真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「秘書のお姉さん ‐喰はへ込んだら、離さない!‐」(1992『ザ・本番 性感帯秘書』の1998年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:胡蝶の夢/撮影:河中金美・田中譲二・植田中/照明:秋山和夫・宮田倫史/音楽:藪中博章/編集:《有》フィルム・クラフト/助監督:森山茂雄/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学工業/出演:小林愛美・倉田まどか・麻生絵美・栗原良・久須美欽一・芳田正浩・平賀勘一)。何者の変名なのか判らない脚本の胡蝶の夢が、ポスターには胡蝶之夢。
 机の下で尺八を吹く尻開巻、どんな開巻だ、例によつてそんなファースト・カットなのだが。男が洩らす呻き声を聞くに、吹かれてゐるのは栗原良?男を見上げる女の目元を抜き、カメラが引くと矢張り栗原良、俺は一体何処に喰ひついてゐるのか。秘書派遣会社「あけぼのキャリアサービス」社長(栗原)は電話で同社所属の神島か上島か神嶋k(以下略)瑞穂に、佐伯工業での勤務を指示。栗原社長が果てるとヌルい劇伴起動、実はこの人もあけぼのの在籍秘書・ミヨコ(ビリング推定で倉田まどか)が口の端から白濁を漏らすストップ・モーションにタイトル・イン。多分二番手に飛び込まれる奇襲に、正直後々混乱する。
 自称“二十四時間働くプロのセクレタリー”との瑞穂(小林)が改めて颯爽と出撃、向かつた先は、何時もの東映化学工業(a.k.a.東映ラボ・テック)の佐伯工業株式会社。下卑た視線で衣服の下の裸を透視する佐伯(久須美)に対し、瑞穂はこちらも手当てと早速尺八。その夜の歓迎会会場の料亭に模した旧旦々舎では、平然と本番ではないけれども本戦を交へる。佐伯から性感帯秘書の噂を聞きつけた木島産業社長(芳田)は、そんな旨い話があるのかと訝しみながらも栗良に電話、木島産業にはミヨコが派遣されることに。ところが業務もそこそこに木島の一物を触らされたミヨコは、脊髄反射の平手打ちとともに完拒否。帰社したミヨコは、あけぼのの誰かがよからぬ行為に及んでゐるのではないかと警戒心を募らせる。大体が、お前らも社内でヤることヤッてんぢやねえかといふ至極全うなツッコミ処に関しては、あへてスルーの方向で。
 出演者残り、パキパキッとした美貌は申し分ないものの、痩せ過ぎなのが逆に惜しい消去法で麻生絵美は、佐伯の細君。平賀勘一は、業界の全国会議に秘書を連れて行きたい要は見栄であけぼのから瑞穂を招く、大石商事社長。何気に、男優部が全員社長といふのは案外珍しい配役なのかも知れない。
 正体不明の脚本家が煙に巻かれた展開を紡ぐ、浜野佐知1992年第七作。瑞穂と大石の情事を盗撮したミヨコの告発により、あけぼのキャリアサービスは人材派遣の名を借りたホテトルと週刊誌も通り越しポリス沙汰。全てを失つた栗原社長の下から、手の平返しのミヨコも去る。そこから、チカコは不承不承の佐伯との夫婦生活に御満悦。ミヨコは、ミヨコに最初に頬を張られた際、奴隷属性に目覚めた木島に鞍替へし女王様に再就職。そのまゝだとミヨコ一人勝ちといふ一体誰がヒロインなのかよく判らないモヤモヤした様相を呈する中、そもそも元凶たる瑞穂が壊滅したあけぼのに飛び込むと、何と栗原社長はスーサイド寸前。慌てて制止しようとしたところ栗良の勃起を認めた瑞穂が、「社長こんなになつてるのに死んぢやいけません」と突入する、しかも一本調子の騎乗位で逃げる締めの濡れ場は幾ら何でも底が抜けるにもほどがある。女の性に対する主体性もへつたくれもあつたものではない、素頓狂な好色女が恣に喰ひ散らかすばかりのルーズな一篇。喜悦する小林愛美のストップ・モーションに、下方から競り上がる“FIN”マークが画面中央にておとなしく静止すればいいものを、何故かスルッと軽く左にスライドするのがある意味斬新。締まりのない物語に、据わりの悪いラスト・ショット。さう思へばそれはそれでそれとしてそれなりに、オネストな完成形ともいへるのであらうか。


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