樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

コロナと鳥

2021年07月01日 | 野鳥
コロナ禍で探鳥会中止が続くなどバードウォッチングが大きく変容していますが、鳥にもいろいろ影響が出ているようです。
富山県鳥獣保護センターでは、釣り針や釣り糸が原因で持ち込まれる野鳥が、過去5年間は年2~3件だったのに昨年度は半年で5件になったとのこと。3密を避けるレジャーとして釣り人が増え、野鳥に釣り針や釣り糸がからむ事故が増えたからのようです。
また、北海道の知床五湖では昨年コロナで遊歩道が閉まって人が全く入らなかったために、遊歩道のすぐ横の木にアカゲラが営巣したそうで、ガイドによると「通常はありえない」そうです。
コロナが鳥の生態を変えたことを科学的に研究した報告も発表されています。米国テネシー大学の行動生態学のグループが科学誌『サイエンス』に、サンフランシスコでのロックダウンによって鳥の囀りが変化したという研究結果を掲載しました。
同地では昨年4月~5月にロックダウンが行われ、人間の活動による騒音が激減して急に静かになりました。そんな環境の変化に合わせて、ホオジロの仲間であるミヤマシトドが囀り方を変えたと言うのです。


ミヤマシトド(Public Domain)

研究グループはこれまでの野外調査で、騒がしい都市部の鳥は大きい声で鳴くために囀りの質を犠牲にしているというデータを得ていました。その騒音が消えて大きな声で鳴く必要がなくなったので、多様な鳴き声で囀るようになったそうです。研究者は次のように語っています。
「囀りの質を大きく向上させて魅力的に鳴く雄を何羽か見ることができました。それは農村部でよく聞く同種の囀りと同じくらい質の高いものでした。そして、周波数の幅が大きく広がったので、これまでの倍の距離のところまで囀りを届けられるようになり、多くの情報を詰め込むこともできています」。
一方、スペインではロックダウンと鳥の関係を調査しています。昨年3月14日に緊急事態を宣言してロックダウンに入った翌日、ある団体が「私は家にいます」というプロジェクトを始動。カタルーニャ地方のバードウォッチャーから鳥の記録を収集し、ロックダウンによる都市環境での鳥の行動変化を調査したのです。
その結果、16種の鳥のうち12種はこれまでと有意な差がなかったものの、カワラバト、シラコバト、オキナインコの3種は出現確率が増え、ゴシキヒワは減少したそうです(スペインではオキナインコは外来種ですが、カワラバトもシラコバトも自然分布)。同様の調査はイギリスとイタリアでも実施されています。


ゴシキヒワ(Public Domain)

それにしても、ロックダウンの翌日にこういう調査を始めるとは、スペインのバードウォッチャーは根性が入ってますね~。日本では多分こんな調査はやってないでしょう。
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2 コメント

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Unknown (kazuyoo60)
2021-07-01 16:26:33
>囀り方を変えたと言うのです
まわりまわって、多方面に影響があるのですね~。
>ロックダウンの翌日にこういう調査を始めるとは
まずは呼びかけた人が凄い、賛同した人もすごいと思いました。
kazuyoo60様 (fagus06)
2021-07-02 08:12:48
人間の世界でも、まわりまわって想像もできないようなところに影響がでているんでしょうね。
スペインもイギリスもイタリアも昨年はものすごい感染爆発でしたよね。あの騒動の中でこういうことができるというのは、自然とか動物に対する視線が日本とは別のレベルにあるということでしょうね。

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