真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「言葉で濡れる人妻たち」(1996/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・田中譲二/照明:秋山和夫・永井日出雄/編集:酒井正次/音楽:藪中博章/助監督:佐藤史・安部舞/制作:鈴木静夫/効果:時田滋/スチール:岡崎一隆/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:倉沢萌・桃井良子・小川真実・平賀勘一・樹かず・リョウ)。
 女の体の局所局所に照明の当たる夫婦生活、夫・海野信宏(樹かず/何故かjmdbにも新日本公式にも杉本まこととされる)に―本当は感じてゐないのに―感じてゐる芝居疑惑を突きつけられた未知(倉沢)が、図星を指されるのは夢オチ。春画に被せたタイトル・イン挿んで旧旦々舎和室、苦み走つた、苦み走らせ倒したリョウが春画集に目を落とす。してゐると、あつけらかんと小川真実帰宅。劇中描写がないゆゑディテールは不明ながら、論文執筆に取り組み家計は外で働く妻・澄子(小川)に任せる勝又信次(リョウ)は、自宅で開く「古典を読む会」の増員を図るべく、取り扱ふのを地味な古典から江戸時代の春本にシフトすることを思ひつく。会に通ふ、未知とバツイチの友人・梶さゆり(桃井良子/ex.秋乃こずえ)が戸惑つたのも脊髄反射の当初のみ、勝又の紐解く艶本“ゑほん”や艶句“ばれく”の刺激的な内容に、次第にでもなくグイグイ喰ひついて行く。配役残り平賀勘一は、さゆりの新しい彼氏・君原明。
 撮影当時大雪に見舞はれたと思しき、浜野佐知1996年第五作。ジャンジャカジャンジャカ降つてそこそこ積もつてゐたので、都内であれだけの雪となると、それなりの大騒ぎにもなつたのではなからうか。艶本“ゑほん”や艶句“ばれく”が主モチーフの文芸ピンクといへば、綺麗に三年づつ前後する短歌ピンク「巨尻折檻」(1993/脚本:山崎邦紀/主演:小野なつみ)、俳句ピンク「和服夫人の身悶え -ソフトSM編-」(1999/脚本・監督:山邦紀/主演:やまきよ)が容易に想起されよう。とはいへ、同趣向の春本ピンク「色情痴女 密室の手ほどき」(2010/脚本:山邦紀/主演:倖田李梨)と並べた場合、芝居の軽い倖田李梨とは比べるまでもなく旦々舎の千両役者・リョウ(=栗原良=ジョージ川崎=相原涼二)が重低音をバクチクさせつつ、フリーダムの暴風雨を吹き荒らす短歌同人誌『木蓮神話』なり俳句結社「触覚」を前にすると、あくまで実在の文献を紹介するに止(とど)まる「古典を読む会」は、名が体を表すが如く随分とおとなしい。一応未だ絶頂を知らぬヒロインが新しい世界への扉を開ける、といふそれらしきテーマもなくはない一方、信次が江戸時代の性の秘伝書を出汁に首尾よく未知をオトしたまではいいものの、未知は指南を頼りに信宏を操縦。さゆりにも話の途中で逃げられ、結局「古典を読む会」は閑古鳥。といふラストは、女達が自ら性を主体的に探求するといふよりも、寧ろ助平男の浅知恵が徒労に終る他愛ない艶笑譚としての色彩の方が強い。最終的にさゆりは平勘と、未知は信宏と、そして火遊びが澄子に発覚しない勝又夫妻の夫婦仲もひとまづ揺るがず。珍しく当初ペアリングが一組も破綻しない旦々舎にしては相当風味がマイルドな、一般的な仕上がりの裸映画である。リョウ十八番の“どうしてかうなつたんだ”も、和装の袖に腕を差し縁側に佇む姿を引きの画で短く抜くのみと、全く控へめ。


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