樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

「正直の神様」の嘘

2012年04月19日 | 野鳥
毎年1月25日に大阪の天満宮で「鷽替(うそかえ)神事」という奇妙な行事が行われます。
参拝客がウソという鳥の絵札が入ったお守りをもらった後、「替えましょう、替えましょう、嘘を真に替えましょう」と言いながら、お互いに交換し合います。
去年1年間についた嘘を、ウソに託して罪滅ぼしするわけです。交換した回数が多いほどご利益があるとされています。


本殿の前でお守りを交換し合う参拝客

交換会が終わり、お守りの封を開けて中に金色の鷽鳥が入っていると賞品が進呈されるという仕組み。似たような行事は各地の天満宮で催されているようで、絵札ではなく木彫りの鷽鳥を使う神社もあります。
大阪天満宮の説明によると、天神さん(=菅原道真公)は「学問の神様」であると同時に「正直の神様」でもあり、鷽鳥が天神さんの愛した梅の木に縁が深いために始まった神事だそうです。


鷽鳥神事のお守り。左の袋の中に右の鷽鳥が入っています

しかし、この「鷽替神事」には3つの嘘があります。
まず、ウソという鳥名の語源は「嘘」ではありません。ウソは「うそ吹く」という言葉があるように「口笛」の古語で、「フィー、フィー」と口笛のような声で鳴くことに由来します。
2つめの嘘は、お守りの絵。下の写真の実物と比べると、シルエットは似ていますが、色が全く違います。絵札のような鳥は、少なくとも日本にはいないです。



3つめは、梅の木に縁があるという嘘。ウソは桜の芽を食べる習性があって、各地の桜守りには嫌われる存在。桜には縁がありますが、梅には特に縁はないです。
目くじら立てるつもりはないですが、「正直の神様」の神事がこんな嘘だらけでいいのでしょうかね~(笑)。



なお、私は今シーズンはウソの動画や写真が撮れなかったので、いつもコメントをくださる札幌のguitarbirdさんにお借りしました。2枚目の写真は庭で撮影されたそうです。庭にウソが来るなんて、うらやましいですね。

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8 コメント

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庭にウソが来る (bulbul)
2012-04-19 07:46:38
 嘘だろうぉ、
あー、言っちゃいました !!
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この鷽という字 (scops)
2012-04-19 10:41:31
調べてみると、これはウグイスの古い字のようです。漢字は「鶯」が有名ですが、「鴬」とも書くようです。
「鷽」の冠は「学」の古い書き方ですから、「鷽」=「鴬」と考えていいんじゃないでしょうか。
ウグイスと天神さんなら縁は深いですね。どういう変遷で「うそどり」になったのかはわかりませんが、その辺も面白そう。
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bubulさんへ (fagus06)
2012-04-20 08:21:20
おやじギャグ、ありがとうございました(笑)。
そうですよね、こちらでは考えられないでしょう、庭にウソが来るなんて。
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scopsさんへ (fagus06)
2012-04-20 08:27:24
わざわざ調べていただいて、ありがとうございます。
私も、この字は「鶯」に似ているなあと思っていました。「ウソ」を「鷽」と書くのは知りませんでした。
お守りに入っている鳥の絵は、シルエットはウソで、上面はウグイスみたいですね。
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Unknown (guitarbird)
2012-04-20 08:40:32
おはようございます
ご紹介いただきありがとうございます。
今年は庭にウソは来なかったのが残念でした。
昔から伝わるこうしたことは人間の思い過ごしだったり人間の都合で解釈されて伝わってきたのでしょうけど、これからの時代は嘘であることが分かった上で伝わり広まってゆくなら、昔の人がそこに反映させた思いを感じとれてそれはそれで楽しいかなと私は思います。
ちなみに今は札幌から離れた山の中にいますがウソが囀りしていますよ(笑)。
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笠置寺のウソ鳥 (ヒカルゲンジ)
2012-04-20 21:26:21
先日行った笠置寺の正月堂に次のようなパンフレットが置いてありました。「桜の名所笠置山のソメイヨシノが近年花芽をウソ鳥に食い荒らされていますが、保護鳥のため駆除できません。このため花芽の遅い吉野桜(ヤマザクラのこと?)に変えて植樹しています。もう少しお待ちください。」はたして効果があるの?!
楽しみにしています。
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guitarbirdさんへ (fagus06)
2012-04-21 07:57:32
そうですか、今年は来ませんでしたか。
伝統的な風習は、おっしゃるように、いろんな誤解や思い込みの積み重ねで成り立っているのでしょうね。
日本語には母音が5つしかないので、ウソ=嘘というような同音異義語が発生しやすいようで、他にも、おめでたい席に鯛を飾るという風習も語呂合わせの文化ですね。
ウソのさえずり、聴きたいです。いいな~
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ヒカルゲンジさんへ (fagus06)
2012-04-21 08:04:40
ウソの被害が実際に近くで出ているんですね。
吉野桜はヤマザクラのことですが、ソメイヨシノよりも花芽が遅いのかどうかは知りません。
もっと遅いのは、いわゆる里桜と言われる栽培品種でしょう。大阪の造幣局の通り抜けは、今頃がピークですが、ぜんぶ栽培品種のはずです。
でも、山寺で栽培品種の桜を植えても風情に欠けるでしょうから、ヤマザクラに植え替えられたのかも知れませんね。
お寺さんはウソを恨んでいるでしょうね。
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