真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女体サーカス奇譚 囚はれの乳姫」(1992/受審:新東宝ビデオ株式会社、の筈/監督:浜野佐知、の筈/出演:立花未沙・栗原良・平本一穂・杉本まこと)。
 檻の中に、黒パンティと首輪しか身に着けてゐない立花未沙が、鎖に繋がれ寝てゐる。物語らしき物語こそないものの、設定は明確。団長(栗原)と調教師(平本)から主にも何も、全力性的なトレーニングを受け倒す踊り子(立花)を、本格的にメイクしたピエロ(杉本)が心配さうに見守る。通して見終つたのち気づいたのが、よほど口跡に難があるのか嬌声以外、踊り子には一言の台詞も与へられない。いはゆる衝撃のといへば確かに衝撃的な、ラストから逆算した案外論理的な造形であるのかも知れないけれど。
 パケには“変則体位”に“変形結合”、“サーカスFUCK”といつた仰々しい惹句、のみならず。危険行為を真似ぬやう厳禁する注意書きまで躍る、割に。実際行はれるアクロバットといへば、リスクを負ふのは棹、即ち急所を鉄に触れさせる、寧ろ男の方にも思へて仕方のない鉄格子越しの尺八なり後背位なり、体の柔らかさを活かした大開脚程度と虚仮威しぶりのなかなか清々しい一作。立花未沙は八月八日のARZON発売日とjmdb封切日との比較で、五ヶ月弱先行する新田栄の「痴漢と覗き」第九作、「痴漢と覗き ‐下着マニア‐」(1992/脚本:亀井よし子)にも主演。二三番手で何処かに紛れ込んでゐる可能性も否み難いが、現状、確認能はず。
 実は至つて直球勝負に徹するプレイの間隙を縫ひ執拗に挿入される、多分旧旦々舎の庭を原野に模した、低い視点で草木の間を駆けるショット。男優部と絡んでゐなければ基本檻の中で寝てゐる踊り子に、ピエロが忘れぬやう思ひだすやう再三再四促す故郷“ふるさと”。もしかすると何某かの元ネタでもあるのか、踊り子が文字通り獣性を取り戻す、木にバオバブを接ぐオチは流石に読めなかつた、普通に接ぎ木してんぢやねえか。といふか、動物スチールのインサートで事済ます安普請は仕方もないにせよ、些か判り辛い食肉目の足跡は、くどいくらゐ顕示的であつても罰は当たらなかつたのではなからうか。切れ味鋭いのか、鋭すぎて切られてゐるのに気づかないのかは兎も角、弾力感に富んだ乳尻が頗る魅惑的な、立花未沙を実直に嬲るストロングスタイルの濡れ場以外の見所といへば、正直お芝居もしくは目力の全く伴はない立花未沙の起動、ないし回帰に対し、馬鹿馬鹿しいズーム込みで栗原良と平本一穂が戯画的に慄く、微笑ましいオーバーアクト。と、本来踊り子的には本分でもある、カットを跨ぐや否やズンドコ意表を突く、劇的ではないが激越にチャチい激安劇伴を鳴らした上で、適当に煽情的な扮装で立花未沙が踊るシークエンスに於いての、プリミティブか無造作なエロチシズム。反面、耳を塞ぎ難い最大のアキレス腱は、物音をガッチャガチャ拾ふどころか演者の台詞さへバッキバキに割れる、ぼろぼろの録音はもう少し―でなく―どうにかならなかつたものか。


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