樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鳥の触覚

2022年04月14日 | 野鳥
先日、鳥の行動生態学の本を読んでいて、以前から抱いていた疑問が解けました。その疑問とは、シギが泥の中に頻繁に嘴を刺し込むのはなぜか?というもの。
下の動画は10年ほど前に近くの干拓地で撮影したオグロシギとハマシギですが、動画をコマ落としで調べるとオグロシギは1秒間に10~12回もの頻度で嘴を刺し込んでいます。その度に餌をゲットしているわけではないのに、何のためにそんなに忙しく嘴を動かすのでしょう?



その本によると、鳥の触覚は主に嘴と足に限定されていて、特にシギやカモなどは嘴の先端に神経が集中しているとのこと。「シギ類は、敏感な嘴の先を虫や軟体動物などの獲物にじかに触れさせるか、泥の圧力の変化や振動を感知して獲物を捕る」とした上で、次のようなメカニズムを説明します。
①シギが泥の中に嘴を突き刺す→②泥の間のわずかな水たまりに圧力波が発生する→③それが二枚貝のような個体にぶつかると「圧力拡散」が生じる→④それを嘴の先端で感知する。
これを頻繁に繰り返すことで、脳の中で泥の中に隠れた獲物の立体画像を合成しているらしいのです。なるほど! 私たちは体内の異常を調べるためにMRIとかCTで検査しますが、鳥は嘴の感触を蓄積することで泥の中のどこにどんな餌があるかを立体画像として把握しているわけです。
もう一つ、鳥の触覚として面白いのは、繁殖期になると抱卵のために腹部の羽毛が抜け落ちて皮膚が裸出し、その触覚で卵の温度管理をするところ。卵の温度を感知し、冷えれば血流量を増やして暖め、熱ければ抱卵姿勢を変えて冷やすそうです。
鳥の行動生態学の本は、難しい記述もありますが、こういう謎を解いてくれるので、読んでいるとワクワクします。
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2 コメント

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Unknown (kazuyoo60)
2022-04-14 14:00:16
生きるためですね。獲物を嘴で知覚しているのですね。進化の過程で必要な能力は研ぎ澄まされて、うまく出来ているのだなと思います。卵を温めたり、冷やしたりもなのですね。面倒見の良いことです。
嘴を傷めたら死活問題です。タシギ?と思うのには出会ったことがあります。
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kazuyoo60様 (fagus06)
2022-04-15 09:02:16
嘴の長い鳥に出会われたのですね。多分、タシギだと思います。最も普通に見られる中型のシギですから。
確かに、嘴を傷めたら、自分で餌が取れないですから、生きていくのが難しいでしょうね。人間の場合は身体に障害ができればさまざまな補助具がありますが、野生の鳥にはないですから厳しいですね。
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