樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

ヤマザクラは通好み

2007年04月03日 | 樹木
昨日、ソメイヨシノが生まれたのは江戸末期と書きました。それまでは、桜と言えばヤマザクラを意味しました。江戸時代の学者・本居宣長が「敷島の大和心を人問はば 朝日に匂う山桜花」と歌っているように、日本を代表する花はソメイヨシノではなくヤマザクラだったのです。
ソメイヨシノの名前の由来、奈良の吉野もヤマザクラの名所。ここでは、役小角(えんのおずぬ=いわゆる「役の行者」)が修行中に金剛蔵王権現を感得し、ヤマザクラにその姿を彫ったことから神聖化されました。そして、「桜一本首一つ、枝一本指一つ」と言われるほど厳しく伐採が禁じられ、一方で信者がたくさん献木したために、現在のように多数のヤマザクラが残ったのだそうです。

      
     (ヤマザクラはソメイヨシノよりも花が白く、葉も同時に展開します)

桜の専門家の中にはソメイヨシノよりもヤマザクラを愛でる人が多いようで、京都の名所・円山公園の枝垂れ桜をはじめ日本各地の名木の桜守りとして知られる佐野藤右衛門さんも、著書で「山の中でひっそりと咲いている山桜がいちばん美しい」と書いています。
水上勉の小説『桜守』のモデルになった笹部新太郎は、「山桜を本場結城とすれば、染井吉野はスフ(人工の絹)」とまで書いています。
そう言われても、私たちがヤマザクラを目にする機会は少ないですし、ソメイヨシノが花をいっぱいつけている姿や、風を受けて一斉に花びらを散らすシーンを見るとやっぱり感動します。ヤマザクラも詳しく言えば3種類あるのですが、花とほぼ同時に葉も展開すること、花が白いことがソメイヨシノとの識別ポイントです。
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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
guitarbirdさんへ (fagus06)
2007-04-05 08:26:37
私の認識では「ヤマザクラ」と呼ばれるのは、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、ミヤマザクラの3種。私が持っている図鑑では「エゾヤマザクラはオオヤマザクラの別名」となっています。ヤマザクラより赤っぽいです。
私もいつもいく山で遠景にやや赤いサクラを見たことがあって、多分オオヤマザクラ(=エゾヤマザクラ)だと思っています。
サクラもいろんな種類があって、とくに街中にあるものは栽培品種が混じっているので識別が難しいです。
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bulbulさんへ (fagus06)
2007-04-05 08:15:40
アーモンドの花も樹も、生の実も見たことないです。
長居公園は私も気なっていて、今度大阪へ仕事に行った時、時間があれば行ってみようと思っています。
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エゾヤマザクラは・・・ (guitarbird)
2007-04-05 08:02:47
こんにちわ、guitarbirdです

エゾヤマザクラは、ソメイヨシノよりも色が濃いように見えるのですが、
ヤマザクラともまた微妙に違うのかな、と思いました。
でもそうして考えると、樹木の図鑑は、北海道のものしか持っていないので
調べようがない、だから全国のものも買わなきゃ、と、今思いました。
ちなみにこちらでは、花がほとんど白ともいえる
カスミザクラが結構植栽されています。
これ、花の色が清らかでいいというのもあるのですが、
なにより、花期がエゾヤマより半月ほど遅いので、
長い間桜が楽しめるのが、いいところです。
今年はその写真も撮って記事にしようと思ってます。
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通好み (bulbul)
2007-04-04 16:52:15
 というわけでもありませんがどこにでもあるってわけでもないアーモンドの花も良いですね、長居公園にいろいろな桜を集めたところがあってそこで見られます。桜よりちょっと早く開花してたように思います。なじみ深いたべものなのに生の果実を見たことがありません。
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4日の桜餅の記事に (fagus06)
2007-04-04 09:02:22
書きましたが、多分クマリンという物質の匂いだと思います。葉を塩漬けにすると出るそうですが、bulbulさんがおっしゃるように樹の近くでもほんのり匂います。
根尾の薄墨桜は、私も鳥を見に行った帰りに観に行きました。でも、冬だったので花は咲いていませんでしたが…。
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かおり (bulbul)
2007-04-04 04:44:15
 桜の樹の近くを通ると良い香りがすることがありますね、これは花の時期にかぎらずですが、枝を切ったりってわけでもないのにふうっと、なぜなんだろう。桜というと根尾のエドヒガン通称「薄墨桜」を見た時は感激しました。ずうっと昔のことですが、
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