総務省関東総合通信局の2008年9月26日報道資料で関東全都県のブロードバンド普及率が50%を越える(平成20年度6月末)がありまして、狐につままれたような感じです。私は2008年6月28日にブロードバンドの整備状況、3月末を書いていますが、同じ関東総合通信局の『平成20年3月末の関東管内におけるブロードバンド・サービス利用可能世帯数(推計)は、1,789万世帯(99.7%)となりました。』をもとにしていました。それが6月末の状況は以下のように書かれています。
総務省関東総合通信局(局長 岡山 淳(おかやま じゅん))では、関東管内(1都7県)における、平成20年(2008年)6月末現在のブロードバンドの普及状況について、次のとおり取りまとめました。
【主な傾向】
○ 関東管内のブロードバンドについては、前回(平成20年3月末)の調査以降茨城県の普及率が伸びたことにより、関東管内全ての都県で普及率が50%を超えた。
○ 関東管内のFTTHについては、今回の調査で従来の東京都、神奈川県、千葉県に加え、埼玉県が初めてDSLを上回った。関東管内のFTTH普及率30.7%は、全国の普及率25.0%を5.7ポイント上回った。また、FTTHの契約数は、関東管内で550万を超えた。
真っ先に感じたのはこの普及率統計の採り方が変わった、3月末は世帯数での普及率だが、6月末は違う値なのかも知れないということです。しかし6月末の普及率も世帯数基準であることはすぐに分かりました。「※ 世帯数は、総務省自治行政局発表の「住民基本台帳に基づく人口・人口動態及び世帯数(平成20年3月31日)」を使用。」 と注があります。
2008年3月末推計の時は、「2008年3月末の推計値は、2005年(平成17年)国勢調査の世帯数及び2007年3月末現在の住民基本台帳に基づく総世帯数(関東管内1,795万世帯)より推計」でした。
母集団の関東地区の世帯数が大幅に増加して分母の伸びが大きく、分子(ブロードバンド利用世帯数)の伸びが小さかったということは考えられません。
公表資料をよく読んでみると、利用可能世帯数の算出方法が全く変わった事が分かりました。
2008年3月末では、『ブロードバンド・サービスについて、事業者情報等から、原則町丁目字単位での利用可能の有無を区分し、国勢調査及び住民基本台帳の世帯数を踏まえサービスエリアの世帯カバー率を推計。ただし、ADSLについては、サービスエリア内であっても、収容局からの距離が概ね4kmを超える地区については信号の減衰が大きく実用に適しないことから利用可能とせず、世帯カバー率の推計を行っている。』 すなわち契約実数では無く同一町内を一単位と扱っていて、町内に1軒でもブロードバンドが届いていればその町内全世帯がブロードバンド可能として推計をしていました。これはセミナーなどでも関東総合通信局の講師がその旨の話をなさっていまして私の記事でもしばしば書いていた事です。
2008年6月末では、『*FTTHアクセスサービス及びCATVアクセスサービスの契約数に修正が生じたことにより、全国、関東、埼玉県及び東京都の数値が一部修正となっております。なお、修正箇所には下線が付してあります。』 すなわち今回初めて上記のような地域推計ではなく、契約数を使って集計したから実は60%に達していないという結果が出たのです。
山梨県のブロードバンドサービス提供状況(平成20年3月末現在)は、このような地域世帯推計で色が付けられている面としての表示です。山梨県としても甲府市としても、点と線を組み合わせた現実のブロードバンド可能地図が既に作成されていて、2010年全国ブロードバンド化達成への道筋と方策が描かれていると期待したいと思います。
まったく、統計にごまかされていては話が進みません。もっとも「ごまかし」というのは言い過ぎでして、上に述べたようにセミナーなどではそれを了解した上での話が進んでいたのですが、それにしても困惑する数字が明らかになったものだと私は感じました。
2010年全国ブロードバンド化達成は現実として可能なのでしょうか、私が主張してきたような地デジのインターネット配信等は夢のまた夢と消えたのでしょうか。
「2010年全国ブロードバンド化達成」はどのような具体的な目標なのか、次世代ブロードバンド戦略2010概要(総務省リンク PDFファイル:1.32MB)からもう一度確認しておきます。
1)地理的デジタル・ディバイドの解消
① 2008年までにブロードバンド・ゼロ市町村を解消、2010年までにブロードバンド・ゼロ地域を解消し、ブロードバンド基盤の全国的整備を実現する。
② 国際競争力の強化等の観点から、2010年までに上り30Mbps級以上の次世代双方向ブロードバンドの世帯カバー率を90%以上とする。
これを数値的に表現するのに「ブロードバンド・ゼロ市町村を解消」については99%まで達したことを2008年3月末のデータで示したことになりますから、次は「ブロードバンド・ゼロ地域の解消」について「契約数」という具体的な数字が必要になったのだと理解できると思います。「100%ブロードバンド・ネットワークの実現イメージ」は次のように述べられています。
1.多様な有無線技術がシームレスに連携・融合し、全国においていずれかのブロードバンド・サービスにアクセス可能。
2.投資効率が悪い地域では、投資効率と地域のニーズを反映した形でブロードバンド・ネットワークが実現。ADSLやケーブルインターネットに加え、
(1) 無線LAN等によるワイヤレス・ブロードバンド
(2) 「無線+ADSL/VDSL」、「光ファイバ+光無線」、「光ファイバ+ADSL(FTTR(Fiber To The RT))」等 有無線の融合型ブロードバンド等により整備。
3.FTTHを中心とした超高速ブロードバンドが、全世帯の90%で利用可能。
この最終段階に至った時にも「契約数」で見る限り100%にはならないかも知れませんが、インフラとしては国民が望めばブロードバンド接続ができる状態が整ったということを意味するわけです。
山梨県内では既に記事にしているように無線によるインフラがラストワンマイルとなるでしょうが、それを地域にお住まいの方々が利用するかどうかはわかりません、しかし、国としてはその基幹となるインフラは準備すると宣言している事になります。その意味でラストワンマイルは誰が担当するのかという事が残された問題になりそうに思えます。
その点から考えれば上野原市の事例でもあったように整備段階での補助金などからどのような制約が課せられていたにせよ、2010年を目指して上九一色支所と甲府市庁を結ぶ光回線は民間にも供与されるべきだ、補助金元の総務省などもそれを認めねばならないと言えそうです。こうして最終的には「契約世帯数/全世帯数」で表現されるものではなく、「点と線によるブロードバンド可能地図」で100%達成が表現されることになると思います。
ひとつだけ気が付いた事。皆さんに見ていただきたいWebページで、ファイルサイズが大きな画像、PDFファイルなどで発信していることは間違いでした。現時点でも4割の世帯はそういうページをサクサク見られないのです。私がいつも気にしていた事がこのような統計ではっきりした事で、Webページ制作の基本に立ち返りたいと思いました。最近の私はブロードバンド神話を信じて以前は鉄則としていた8秒ルールを手抜きしていたのです、でも一度染み込んだ悪い癖から抜け出すのは大変です、このブログでもファイルは結構重いのです、長い記事ばかり書いているのでテキストだけで30KB以上あり、それが5本並んでいれば150KB、加えて画像ファイルですから、とても8秒では無理(^_^;)