樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

最後の一葉

2007年12月19日 | 木と作家
今の職業を志した頃、英文和訳が効果的な文章上達法であると知って、辞書片手に英語の小説を訳したことがあります。テキストはアメリカの作家、オー・ヘンリーの短編集でした。
その作品の中で最も有名なのは『最後の一葉』でしょう。肺炎を患った女性が窓から見える木の葉を数えながら、「最後の1枚が散ったら私の命も終る」と思っている。それを知った老画家が徹夜して絵で葉を描き加え、嵐でも落ちなかったその葉を見て女性が元気になる。逆に老画家は肺炎で死ぬ、というストーリーです。
仕事部屋から見える庭のモクレンの葉がほとんど散っているのを見てこの小説を思い出し、「何の樹の葉だったかな?」と気になって、仕事そっちのけで調べました。
記憶ではモクレンのような立ち木でしたが、改めて読み直すとツタでした。原文にあるivy vineは「ツタのつる」という意味のようです。病床の窓から見えるレンガ造りの建物にツタがからみついているという設定でした。

       
   (近所のお寺の駐車場の壁にはりついたツタ。ほとんど落葉していました)

ツタはブドウ科の樹木。時々、壁が見えないくらいツタがからまっている洋館があります。また、アメリカのアイビーリーグもこのツタに由来します。そんなことから何となく洋風のイメージがありますが、日本でも平安時代にはツタの樹液を煮詰めて甘蔓(あまづら)という甘味料を作ったそうです。
今頃の季節、残り少ない木の葉を見ると寂しさを感じますが、オー・ヘンリーもそんなところから人の命にオーバーラップさせてこの作品を書いたのでしょう。

       
        (ブドウみたいな実が成っていました。とても渋いそうです)

ひと昔前に大ブレークした『葉っぱのフレディ』という童話も同じようなモチーフのようです。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする