樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

フライトディスタンス

2016年09月29日 | 野鳥
前回に続いて巨椋干拓地の鳥の話。セイタカシギがやって来たらしいので、今にも雨が降りそうな空の下、バイクに乗って行ってきました。
水を張った休耕田にセイタカシギが1羽…。他に誰もいないので、遠慮なくじっくりと観察し、その動きをカメラに収めました。
撮影していると、どんどん近づいてきます。ついに7~8mほどの距離、カメラのフレームからはみ出すほどまで寄ってきて、一心不乱に採餌しています。若鳥だから警戒心が弱いのでしょう。



この行動を見ていて、「野鳥の警戒距離はどれくらいだろう? 成鳥と若鳥ではどれほど差があるのだろう?」という疑問が湧いてきました。鳥を観察したり撮影する際、一歩でも近づきたいのですが、下手に近づくと逃げられます。その距離感に何か基準があるのかなと思って調べてみました。
日本でのいくつかの研究によると、一般的に小型の鳥よりも大型の鳥の方が警戒距離が長いようです。その理由は、体が大きいほど退避、つまり飛び立つのに時間がかかるから。そして、「おおむね小型鳥類で30~50m、大型鳥類で100~250m」と書いてあります。しかし、種類にもよりますが、この数字は私の実感とは違って少しオーバーだと思います。警戒心の強いサギ類でも50m~くらいでしょう。
インドでは面白い調査が行われていて、留鳥の警戒距離の方が渡り鳥のそれよりも短いそうです。ヒンズー教では野鳥に危害を加えることを戒めているので、国内の鳥は警戒心が弱く、渡り鳥は国外で狩猟圧を受けているので警戒心が強いとのこと。
この警戒距離のことを「フライトディスタンス」と呼ぶそうです。鳥との距離感はハンターにとっても重要で、『狩猟の教科書』という本には以下のように書いてあります。
「キジバトは非常に警戒心が強い鳥で(中略)、フライトディタンスは30~100mであり、散弾銃では難しい距離ですが、エアライフル銃であれば狙撃しやすい距離になります」。
キジバトの警戒心が強いという記述には疑問があって、私の実感ではドバト並みの1~2m。でも、当ブログに毎回コメントをくださる札幌のguitarbirdさんによると、北海道のキジバトは警戒心が強いそうです。地域差があるということでしょうか。
いろいろ調べた結果、フライトディスタンスの変動要因には、鳥の種類、体長、環境、地域、群れの大きさなどがあるようですが、年齢、つまり成鳥・若鳥による差異については研究されていないようです。サンプルを取るのが難しいからでしょうが、誰か研究してくれないかな?
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2 コメント

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Unknown (guitarbird)
2016-10-02 14:12:16
こんにちわ
ご紹介いただきありがとうございます
キジバトですがほんとに東京に行くと近くに寄れると感じています。
昨日たまたま撮影しようとしたのですが10mでもう飛んで逃げます。
キジバトに限らずメジロやシジュウカラなど東京は札幌より近いと感じますが、自然が少ないのでより人に近寄る必要性があるのかなと思っています。
このテーマはほんとうに興味深いですね。
個人的にはシメがとてもディスタンスが長いと感じています。
研究費出してくれれば私が研究したいのですが(笑)。
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キジバトだけでなく (fagus06)
2016-10-03 07:49:14
メジロやシジュウカラも同じ傾向なんですね。
いくつかの研究でも、都心部の方が郊外よりも距離は近いという結果が出ているようです。
ネットで flight distance bird で検索すると海外での研究も出てきました。そこでも同様の結果がでているようでした。
私は英語がいまいちなので詳しくは読み取れなかったのですが、ギタバさん英語OKですから調べてみてください。
こちらではカケスのディスタンスが長くて、私はまだカメラに収めていません。そちらでは時々ミヤマカケスをアップされているので、近いのかな~と思っています。
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