関係引継書」(海南海軍特務部)。
「海南島民間関係資産被接収ニ関スル資料」(海南海軍特務部)。
佐藤正人