真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「はしたない妻の蜜壺」(1995『小田かおる 貴婦人O嬢の悦楽』の2004年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志・便田ああす/照明:秋山和夫・新井豊/助監督:森満康巳・佐藤吏/音楽:藪中博章/制作:鈴木静夫/メイク:斎藤秀子/出演:小田かおる・桃井良子・吉行由実・平賀勘一・杉本まこと・リョウ)。
 何処へと向ふのか、資産家令嬢の蜂巣真那子(小田)が独り電車の車中に揺られる。夫の悟郎(平賀)は―真那子の―父親の死後、先代からのお抱へ税理士・日下ニ三男(杉本)の制止も聞かず、積極的な投資に明け暮れてゐた。真那子には子供がなく、悟郎は行きつけのクラブのママ・梅津しおり(桃井)と、半ば公然と浮気する。導入部を経て、真那子の旅の目的がモノローグで語られる、双子の妹・実見子(当然小田かおるの二役)の呼ぶ声が夢で聞こえたといふのである。
 キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!!!!!
 山邦紀キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!!!!!
 ここからが山節全開、真那子には、一族の秘中の秘で悟郎にも日下にも隠してあつたが、実は双子の妹の実見子が居た。実見子は十五歳の時に淫乱症(笑)を発症し、看護婦の風間由樹(吉行)、看護人兼セックス・マシーンの桑形新吉(リョウ)と共に山奥の洋館に幽閉されてゐた。真那子が洋館を訪れると、幼女のやうに真つ赤な浴衣に、カチューシャのやうに同じく真つ赤なリボンを巻いたアレなヴィジュアルの実見子が、桑形を相手に所を換へ品を換へ、ヤッてヤッてヤリ倒してゐた。山邦紀最高、旦々舎最強。真那子は呆然とし、観客は歓喜する。実見子と自分とを取り違へた桑形に犯される淫夢を見つつ、真那子は洋館に滞在する。一方、由樹と桑形は、真那子―と実見子―に分析を加へてゐた。インフォマニアの実見子と、堅物で、未だ性の悦びも知らぬ真那子。二人は、実見子が発症した十五歳の時以来、一つの人格が二つに分かれてしまつたのではないか、と推測する。そこで由樹と桑形は、二人で真那子を犯し、性の悦びを教へ込まうとする。いや、もう本当、この映画、素晴らし過ぎる。
 一方、姿を消した真那子を、悟郎と日下は躍起になつて探してゐた。日下は、遂に実見子が幽閉されてゐた洋館の所在を突き止める。悟郎に差し向けられ、日下は洋館に向ふ。日下が辿り着くと、そこには人が変つたやうに淫らにセックスに興じる真那子が。日下は驚愕する。更に、本当は実見子であるのだが、同じく恣に肉欲に溺れる真那子が何ともう一人。日下が割り出したのは洋館の存在までで、真那子に双子の妹があることは知らない、といふのは秀逸だ。かつて見たことのない、自分がこれまで知つてゐたのとは全く別人の、淫らな真那子、がしかも二人。日下は錯乱する。日下も日下で連絡を寄こさなければ帰つても来ないので、業を煮やした悟郎は終に自ら洋館に乗り込む。も、日下と同じパンチに呆気なくノック・アウト。真那子、実見子姉妹にすつかり搾り取られ、精神的にも肉体的にも抜け殻になる。クライマックス、真那子・実見子姉妹はそれぞれ喪はれてゐたものを取り戻す。再び訪れることを実見子に約し、後部座席にすつかり使ひ物にならなくなつた悟郎と日下とを乗せ、真那子は自分で車を運転し東京に戻る。私は男達に庇護され、憐れみの対象であることを止めた、といふ如何にも浜野佐知映画らしい、真那子のモノローグによる勝利宣言がラスト・シーンである。

 真那子は性の悦びを、実見子は理性を、姉妹はそれぞれ喪はれてしまつてゐたものを取り戻す。喪はれてゐたものを取り戻す、原初的とすらいつてしまつてもいいくらゐに、最も基本的なテーマである、普遍的といつてしまつてもよい。それ故、テーマとしては最強で、その与へるカタルシスは極大。加へて、十八番の幻惑的な山アクロバティック(今命名)、浜野佐知のフェミニズム的要請すらきつちりクリアしてゐる。あちらこちらと物語も登場人物も動く物語を六十分の尺内にキチンと収め、尚且つ、これは旦々舎のピンクだ。エロいのである、もう、エロいことエロいことはこの上ないのである。商業ポルノグラフィーとしての要請も、パーフェクトにこなしてある。最早誰一人として、文句の付けやうもあるまい。これはひとつのマジック、ひとつの奇跡。ピンクを追つて来たことを、誇りに思へる一作である。


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