真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。




 「どすけべ夫婦 交換セックス」(2000/製作:旦々舎/配給:新東宝映画/監督:的場ちせ/脚本:山邦紀/企画:福俵満/撮影:小山田勝治・阿部一孝/照明:上妻敏厚・河内大輔/編集:襯侫ルム・クラフト/音楽:中空龍/助監督:加藤義一・田中康文・椎名健大/制作:鈴木静夫/Special Thanks:松岡誠/出演:時任歩・風間今日子・鏡麗子・平賀勘一・柳東史・石川雄也・なかみつせいじ)。出演者中、柳東史がポスターでは何故か久保和明に。どうしたらさうなるのか。
 平沼佑美(時任)は最近距離の遠い公務員の夫・起一(なかみつ)が、頻りに風俗サイトを覗いてゐるらしき様子に悩む。履歴からか、泡風呂「アクシズ」の公式を開いてみた佑美は、そこで鏡麗子が石川雄也と絡むエロ画像に心を乱され、自身も、石川雄也に抱かれる妄想に囚はれる。そんな佑美に、友人の石井マキ(風間)は何事もないかのやうに結構な告白をする。泡が弾けた経済的苦境の余波で、不動産業を営むマキの夫・菊夫(平賀)は五年前よりインポテンツとなり、以来マキは、若い間男との恣な逢瀬を楽しんでゐるといふのだ。あつけらかんとした風間今日子の空気感が、軽やかに飛躍の大きなシークエンスを器用に着地させる。自身の火遊びは兎も角、不能を他人に暴露された菊夫は堪つたものではないが。諸方面に悪びれることもなく、マキは佑美に送つたメールに間男・慎二郎(柳)との情事の模様を収めた動画を添付し、友人の焦燥に無邪気に火に油を注ぐ。風間今日子も風間今日子だが、柳東史の、ライトで細身マッシブなセフレぶりも絶品。意を決した佑美が直接夫を問ひ質し、半年ぶりに義理で抱かれるも埒は明かない中、起一が近所のマンションに越して来たとかいふ、派手派手しい女・江里子(鏡)を伴ひ帰宅する。翌日、江里子は「アクシズ」の名刺を持参し素性を自ら明かした上で、佑美を改めて急襲。江里子いはく、起一は確かに「アクシズ」の常連ではあるが、売れつ子の自分を指名するのは難しく、面識はないとのこと。
 何はともあれ、裸映画としての充実度は圧倒的。硬質の美貌がアンニュイな役柄に映え、主演の重責を堂々と担ふ時任歩に、旦々舎作最強の五番打者・風間今日子。更に、頓珍漢な攻撃力を誇るセクシャル・サイボーグ鏡麗子を擁した布陣は頑丈過ぎるほどの鉄板。俳優部も濡れ場要員まで含め文字通り役者が揃ひ、ただでさへ旦々舎超一流の、煽情性の重量感はなほさら尋常ではない。対して物語の落とし処は、浜野佐知の別名義である的場ちせ作といふ点を鑑みるにつけ、随分と穏当な印象も強い。どすけべな夫婦が正しくセックスを交換する、エクストリームな一幕が順当にクライマックスに設けられはするものの、主体は佑美とマキとはいへあくまでそれぞれ起一・菊夫との関係の継続なり尊重を第一義に置く、一対一の結婚制度自体には検討を加へることもなく容認する結論は、苛烈なるラディカリストの浜野佐知にしては素直に過ぎるあるいは平板ではないのかと、肩透かしに思へなくもない。そもそも、放埓な乱交の末にもあくまで当人達の心がけ次第により、核を成す婚姻関係自体は平常に保たれ得るものであるとするならば、些か楽観主義の底も抜けるとの誹りを免れ得まい。尤も最終的には、適宜挿み込まれるイマジン乃至はナイトメアを通し、次第に佑美の淫蕩で開放された別人格であるかのやうにも取り扱はれる江里子が「もつと自由になりたくないの?」と本質的な揺さぶりをかけるラスト・ショットが、出し抜けともいへ幻想的に叩き込まれる。尤も尤も、詰まるところは斯様に瑣末な野暮をあれやこれやと詮索する足りない頭を、腰から下が黙れ唐変木と制すべき、ひとまづは轟然と撃ち抜かれる桃色の破壊力に、身も心も曝すのが兎にも角にも吉の一作といへよう。

 例によつて、今回は旧題ママによる二度目の新版公開で、今作は2003年に既に一度、「どすけべ2組の夫婦」なる新題で旧作改題されてもゐる。


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コメント
 
 
 
覚えてない… (ヤマザキ)
2011-04-28 04:28:14
これまた見事に覚えてない映画だけれど、途中までしか脚本やってないかもしれない。的場ちせに求められるのは純エロだから変な理屈は要らないと監督に言われ、後はお任せになることが結構あった。
役者の名前が入れ替わっていたのは改題ポスターのせいですね。その映画のスチールじゃない写真がポスターに使われていたりすることもあった。自社作品の同じ女優なら構わないだろうというルーズな考えだったが、今でも同じかは分からない。
 
 
 
>覚えてない… (ドロップアウト@管理人)
2011-04-28 21:50:36
 完成披露試写お疲れ様でした。

>改題ポスターのせい

 図版は案外気にしないのですが、
 名義に関しては新東宝にせよエクセスにせよ、本当にフリーダムです。

 それと、全く話は変りますが。
 ツイッター上では敢て自重しましたが、

>「私たちは監督を応援している。作品ではない」

 かういふ立ち位置には、私は最大限積極的に与しません。
 さういふ態度は観客として如何なものかと首を傾げかけたところで、
 そもそも、彼女達は観客であらうとはしてをられぬにさうゐないことに気付きました。
 
 
 
立ち位置の問題 (ヤマザキ)
2011-04-29 08:49:55
ご指摘のように、彼女たちは観客ではなく、運動として取り組んだのだと思う。とてもわたしにはできないことであるが。
 
 
 
>立ち位置の問題 (ドロップアウト@管理人)
2011-04-29 17:08:43
 とても公言は出来ぬでせうが、監督ポジションとしては、
 葱を背負つた鴨、といふ認識で宜しいのではないでせうか。
 
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