樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

絶景かな

2008年08月06日 | 木造建築
カミングアウトします。私は大盗賊、石川五右衛門の子孫です。
幼い頃からそう聞かされて育ちました。兄は五右衛門をキャラクター化してテレホンカードを作ったり、釜茹でにちなんだ釜めしを最寄りの国鉄駅(当時)の駅弁として売り出す計画を立てました。
でも、わが家は石川という姓ではないので「おかしいな?」と思って調べたら、五右衛門のお父さんに先祖が仕えていて、娘を嫁にもらったということのようです。そのお父さんが秀吉の策略で騙し討ちにされたので、五右衛門は秀吉の暗殺を企ててアウトローになったという話です。
実家の近くには石川氏が築いた城跡に石碑が建っていて、側面には「石川五右衛門出生の地」と刻まれています。

             
       (五右衛門が生まれ育ったであろう伊久知(いくじ)城の跡)

五右衛門といえば、南禅寺の山門での名せりふ「絶景かな、絶景かな」。一応ご先祖の筋なので、私も登ってきました。階段の前には、市川猿之助が歌舞伎の舞台ではなく、この山門で見得をきった写真が飾ってありました。

       
        (南禅寺の山門はドラマや映画の撮影によく使われます)
       
             (ご先祖様が大見得をきった2階の欄干)
       
       (楼上からの京都市街の眺め。絶景というほどでもないな~)

南禅寺の山門には階段があって楼上に登れますが、東大寺の南大門や平安京にあった羅生門など古代の山門や宮門には階段がないそうです。外観は2層ですが構造的には1層で、南大門の場合は直径1m×高さ20mのヒノキの柱が天井まで貫いています。

       
      (東大寺南大門。一見2階建てですが2階も階段もありません)

平城京跡に復元された朱雀門にも階段はなく、上には登れません。それでも、2階部分には落下を防ぐ欄干が設置されています。ちなみに、この朱雀門には直径70cmの丸柱18本のほか3000本のヒノキが使われていて、復元費用30億円中、木材が10億円を占めたそうです。
なぜ使いもしない2階を造って欄干まで取り付けたのか? 権力や威厳を示すため、というのが建築家の解釈です。

       
          (復元された平城京の朱雀門も外見のみ2階建て)

結局、兄が目論んだ五右衛門のキャラクター事業は残念ながら1年ほどで挫折しました。その後、五右衛門による町興しの話は聞きません。
なお、石川五右衛門の出身については丹後説のほか伊勢説、河内説もあります。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

京都お箸の文化資料館

2008年08月04日 | 木と飲食
日本の多くの記念日が語呂合わせですが、きょう8月4日は箸の日だそうで、それにちなんだお話を。
京都市山科区に「京都お箸の文化資料館」という、割り箸問屋さんが個人的に開設されたミュージアムがあります。私は30年ほど前まで近くに住んでいましたが、その存在を知りませんでした。最近になってできたのかも知れません。
展示パネルによると、先代は奈良県の生まれで、割り箸産地・吉野で箸作りの技術を磨き、天皇家で使う箸を一手に引き受けて製作していたそうです。年間1,500膳の注文に応えるため、南アルプスまで出かけて原木を入手し、1膳1膳手作りで仕上げたとか。
そう言えば、天皇家のお箸は1回きりの使い捨て、という話を何かの本で読んだ記憶があります。

       
                 (天皇家ご使用のお箸)

「天皇家御使用のお箸」という展示品もあって、「材質は柳の木」と解説してあります。しかし、シダレヤナギは日本の自生種ではないので、原木を信州の山奥へ探しに行くというのは変です。一般的に「柳箸」と呼ばれるお箸は実はミズキ製らしいので、材質はミズキかも知れません。
あるいは、同じヤナギ科でもシダレヤナギではなく、ヤマナラシの仲間かも知れません。どちらも、展示品のような白い材です。

       
            (壁面に展示されているジャンボ割り箸)

このミュージアムの目玉は2m10cmもの巨大割り箸。展示パネルには「世界一ジャンボ割箸 1998年ギネスに挑戦」と書いてありました。材質は吉野杉。ほかにも2mくらいの巨大割り箸が何本か展示してあります。
また、中国の貴人が毒味に使った銀の箸、韓国の割り箸、箸箱や箸置きなど各種の実物のほか「お箸と諺」などの説明パネルが陳列してあります。
小さなミュージアムとは言え、自身の仕事に関してこれだけこだわりを持ち、さまざまな展示品や情報を収集するエネルギーには敬服します。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳩時計

2008年08月01日 | 木の材
数年前、平井堅が『大きな古時計』をリメイクしてヒットさせました。その歌を聴きながら、ウッドマニアの私は「昔の柱時計はどんな木で作られたんだろう?」と考えていました。自分なりに調べてみましたが樹種は特定できませんでした。
ところが、先日、仕事で神戸にある鳩時計の専門店を取材する機会がありました(と言うよりも、私の興味でその店を選定したのですが…)。ご主人に尋ねると、鳩時計の本場はドイツの「黒い森」周辺で、樹種は予想どおりドイツトウヒとのこと。
バイオリンやピアノなど楽器にも多用される木なので、音響特性が重視される柱時計や鳩時計にも使われたのではないかと推測していました。しかし、ご主人は「というよりも、黒い森にたくさんある樹種だから使ったようです。それが結果的に鳩時計に向いていたのでしょう」。

             
           (錘のモチーフはドイツトウヒの松ポックリ)

本体はドイツトウヒですが、彫刻部分はセイヨウシナノキ(別名「西洋菩提樹」)だそうです。マッチ棒やアイスキャンデーの棒に使われた日本のシナノキと同じ仲間で、柔らかくて加工しやすいので彫刻に使ったのでしょう。
話は少しそれますが、「♪泉に沿いて茂る菩提樹~」というシューベルトの歌はこの樹を意味しています。その原題『リンデンバウム』がドイツでのこの樹の呼び名です。
ドイツトウヒにしてもリンデンバウム(セイヨウシナノキ)にしても、ドイツの森に自生している身近な樹木を使って鳩時計を作ったわけです。

       
         (木のおもちゃもありました。このフクロウはスイス製)

鳩時計がドイツトウヒとセイヨウシナノキ製であることは分かりましたが、柱時計の樹種が同じとは限りません。次は柱時計を調べてみます。
また、鳩時計は元々ニワトリの声を模したのが始まりで、その後、カッコウ、ハト、フクロウなどの声になったそうですが、「なぜ時計の音は鳥類なのか?」、バードウォッチャーとして別の興味も出てきました。
鳩時計に興味のある方はこちらをどうぞ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする