真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「団地妻 尻奴隷」(昭和60/製作:獅子プロダクション/配給:株式会社にっかつ/監督:片岡修二/脚本:片岡修二/企画:奥村幸士/撮影:佐々木原保志/照明:水野研一/編集:金子編集室/助監督:橋口卓明/監督助手:上野勝仁・伊沢俊幸/撮影助手:中松敏裕/照明助手:白石宏明・佐藤邦雄/色彩計測:図書紀芳/メイク:庄司真由美/車輌:JET RAG/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:アグネス・カーラ、織本かおる、夕崎碧、早乙女宏美、真山理恵子、狼狂二、池島ゆたか、梅沢英二、大橋正幸、園山高志、嶋村圭、劇団滑車、螢雪次朗、下元史朗)。
 ジャンボジェット機の着陸ショット、羽田の表に現れた青いトランク・ケースを引いた黒人娘が、タクシーに乗る。行き先を尋ねられたアグネス(ハーセルフ)が「トキオ!スミヨシ団地」と―日本人によるアテレコかも―答へると、団地外景にタイトル・イン。何事か機動隊(滑車の皆さんか)も出動する騒ぎに阻まれ、車は立ち往生。業を煮やし降車したアグネスのトランクが、機動隊員に突き飛ばされた弾みでチャイナドレスの女(早乙女)の同じ型のトランクとすり替る。一方住吉団地、アニメーターの野沢か野澤シュンスケ(下元)が、同居する兄の嫁(織本)に迫る。団地妻昼下がりの情事かと思ひきや、シュンスケの望みは兄嫁の尻のスケッチ。そこにアグネスが、一年前のブラジル旅行で知り合つたシュンスケの嫁に来たと現れる。
 配役残り池島ゆたかが、兄弟揃つて尻好きのシュンスケ兄、織本かおる夫。螢雪次朗は、ブツを運び損ねた早乙女宏美を激しく責めるヤクザ。当然その一幕は、マゾの早乙女宏美がもつと強くと喜悦し一同がズッこけるのがオチ。夕崎碧は螢雪次朗情婦、狼狂二しか特定出来ないが、梅沢英二から嶋村圭までも多分螢雪次朗の子分。真山理恵子は、ブツとアグネスの引き換へにシュンスケが呼び出された第三埠頭にて、撮影中のテレビ映画(助監督が片岡修二)主演の婦警役。
 今作を紹介した、映画ポスター通販 CINEPO.com のツイートが、ENKの公式リツイートで目に触れDMMで探してみた片岡修二昭和60年第二作。因みに伝説の一大ファンタ作、「地獄のローパー」こと「逆さ吊し縛り縄」(原作:春野妖鬼/主演:早乙女宏美・下元史朗)の前作に当たる。シネポによると初めて外国人団地妻を迎へた買取系ロマンポルノとのこと、ロマポのフラッグシップ・タイトル「団地妻」シリーズ通算第何作なのか、以降にも国際結婚ものが存在するのか否かは知らん。しがないアニメーターが居候する兄貴宅の団地に、ブラジルからの押しかけ女房が転がり込む、見るからにヤバい白い粉を抱へて。一見大胆なストーリーにも見え、最終盤に至るまで概ね団地の一室にてウダウダするに終始する始終は一向に弾みはしない。特筆すべきは、斯様な演出が当時的には果たして有効であつたのか、ガチョーンとビヨーンをミックスしたかのやうな人を小馬鹿にしたSEも乱打した結果、悉く外すギャグ演出の打率零割が凄まじい。仕事中のシュンスケにアグネスから迫つての、一応夫婦生活を覗く兄貴と兄嫁も開戦。兄嫁の背負ひ投げで幕を開け大概な尺を喰ふ、バックを取り合つてみたり、マンクローとキンロックの攻防戦を繰り広げてみたりする正体不明の格闘風シークエンスは、物語の展開も放たらかして何を長々と枝葉に徒花を咲かせ損なつてゐるのか全く意味が判らない。そもそも主演のアグネス・カーラ―ポスターが謳ふ、“褐色ベイビー”なるキャッチは素晴らしい―がプロポーションはそこそこ以上にグラマラスなものの、あどけないといふよりは寧ろ垢抜けないのも通り越し心許ない幼い表情を見てゐると、この子はもしかすると悪い大人に騙されて現場に連れて来られたのではなからうかと変に胸が痛む。正直げんなりした心に止めを刺すのは、一欠片も笑へないコメディが忘れる以前に多分初めから持つて来なかつた、奴隷感ゼロぶり。必ずしもルーズではないのかも知れないにせよ、最早グルッと一蹴もとい一周して、感動するほかないほど詰まらない一作である。


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