真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「若妻発情 だらしない舌」(1996『老人の性 若妻生贄』の2002年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・田中譲二・藤原千史・根津信哉/照明:上妻敏厚・荻野真也/編集:㈲フィルム・クラフト/音楽:藪中博章/助監督:松岡誠/制作:鈴木静夫/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:沢田杏奈・桃井桜子・青木こずえ・荒木太郎・久須美欽一・甲斐太郎・リョウ)。
 1989年から1997年にかけて、浜野佐知は毎年十本以上発表するとんでもないペースで撮りまくつてゐるのだが、流石に、実に充実してゐる。
 公園でゲートボールに興じる老人達、輪から一人離れ、見田宗介(リョウ)が本を読む。吉見俊哉(甲斐)と井上孝三(久須美)は宗介にも加はるやう促すが、体を動かすのが苦手な宗介は煮え切らない。宗介は息子の鶴男(荒木)、嫁の裕恵(沢田)と同居する旧旦々舎に帰宅。但し鶴男と結婚する際の条件が親とは同居しないであつた裕恵は、老人ホームに預けてしまへと宗介を何かと邪険にする。一方、井上家の嫁(桃井)とその友人(青木)が、ゲートボールを楽しむ老人達を、冷やゝかな目で見下す。年寄りをバカにする若い女に激しい憎悪を燃やす井上と吉見は、目出し帽とゴーグルで武装、シルバー・レイプ団“ゲートボール・ゲーターズ”として青木こずえをライトバンで拉致、手篭めにする。
 凶暴にアグレッシブな老人達が、先達に敬意を払はない若い女供に正義ならぬ性義の鉄槌を下す問題作。戦闘的フェミニストたる浜野佐知がどうしてこのやうな映画を撮つてゐるのかはよく判らないが、兎も角面白さの上では比類ない痛快作。今作の白眉は、豊か過ぎる久須美欽一と甲斐太郎の怪演合戦。教則本を読み込み、宗介も漸くゲートボールの輪に加はる。いざやつてみると矢張り中々に楽しく、公園をあとに居酒屋にて井上・吉見と楽しく酒を酌み交はす。そこで吉見は、宗介もゲーターズに勧誘する「見田さん、実は私ら、ゲートボールだけしてる訳ぢやないんですよ・・・・」。それまでのにこやかな好々爺の貌をかなぐり捨て、途端に凶悪な強姦犯の悪相に変貌する久須美欽一×甲斐太郎!あまりにも鮮やかな振り幅に、思はず大笑させられてしまつた。三人ゲーターズはお約束の、横一文字に並んで出撃すべく歩き出すデス・マーチ風のショットを手堅く押さへると、桃井桜子を襲ふ。初めは桃井桜子を蹂躙する井上と吉見を遠巻きにしながらも、やがては堰が切れたかのやうに宗介も激しく犯し始める。目出し帽とゴーグルで顔はすつかり隠してゐながら、表情と感情を巧みに表現してみせる三人のベテラン俳優部の確かな地力が光る。
 続けてゲーターズは裕恵を襲ふ、こゝで、のちに改心した宗介に裕恵が情を移し、二人がデキてのけるといふラストは安直に過ぎると流石に思はざるを得ないが、警察に通報する代りに、家族に悪事をバラされる井上と吉見の姿は爽やかに映画を締め括る。桃井桜子に肩を揉まされながら家事をすつかり押しつけられた井上の情けない姿を挿んで、宗介が裕恵と公園を散歩してゐると、ゲートボールのスティックを振り回した青木こずえに吉見が追ひ駆けられてゐる。マンガのやうに泣き出しさうな表情の、甲斐太郎が激しく笑かせる。どうでもいゝが青木こずえは、そんなもので下手に殴つた日には、年寄りでなくとも普通にデスるぢやろ(笑

 沢田杏奈×桃井桜子×青木こずえ、ルックスもスタイルも抜群の三本柱を揃へた女優陣の布陣もガッチガチに磐石。中でも青木こずえは、気の所為かも知れないが、体調でも良かつたのか常にも増して一際美しく映る。ゲートボールの輪の中に、本物のお爺ちやんとお婆ちやんが二人づつ登場。何の根拠もないが、ロケ先で現地調達した方々のやうな気がする。


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