樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

文化財は国産材で

2007年12月26日 | 木造建築
前回の「宇治人形展」は妙心寺系の花園大学でしたが、今度は西本願寺系の龍谷大学で学術講演会を聴講してきました。テーマは「寺社建築と日本の森の復興~木の文化の継承に向けて~」。

       
       (龍谷大学は2009年に創立370周年を迎える歴史ある大学)

その中で私が初めて知ったのは、国宝や重要文化財に指定されている寺社は国産材を使って修理するように決められていること。歴史的な価値を継承するという意味から、同じ樹種を使って、同じ技術で修理するらしいです。
それ以外の寺社には入手しやすい外国産の材木が使われています。最も多いのがカナダの太平洋岸に生育するベイヒバで全体の34%。国産のヒノキ17%やヒバ(=アスナロ)16%の倍です。トータルでも外材と国産材が半々くらい。
その話を聞いて、縄文時代の三内丸山遺跡を思い出しました。現地には当時の建築物が再現してありますが、柱に使う直径1m高さ20mのクリ材(6本)が国内では調達できなかったのでロシアから輸入したそうです。
一方、国宝や重文の寺社の修理で使う国産材の樹種はヒノキ27%、スギ21%、マツ19%。ところが、それを供給する人工林のヒノキは樹齢50年未満がほとんどで、90年以上のものはわずか0.8%。もちろん天然林も残っていますが、柱などに使う樹齢数百年の材は調達が難しいようです。

       
            (うちの近くにあるヒノキの植林)

「文化財は国産材で修理する」という話を聞いたとき、「あれ?奈良の薬師寺の柱は確かタイワンヒノキだったはず」と疑問が湧きましたが、そのときは「台湾は戦争中は日本の領土だった」という拡大解釈でクリアしたそうです。そうでもしないとヒノキの大径木が入手できなかったということでしょう。そのタイワンヒノキも現在は輸出禁止です。
龍谷大学の本家である西本願寺も現在、御影堂(みえいどう)の大修復の真っ最中で、10年がかりの工事が来年ようやく終ろうとしています。世界文化遺産でもあり重要文化財ですから、木材はすべて国産材を調達したのでしょう。文化財を遺すというのは大変なことなんですね。
ちなみに、龍谷大学のキャンパスにも、上の写真の本館も含めて4棟の洋館の重要文化財があります。
コメント (2)
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