2024年5月27日 7時57分
辞意表明で突然の知事選挙 “対立の県政”その後は?(NHK)
【この記事は長文なので各記事の一部掲載にしています。NHK全文をお読みください。】まさに急転直下。 静岡県知事・川勝平太の辞意表明で、来年に予定されていた知事選挙が前倒しになった。
元副知事と元浜松市長、それに共産党県委員長ら6人が立候補した。 各方面で対立と混乱を生んだと評される川勝県政。
選挙の結果、その後の舵取りを元浜松市長の鈴木康友が担うことが決まった。
(静岡局 仲田萌重子 加藤拓巳)
突然の選挙前倒し
「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
4月10日、川勝は、細川ガラシャの辞世の句を口にし、晴れやかな表情で辞職届を提出した。
これにより、知事選挙の日程も、5月9日告示、26日投開票と大幅に前倒しされることとなった。
“対立は避けたい”
県内政界からは、戸惑いの声とともに「できれば対立を避けたい」という声が聞かれた。
関係者の声には、15年間の川勝県政での対立と混乱による「疲れ」がにじんでいた。
異口同音に“オール静岡”
異例の短期決戦が決まり、いち早く手を挙げたのが、元静岡県副知事の大村慎一(60)だった。
3日後の4月15日
元浜松市長の鈴木康友(66)が、立候補の意向を表明した。
与野党双方から支援を得ようと、各党に推薦願を提出した。
足並みそろうか
できれば対立は避けたいという本音を抱えつつ、各党も4月中旬に動き始めた。
立憲民主党と国民民主党なども、相次いで鈴木の推薦を決めた。
揺れる自民党
一方の自民党。
「盆と正月が一緒に来たような感じだ」
「勝ち馬に乗れるように見極めないといけない」
公明党は、さらに、意思決定に時間を要した。
共産党なども参戦
そして4月25日、大村、鈴木に続き、共産党静岡県委員会で委員長を務める森大介(55)が公認候補として立候補すると表明した。
このほか、諸派の横山正文(56)、無所属の村上猛(73)、無所属の濱中都己(62)が立候補。
過去最多の6人による争いとなった。
事実上の一騎打ちに
選挙戦は、事実上、鈴木と大村の一騎打ちとなった。
立憲民主党の泉代表や野田佳彦元総理大臣ら、応援弁士も続々と静岡入りした。
争点は?
主要な県政課題に対し、2人はそれぞれ何を訴えたのか?NHKは、候補者に、有権者が気になる政策についてアンケートを実施した。
野球場以外では、鈴木、大村の間に大きな違いはなく、両陣営の関係者からも「これといった争点がない選挙だ」との声も聞かれた。
新知事誕生
迎えた投開票日。
15年ぶりに新人どうしの争いとなった選挙を制したのは、鈴木だった。
静岡県知事選挙の開票結果はこちらだ。
▼鈴木康友、無所属・新。当選。72万8500票。
▼大村慎一、無所属・新。65万1013票。
▼森大介、共産・新。10万7979票。
▼濱中都己、無所属・新。2万4315票。
▼村上猛、無所属・新。1万5106票。
▼横山正文、諸派・新。9263票。
立憲民主党と国民民主党が推薦した元浜松市長の鈴木が、自民党が推薦した元副知事の大村らを抑え、初めての当選を果たした。
NHKが選挙当日の26日に県内40か所で行った出口調査では、鈴木は、立憲民主党支持層の70%台後半、国民民主党支持層のおよそ70%の支持を固め、無党派層の50%あまりからも支持を得た。
一方、大村は、自民党支持層のおよそ60%から支持を得たものの、及ばなかった。
鈴木、大村そろって「オール静岡」を掲げたものの、与野党対立の様相が色濃く出た選挙戦となった。
“対立”解消に向かうのか さらに対立の芽は残る。
静岡に長年続く「地域対立」だ
東西155キロに及ぶ静岡県は、明治初期の廃藩置県後、伊豆半島周辺の「足柄県」の一部、中部や富士山周辺の「静岡県」、西部の「浜松県」が合併した経緯があり、文化圏も異なる。
近年、東部は首都圏、西部は中京圏の経済的影響が強まっていることもあり、県の一体性をどう保つのかも大きな課題となっている。
中部や東部の有権者からは、「元浜松市長が知事になったら、浜松びいきの県政になる」「浜松に県政が奪われる」などという声も聞かれた。
鈴木新知事は、対立を乗り越え「オール静岡」の県政を実現できるのか。さっそく手腕が問われることになる。
(以上、敬称略)