真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「Eカップ女子高戦士 ブルマームーン」(1993/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:武田りつ子)。
 往来を歩く女子高生(武田)を、車の中から抜く。カメラがりつ子(大絶賛仮名)の正面に回り込むカット挿んで、多分兄弟と思しき、車を回すのは平本一穂とジャンク斎藤。公園ぽく整備された林に入るのは、どうやら単なる近道の類であつたらしく、再び往来に出たりつ子を平一とジャン斎が襲撃。冬服セーラー服―りつ子が着てゐるのは長袖の夏服―の飾られた、旧旦々舎の煉瓦部屋に拉致る。
 今回それなり以上のヒットを飛ばしたのか、「潮吹き女子校戦士 ブルマームーンS 星野かおり」(1994/監督:柴原光)、「デビュー杉浦あゆみ 18才 ブルマームーンXX」(1995/監督:榎雄二郎)と、現状確認可能な限りで少なくとも三本は制作された、「ブルマームーン」シリーズの栄えある第一作。それにつ、けても。セーラーならぬブルマームーン、本家の連載―と二ヶ月後のテレビアニメ放送―開始が前年。ブームの真只中、冷静に考へると怖気づき二の足を踏んでゐてもおかしくはない、火中の栗を果敢に拾ひに行く胆力が清々しい。
 ジャン斎いはく、二人がりつ子を攫つた目的は“可愛い娘と着せ替へごつこ”。そのまゝりつ子が代る代るあれこれ犯される一方的かつ一本調子の展開は、ロゴを十全にあつらへたブルマームーン的意匠にも、浜野佐知が今なほ、否、最期まで頑強に咆哮し続けるにさうゐない苛烈な女性主義からも一旦遠い。つ、いでに。実は武田りつ子が女学生には煌びやかに映らない地味に障壁の高いキャスティングに関しては、デローンと悩ましいオッパイと、りつ子がジャン斎から着させられる、スクール水着のエモーショナルなエロさに免じて等閑視するべきだらう。
 さうは、いへ。タイトルから脊髄で折り返して容易に想起し得る、いはゆる“美少女戦士”実写版的な特撮はおろか、満足なコスプレ要素すら凡そ皆無。折角“ブルマームーン”なる画期的にグラマラスな意匠に辿り着いておきながら、如何にもな扮装で大見得切つてみせる、一撃必殺絶好のショットを設けない。そもそも浜野佐知にさういつた、雑に括るとオタク的な外連に対する意識の有無から甚だ怪しい辺りには、大いなる、激越な心残りも否み難い。尤も、嬲られ尽くした挙句往来に放棄されたりつ子が、木々に囲まれ何となく回復。したかと思ふと、夜の旧旦をほてほて再訪。兄弟を個別撃破する逆夜這ひを仕掛けたのち、平一はセーラー服を着せ緊縛、ジャン斎は女子の体操着を着せられ檻の中。二人を拘束した上で、颯爽と一撃もとい二撃離脱。旦々舎らしい、ラディカル通り越したアグレッシブ・フェミニズム―あるいはブルータル・フェミニズム―ならば吹き荒れる一作。と、いふか。劇中気配さへ一切窺はせない、旧旦に兄弟以外の同居人がゐなかつた場合、離れて身動きを封じられたこの二人、そのうち確実に息するのやめるよね。


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