真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女高生 快感」(昭和54/製作:中村プロダクション/配給:新東宝映画/監督:中村幻児/脚本:白鳥洋一/撮影:久我剛/照明:石部肇/助監督:平川弘喜/編集:竹村編集室/音楽:田所史郎/記録:前田侑子/演出助手:岡孝通/車輌:富士映画/効果:中野忍/録音:ニューメグロスタジオ/現像:ハイラボセンター/出演:深沢ゆみ・杉佳代子・笹木ルミ・高島亜美・巽健二・鶴岡隆史・矢野健作・北山浩一・山下京子・宮本ミサ・依田満夫・中里義一・武藤樹一郎)。
 赤い砂時計から左にパンすると、セーラー服の少女の細い指先が砂時計を引つ繰り返す。的確な劇伴の力も借り、メランコリックな開巻。今度は上にティルトすると、ジミー土田と西藤尚を足して二で割つたやうな主演女優。中沢弘美(深沢)が黄昏がれてゐる放課後の教室に、友達のグー子(高島)が忘れ物を取りに来る。何だその徒名は、授業中居眠りばかりしてゐるのか?二人で行つたディスコの話を軽く挿み、グー子の弘美帰ろでタイトル・イン。置き去られた砂時計を、回収してタイトル・アウト、ここまでは抜群に洒落てたんだけど。
 弘美は初めから私生児として娘を文字通り女手ひとつで育てる、翻訳家の母(杉)の事務所にお小遣ひのおねだり。笹木ルミは、劇中仕事をしてゐる風には特にも何も全然見えない、中沢女史の秘書・和子。改めて帰途につく弘美に、単車に跨つた不良男(以下単車/武藤樹一郎)が接触。グー子とディスコに行つた夜、弘美は手洗ひを出て来たところ襲はれた単車の指で破瓜を散らせてゐた。一方和子の部屋にも、単車は忍び込む。深沢女史の下で働いて三年、和子には―今なほ―無理強ひされる百合で、流産した過去があつた。それで雇用込みで関係が継続してゐる無理は一旦さて措き、娘込みの中沢女史に対する復讐のために、和子が単車を雇つたものだつた。
 残る配役が問題、ポスターに名前が載るのは、ビリング通りの女優部四本柱とポスター順に鶴岡隆史・北山浩一・矢野健作・武藤樹一郎。高島亜美(後の高鳥亜美)の濡れ場を介錯するグー子彼氏が鶴岡隆史なのか、ビリングでは鶴岡隆史に先行する巽健二なのかが手も足も出せずに特定不能。更には何れにせよ七つ名前を残しつつ、その他の登場人物が抜かれるどころか見切れる程度のディスコ要員と、弘美とグー子が会話を交す教室の背景に、不自然な体勢で背中を見せる同級生一人くらゐしか見当たらない。話を戻すと武藤樹一郎も武藤樹一郎で後年とは別人のやうに痩せてゐて、何処に出て来たのか最後まで判らず、結局「強制わいせつ姉妹」(1994/監督・脚本:小林悟/主演:工藤ひとみ・吉行由美)にもう一度目を通して漸く確認した次第。
 全十三作と結構な量産態勢の昭和54年第四作にて、ひとまづ対中村幻児最終戦。いはゆる目力が、カットによつては寧ろあり過ぎてよくいへば業の深さ、端的にはオッカナさすら感じさせる深沢ゆみの佇まひは確かに強い映画的叙情を立ち込めさせるものの、弘美の心情の動きなり揺らぎ具合が如何せん量り辛いのが致命傷。そもそも主演女優の絡みらしい絡みを最後の最後まで温存―しかも見せる形はオーバーラップ―した上で、要は弘美がロスト・バージンするだけの物語を無闇に勿体つけて、あるいは行間を矢鱈と広げて描く始終には、量産型娯楽映画なんだからさあといふツッコミを禁じ難い。説明過多もそれはそれで不格好にせよ、もう少しは判り易く明示的であるべきではなからうか。ノーヘルのタンデムで、弘美が辿り着いた砂浜。海を見て弘美が何を思ふのかが、銘々の勝手な思ひつきにでも委ねるのでなければ本当にちんぷんかんぷんなのは、少々画が強いにせよ流石にシークエンスとして満足に成立し得まい。ついででオーラスのロングに、通過するジョギング男は何某かの狙ひがあるのか単なる間抜けか無頓着なバッド・ラックなのか、個人的には後者に映つた。とかく掴み処があるやうで最終的にはなさげな始終の中、目もとい耳についたのは、弘美が単車に処女を半分失つた夜を想起しながら自慰に耽る件では佐井好子の「二十才になれば」。一応締めの弘美と単車の濡れ場では中島みゆきの「海鳴り」、二曲を堂々と使用してみせる時代の大らかさ。ところでさうなると、現在でもDVDが発売されてゐる「人妻・OL・女子学生 狙つて襲ふ」に関しては、ヒカシューサイドに正式に話を通してるのかな(´・ω・`)


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