真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ノーパン介護 白衣の下はスッポンポン」(2000『ノーパン白衣 濡れた下腹部』の2008年旧作改題版/製作:旦々舎/配給:新東宝映画/監督:的場ちせ/脚本:山邦紀/企画:福俵満/撮影:下元哲・アライタケシ・ニカイドウ悠紀/照明:代田橋男・たかだたかしげ/音楽:中空龍/助監督:松岡誠・加藤義一・福間智子/制作:鈴木静夫/出演:佐々木麻由子・望月ねね・里見瑤子・なかみつせいじ・吉田祐健・中村和彦・柳東史)。又ぞろ性懲りもなく、今回新版ポスターでは脚本が山_邦紀に。
 河原(なかみつ)が院長を務める病院に勤務する看護婦の桃園里緒(佐々木)は、同僚の春野若菜(望月)・大空みどり(里見)を引き連れ病院を退職、在宅療養する患者の為の介護サービスを提供する「エンゼル派遣センター」を開業する。里緒が糖尿病を患ひ勃起機能を失ふことに恐れを抱く田村(吉田)の、若菜は足を骨折した水上(中村)のセクハラに煩はされる一方、里緒と不倫関係にもあつた河原は、里緒らが病院を去つたことも、入院患者を病院から自宅へと奪ひ取つたことも面白くない。河原はエンゼル派遣センターに攻撃を加へるべく、若菜に対する懐柔工作を巡らせる。
 柳東史はみどりの担当患者で、女性恐怖症をこじらせた引きこもり・誠。外に出られない癖に、その金髪は何処で染めたのか。誠の去就を軸に正攻法のエモーションで物語を牽引しつつ、最終的には里緒が患者の体だけではなく心のケアも!と明後日に開眼。ちやつかり別料金を徴収しての菊門に尺八、当然本番もアリアリの今でいふならば絶賛違法のデリヘル看護にエンゼル派遣センターの業務形態をチェンジする、などといふのはあまりにもゴキゲンで尻子玉も抜かれさうになる。いつてみれば派遣するのも配達するのも、来るのが人であるならば用語法の問題でしかない、と片付けてしまへるのやも知れぬが。田村の住居が浜野佐知(=的場ちせ)の自宅―表門を全開にすると、結構印象も変る―であることや、みどりの膝枕に慰められた誠が、ポツリとスカル・ファック願望をその場限りで漏らしてみたりする形式的な細部の他には、頑強な攻撃的フェミニズムも珍しく鳴りを潜め、浜野佐知平素の重量級の馬力は感じさせない。勿論、娯楽映画としての水準は十全にクリアされてはあり、よくいへばウェルメイドともいへ、他方からはらしくない一作ともいへよう。あくまで主役は女とはいへ里緒を始め三人共の、自らが求めるものを追求することの別にないままに、偏に患者の方を向いて固定された視点に、全篇が支配されてあることが大きいか。無理も承知の上いふが女性患者を一人配することが出来てゐれば、又全く違つた形に展開し得てゐたのかも知れない。
 オーラスを締め括る里緒のモノローグ、「私達は、もう白衣の天使ではない」、「堕ちた堕天使、だから、明日から又生きて行ける」。佐々木麻由子の台詞と思へば形になつてゐなくもないが、少々カッコつけ過ぎでもあるまいか。所詮は着地点はノーパンである、馬鹿馬鹿しさをそのままに突き抜けた方が、いつそ潔かつたであらう。それともうひとつ気になつたのは、深夜の公園で密談を交すみどりと若菜の背後に佇む、誠は気配を消し過ぎだ。あれは一歩間違ふと、その存在に気付かない観客も続出するでのではないか。

 ところで今作、2003年に既に一度、「白衣の中はノーパン」といふ、実に投げやりな新題で新版公開されてゐる。“白衣の下はスッポンポン”などといふ二度目の新題もどうなのよ、といふ話でしかない訳でもあるのだが。“スッポンポン”、この期に清々しく昭和の香りを漂はせる単語だ、“スッポンポン”。


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